経済動向最前線 熊野 英生 [ 特集カテゴリー ]

労働力不足と賃上げ [ 第41回 ]

 2017年2月と3月の完全失業率は2.8%と極端に下がった。完全雇用の状態である。リストラや定年、雇用契約の満了で辞めた人数は僅か47万人。これらの非自発的失業者は、労働力人口の0.7%である。このほか、自己都合で辞めた人などが2.1%いる。非自発的失業者は、雇用主から提示された賃金で今すぐ働きたいと考えるだろうから、その割合が0.7%まで減ったということは、今の賃金で集められる余剰労働力がほぼ居なくなったということである。わかりやすく言えば、企業が労働力を集めたいと思ったとき、現行以上の賃金を提示して、他社から引き抜いてこないと必要人数は集まらない状態である。だから、経済学では、完全雇用になった後は賃金上昇圧力が急速に高まるとされる。

 

 厳密に考えると、非正規労働者の中に、本当は正社員で働きたい人が大勢いる。この人達は、正社員の募集に応じるだろう。完全雇用になって賃金上昇圧力が強烈に働くのは、非正規の方の賃金ということになる。正社員の賃金は、春闘交渉や業績を反映した賞与によって左右される。だから、労働需給の引き締まりがすぐには影響してこない。

 

 では、正社員の給与はこのまま上がりにくいのだろうか。

 

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