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「無人コンビニ登場『黒科技』がけん引」(徐 学林)

「徐さんの中国投資最新レポート」第24回
「無人コンビニ登場『黒科技』がけん引」

徐 学林氏((株)京華創業 代表取締役)

※これまでの連載は、こちら。

行く度に新しい発見があるのは中国。3月に上海、杭州に行ったら町中に黄色や青の自転車が並べられていることに驚いたことがある。バイクシェアリングだったのだ。スマホでアプリをダウンロードし、保証金を電子決済で納め、バイクのシリンダー錠に貼ってあるQRコードにアプリを照らせばカギが開けて利用できる便利な移動手段なのだ。

乗り捨てで利用する時間にもよるが、30分から1時間の場合、利用料は0.5元(約8円)~1元(約16円)だというのでバスや地下鉄より安い設定になる。この7月、日本(福岡)にも上陸したというので、近くの方は試しに利用してみてはいかがだろうか。

バイクシェアリングに続き、今度は無人コンビニの登場だ。

7月8日、Eコマース最大手のアリババは、淘宝造物節(タオバオ・メイカーフェスティバルにて無人店舗「TAO CAFE—タオカフェ」の開店計画を発表し、2日後の10日、アリババ本部所在の杭州市で第一号店をオープンさせた。タオバオのIDさえあれば、入店も決済もすべてフリーパス。顔で認証すれば、入店を許され、決済もすべてAli Payで済まされるからだ。開業初日、見物も含めて1万人以上の顧客が殺到したという。


Bingo Box店舗(写真は中国のサイト「SOHU」より)

しかし、この「TAO CAFE」は無人店舗の第一号ではない。昨年8月、広東省の中山市で生鮮フルーツ販売の(O2O)プラットホームBingo Freshが運営するBingo Boxが無人店舗の第一号とされる。地元で約10カ月試し営業の後、このほど上海に進出し大きく話題を呼んでいる。

「Bingo Box」はその言葉の通り、約15㎡のコンテナ店舗で、24時間無人営業、商品点数は賞味期限の長い食品やドリンク、日常用品など約500種類が並べられている。現在全国で20店舗以上展開しているが、開業から現在で盗難や万引きなどまだ発生していないと言う。

それもそのはず、お店は自由に出入りするものではなく、入店するにはQRコードで本人認証し、本人の携帯や実名、決済アプリ(口座連動)など個人情報とすべて連動しているので悪知恵でも働こうとしたらすぐに本人を特定されるのでたかが十数元の商品のために捕まれるのはコストが高すぎると利用者も賢くなっていると言えるのだろうか。

アリババが参入するまで、すでにBingo Boxのほか、F5未来商店やTake Go、Easy Goなど様々な形態の無人店舗が展開されている。

無人店舗を陰で支えているのは、「黒科技(ブラックテクノロジー)」というこれまでに存在しない技術だとされる。

最近、中国のメディアで「黒科技」と言う言葉が盛んに使われている。もともと日本のアニメ小説『フルメタル・パニック!』に登場する架空技術のことで、SF作品によく出てくるまだ世の中に存在しないとされる技術やそれによる製品のことで、中国語で「黒科技」の当て字で使われるようになった。

こうした無人店舗を可能にしたのも、「黒科技」の一つ、RFID(Radio Frequency Identification)という非接触IC管理システムのお蔭で、本人の特定と商品決済はスマホのアプリで完成させることに特徴がある。無人だから商品は安いだろうと思われるかもしれないが、本人認証や商品管理などシステムの開発には初期投資は決して安いわけではない。RFID電子タグも10万枚ロットで、0.65元(約10.4円)/枚なので、商品一つにつき一枚必要となると、相当のコストがかかる。

しかしBingo Boxのようにコンテナ式営業だと、小売業にとってコストのウエイトが高い店舗の賃借が必要とされなくなるので、その分、賃料を節約できるというメリットがある。したがって有人コンビニと比較した場合、全体のコストは約4分の1で済むという。

無人コンビニと言えば、Amazon Goが先駆者とされ、昨年12月アマゾン米本社で第一号店を試験的に営業開始して以来、ベンチャーや創業者にも注目されているが、しかし中国の起業家たちの行動が素早いと言わざるを得ない。また新しいビジネスチャンスがあるとわかると、VCやPEもすぐに群がってくる。

6月28日、VCで名前を知られる「創新工場」は前出「F5未来商店」に対して3,000万元(約4億9,000万円)の初期投資を完了したと発表。続いてBingo Boxも7月3日、VCからの1億元(約16億円)の融資を受け、今後一年以内に全国で5000店舗を展開していく計画を明らかにした。

Amazon Goはまだ社外で無人店舗を展開できていないのは、RFIDの技術などまだ徹底されていないからだとも言われるが、前出Bingo Boxの商品は高温でチョコレートなど一部溶かれたという初歩的管理ミスも報告もされているので、「黒技術」の失敗になかなか寛容だという国民性がこうした新しいビジネスを根底で支えていると言えるのかもしれない。

次にどのような「黒科技」が出てくるのかとても楽しみだ。


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徐 学林
1983年  北京外国語大学日本語科卒
       北京放送入社
1990年  NHK国際局にて研修
1991年  名古屋市立大学大学院経済学研究科入学
1998年4月 (株)日本事業通信網入社
2001年6月 (株)邱永漢事務所、(株)邱永漢アジア交流センター入社
2012年9月 (株)京華創業 代表取締役就任

(株)京華創業
http://keika-corp.co.jp/

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