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「英国の動きについて」(真田幸光)

真田幸光氏の経済、東アジア情報

「英国の動きについて」

真田幸光氏(愛知淑徳大学教授)

「言語=英語」「通貨=ポンドから米ドル」「法律=英米法」「ものづくり基準=ISO」「会計基準=英米会計基準」、そして「世界の標準時=グリニッジ天文台」と、
「世界の主要な標準=スタンダード=」
を押さえる英米が治める世界秩序は鉄壁のように見えます。

しかし、昨今の中国本土の台頭に代表される覇権争い、イスラム系過激派などによる現行の世界秩序に対する破壊行為などを見ていると、
「英米の治める世界秩序」
に綻びが見られ始めているとも思われます。

そして、更に、その英国には、BREXITを背景としたUK=United Kingdom=そのものの分裂の危機も垣間見られ、万一、英国そのものに分裂の危機が顕在化するようなこととなれば、英国連邦の「たが」も緩み、現行の世界秩序は大きく変わる可能性も出てきます。

そうした意味で、私たちは、
「総選挙後の英国の行方」
に注目しなくてはなりません。

しかし、その情報が限定的であるとも思われます。

女王陛下の議会とも見える英国議会に於いて、
「UK分裂回避を前提としつつも、与野党の攻防が続き、その結果として、如何なる新体制が生まれ、どのような政策運営がなされていくのか?」
を注視しなくてはならないと私は考えています。

*そして、テロ未遂も含めると未だに絶えぬテロ事件
*メイ首相率いる与党の保守党の過半数割れ
*与党に対する野党第1党の労働党は、33議席増やして262議席になったものの、過半数に届かない「ハングパーラメント(宙づり状態)」になっている。
といった状況が今見られています。

こうした中、メイ首相はEUからの強硬離脱(ハード・ブレグジット)への交渉に向けて政権基盤を固めようとしていたとも見られますが、私は、もともとはBREXITには消極的だったメイ首相は国民の意思の再確認を早め、それにより、UK分裂の危機を回避することが今回の早期総選挙実施の背景であったとの見方も一部にはあると聞いています。

そして、現在も、その王室の意向を受けつつ、UK存続と世界における威信の確保、回復に向けて、与野党のつばぜり合いはあるものの、究極の分裂が起こらぬように、政界の安定化に向けた基盤整備が、水面下でひっそりと、しかし、しっかりと進められていると見ています。

最近の英国国内の動きを見ると、
「BREXITは確実である」
との見方をしておかなくてはなりませんが、そうなった際には、
*UKは分裂しないのか?
*分裂しないとすれば、英国経済の沈滞は回避できるのか?
といった、更なるチェックポイントを確認していく必要がありそうです。

こうした中、現在、たくさんの不確定要因はあるものの、相対的には、イギリス・アメリカの政局不安が減ったと見られていることで、外国為替市場の関心は、
*トランプ大統領が税制改革や景気刺激策に関して一定の成果をあげることができるか?
*米国経済の緩やかな回復傾向とFRBによる米国の利上げペースが維持されるか?
*日銀による金融緩和が継続されるか?
*欧州全体の政治的リスクが後退するか?
*中国本土経済の台頭と北朝鮮リスクを如何に織り込むか?
などに向けられており、こうしたことを背景に、当面は1米ドル~109円~114円、年末にかけては115円~120円の“円安ドル高”方向へ動いていく展開を私は予想しており、一方、日経平均株価も英米の相対的堅調を背景に基本的には強含みと見ています。
 
今後の動向を注視したいと思います。

真田幸光————————————————————
清話会 1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・東京三菱銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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