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「コンビニが来る」時代を! 不満解決で全国へ [ Vol.27 ]

コンビニをもっと便利にしたいと語る大薮孝志社長

 「便利な店」を英語にした「コンビニエンスストア」、通称コンビニ。そのコンビニをさらに便利に、身近に、既存店の問題点を解決するように取り組み、オフィス向けにサービスを提供している会社が大阪にある。今回はこの「ちいさなコンビニ」事業を展開するホーム株式会社の大薮孝志代表を訪ねた。


オフィスワーカーのコンビニ最新事情

 コンビニは街の至るところにあり、店は客のニーズで満たされている。ただ、問題点もある。

 

 昨今、コンビニにたどり着けない人が増加しているのだ。その理由は2つ。1つ目は都心のオフィス街が高層ビル化されたため、特に高層階で勤める人には外出に時間がかかってしまい、外のコンビニに辿り着くまでに10分、15分と時間を要すること。外出する気が失せるのも理解できる。2つ目はセキュリティ強化による出入りの煩雑さ。オフィスに出入りするのに何度もセキュリティ認証を行わねばならないため面倒さを感じ、退社するまで外出しない人が増えているのだ。それ以外にも、パソコンの普及で常にPC作業やメール対応に追われ、デスクから離れられない人が増えていることも要因としてある。

 

 「ランチ難民」という言葉が流行って久しいが、東京や大阪の高層ビル街では「コンビニ難民」も生まれているのである。また、コンビニ側からしても、都心は家賃が高い上に夜間や土日祝日は稼働率が悪いために苦戦している店舗が多い。客も店もあまり満足が得られない。それが都心オフィス街のコンビニの現状なのである。

 

 「ちいさなコンビニ」がお客の需要に応える

 そんなオフィスのコンビニ需要に応えたのが、同社が2011年に開始した「ちいさなコンビニ」である。といっても、オフィスの一角に冷蔵ショーケースやフードボックス、コーヒーマシンなどが置いてあるだけ。オペレーションは、「富山の置き薬方式」で、品物を買った人が料金箱に代金を入れ、定期的に商品の補充と代金の回収を同社が行う。

 

 設置する会社は初期費用0円で導入でき、負担は置き場所と電気代のみとランニングコストも安い。品揃えはオフィスごとのニーズに対応し、会議で使うペットボトルのお茶など法人での需要や領収証の発行もできる。しかも、会議用のドリンクなどは荷物として届くのではなく、使う日時に冷えたものをデリバリーしてくれるのだ。なお、商品ラインアップは缶やペットボトル飲料から乳飲料、ドリップコーヒー、菓子、カップ麺、パンと、多岐にわたる。

 

 これだけでも便利でいいなと思えるが、「ちいさなコンビニ」にはさらに利点がある。まずは商品の値段が安いこと。ドリンクは市価の20~50円安い。菓子やカップ麺も割引価格だが、家賃や人件費がかからないため、その分を消費者に還元しているのだ。次に災害時に備えた備蓄食料品を用意してくれること。飲料水やロングライフパン、カップ麺、スナックなどの納品はもちろん管理までやってくれる。会社の総務担当者の強い味方と言っていいだろう。

飲料からスナック、カップ麺まで.しかも安い!

やんちゃ少年が一念発起して起業

 今でこそ朗らかで、休日にはソフトボールに汗を流す大薮氏だが、かつてはご本人曰く「やんちゃで高校もクビになって定時制に移ったぐらいの落ちこぼれ」という不良少年だった。

 

 そんな大薮氏が変わったきっかけが19歳のときに母親が病気で倒れたこと。母に心配をかけてしまった自分を恥じ、挽回しなければと一念発起、ファミレスや喫茶店などいくつもの飲食の仕事を掛け持ちして一生懸命稼いだのだ。そして、コツコツ貯めた自己資金と金融機関から借りた資金を元に、23歳のときに起業して洋風居酒屋を出店、いつも満杯になる人気店に育て上げた。しかし、2店舗目を出そうとしたときに、繁盛の理由が自分に客が付いていることだと気づき、ビジネスの拡大が不可能と、あっさりと店を畳んでしまった。

 

 その後、大薮氏はビジネスの研究を行い、かつての経験から目を付けた「喫茶店からコーヒーの出前を取っても冷めているし、高い。オフィスでもっと手軽においしいコーヒーが安く飲めたらいいのに」という不満を解決すべく、オフィスコーヒーサービス事業を始めた。1987年、29歳のときである。

 

 当時、数万円していた最新式コーヒーマシンをオフィスにプレゼントするとうたい、コーヒー豆や砂糖、ミルク、紙コップなど消耗品だけ買ってもらうというビジネスモデルだ。すぐに多くの顧客ができ、コーヒー豆などのリピート注文で儲かったのだという。

 

 それから紆余曲折はあったものの、大手と互角に戦いオフィスでのコーヒーや給茶機事業を展開していたことで、転機が訪れる。オフィス参入の実績を見込まれ、大手菓子メーカーからコンサルを依頼されたのだ。また、別の乳飲料メーカーからも同様の依頼があった。これにより、大薮氏はオフィスでは食品への需要も大きいことに気づき、2011年にコンビニ事業を立ち上げた。世の中を見つめ、問題や不満を解決することに着目してビジネスにする大薮氏の姿勢が終始一貫光っている。

 

「コンビニが来る」そんな時代をつくる!

 「うちはストックビジネスで、消耗するとリピートオーダーがあるから潰れませんでした。株や土地などは失敗すると一発で潰れます」と大薮氏。そして、次なる展開=問題解決も語ってくれた。それはコンビニの質を高め、おにぎりやサンドイッチなど食品の種類を増やすこと。これはチルド技術の発達により可能になってきている。さらに現在、個人の注文をオフィスに届ける独自の商品管理と配送システムを構築している最中なのだとか。「コンビニに行く」のではなく、「コンビニが来る」時代をつくろうとしているのだ。そして、将来は代理店展開も含めて、事業を全国に広げる構想も持っている。

 

 「ちいさなコンビニ」が大きく成長する日はそう遠くないのかも知れない。

 

【会社概要】

ホーム株式会社

代表取締役 大薮孝志
〈おおやぶ・たかし〉

本  社:大阪府大阪市北区天神橋1-2-15
業  態:飲料食品分野のオフィスサービス
創  業:1987年11月
年  商:3億円
従業員数:20人