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「真似る時代の終焉」(徐 学林)

「徐さんの中国投資最新レポート」第25回
「真似る時代の終焉」

徐 学林氏((株)京華創業 代表取締役)

先週深センと広州を3泊4日で訪ねてきた。中国・香港株式市場の最新情報を日本の投資家に案内するため、上場企業の現場を定期的に見てみる必要があったからだ。深センには、内外市場の上場企業が350社も数えられ、名実ともに創業者天国だ。

深センには、「華強北」というエリアがある。電子部品の小売りが所狭しと並べられているビルが林立し、「華強北」で調達すればロケットまで作れると言われるくらい様々な部品が取り扱われている。中国製と言えば、パクリや粗悪品と言ったマイナス的イメージがあったが、しかしそれも今は昔。

中国不動産最大手の「万科企業」や通信機器世界大手のHUAWEIも思い返せば、「華強北」の電子部品やトランジスターの小売りから巣立った会社だったのだ。

中国・香港株式市場は今年に入って強気の相場が続いている。中でもテンセントなどIT関連のほか、ハイテク系とも言われるスマホ関連や自動車、不動産などの株式が高騰を重ねている。

ハイテク系とも言われる企業の実力を確かめようと、今回は通信関連、特に2年後の運用が期待される5G関連の会社を2社訪ねた。

その内1社(A社)は光通信関連で、もう1社(B社)は通信アンテナの会社だ。

A社は2000年から光通信用部品を製造・販売したが、高速通信の時代とともに、データ通信ネットワークに使われるパッシブコンポーネントなどを製造し、2009年上場の時の世界シェア5%から現在13%へ拡大し、世界3番目のサプライヤーへ成長した。

パッシブ製品のマーケットの規模は世界的に約16億米ドルだが、アクティブ製品の市場規模は4倍近くの79億米ドル。2012年からアクティブ製品開発のため、チップ埋め込み技術の開発センターをシリコンバレーに立上げ、すでに製品化に成功している。ライバル企業は?、と確認したところ、SUMITOMOとFUJITSUという日本の企業名を挙げ、競合メーカーになったことを示唆した。

現在フランスの半導体メーカー、3SP Technologiesを傘下に収め、昨年カナダのITFテクノロジーを500万米ドルで買収することを契約までこぎ着けたが、「ITFテクノロジーの経営支配権の買収はカナダの安全を脅かす可能性がある」として契約の解除を命ぜられた経緯がある。

またB社は通信アンテナの製造販売の会社で、基地局アンテナの出荷量では2009年以降、世界トップ3を続けている。国内では中国移動、中国聨通、中国電信の3大通信キャリアを顧客に持ち、海外では今年ラオスの通信会社ETLを買収した。

「ラストワンマイル」と言われるスタジアムやビル(オフィス)の中、高速鉄道など移動通信のアンテナに強く、5Gの時代に備えるべく研究所を中国に3カ所、アメリカに2カ所を立ち上げた。1997年に立ち上げた会社だが、現在特許だけですでに2500も取得し、アンテナは世界80カ国にも輸出し使ってもらっている。

A社もB社も社歴は20年ほどの会社で今は世界的企業に成長している。

当社視察ツアーは6月にも、浙江省の余姚でスマホ用のカメラレンズやモジュールの会社を訪問した。この会社はやや歴史が長いが、それでも35年は経たない会社だが、光学製品をソニーやニコンにも納入していると紹介されて驚いたことがある。現在ODMで中国の主要スマホメーカーに光学製品を供給している。

このように、これら企業は最初から自社独自の力で成長したとは思えない。しかし真似をしながら学び、学びながら自社独自で開発をしていくことに共通していると思われる。

このような企業は上場している中で複数あると考えられる。「タカがパクリ」と侮ってはいけない。「投資はパイの大きいマーケットで」と言われるが、成長性の観点でも中国企業から目が離せないと考える。



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徐 学林
1983年  北京外国語大学日本語科卒
       北京放送入社
1990年  NHK国際局にて研修
1991年  名古屋市立大学大学院経済学研究科入学
1998年4月 (株)日本事業通信網入社
2001年6月 (株)邱永漢事務所、(株)邱永漢アジア交流センター入社
2012年9月 (株)京華創業 代表取締役就任

(株)京華創業
http://keika-corp.co.jp/

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