伝説の営業ウーマンが教える 女性目線の生かし方 高塚 苑美 [ 特集カテゴリー ]

女性の働きやすい職場づくりにおける2つの視点 [ Phase14 ]

女性活躍推進という言葉もすでに聞き飽きた感がありますが、目前の課題として捉えている企業は増えているように思います。
私の元には連日、「女性の活躍できる環境づくり」や「女性の戦力化」についての講演依頼が絶えません。最近は「生産性」や「パフォーマンス」という言葉がキーワードになっているせいか、「女性のパフォーマンスを上げたい」「男性に比べると女性の生産性が低い」と言った課題も聞かれるようになりました。

 

確かに、優秀な女性が多いから、長く働き続けてもらいたいという企業側の思いは素晴らしいと思います。また、そのために環境を整備しようと努力をされていることも、私の時代では考えられなかったので、ちょっと羨ましくもあります。ただ、1つ思うのは、そんなに女性の仕事ぶりは対策するような問題なのか、ということです。

 

そこで今回は2つのことに目を向けてみたいと思います。
1つは「バイアス」です。女性は結婚出産ですぐに辞めてしまうとか、すぐに泣く、感情的である、というフィルターですね。そして、もう1つが女性の仕事環境を取り巻く「職場の仕組み」です。

 

 

 

女性活躍推進にみるバイアスとは

1つ目のバイアスですが、そもそも、このフィルターを通して「女性活躍」を考えている企業が多いと私は思っています。私も昔、「この職種は女には無理だ」という言葉を散々言われました。女性活躍推進という旗印を掲げながらも、職種によって男性しかいない部署などは山ほどあります。女性活躍そのものには取り組まなければならないので、その点に反対する人はほとんどいません。しかし、いざ自分の部署に、となると「いや、うちの部は女性がいないから、彼女のためにもそれは……」と躊躇したり、「BtoBだし、お客さんも難しいからちょっと……」と断る男性の多いこと!
それ自体がバイアスであり、女性の可能性を潰していることに気づいていないのです。

 

確かに、その会社では今まで女性がやったことのない仕事ばかりなのかもしれません。しかし、日本で経営していく以上、日本人の適齢の男性だけでは労働力は足りないのですから、そろそろ問題視すべきことにきちんと向き合うべきではないでしょうか。
なぜ、そのようなバイアスができてしまったのか、どうすればそのバイアスを外すことができるのか、という根本原因に目を向けてほしいと思っています。

 

バイアスを外すためには、まず客観的な評価が必要です。
むやみに女性のパフォーマンスと言わず、そもそもパフォーマンスの評価基準は何だったのか? 今の時代に合ったもので、かつ、きちんとデータ化できるものなのか? を見直すべきです。
わかりやすく営業の例で言うと、パフォーマンスが問題と言いながら、労働時間や効率には目を向けず、契約件数しか見ていない企業もあります。また、属人的な営業手法に任せきりで、結果だけを見ている企業も未だに少なくないのです。
活躍推進をするのであれば、まずはその企業における「活躍」を定義し、「評価基準」を整えてからではないでしょうか。

 

 

職場の仕組みは女性のためのもの?!

このところ、私の周りは出産ラッシュです。つい先日も、経営者として働いていた友人が出産をしました。ギリギリまで仕事をしていた友人ですが、出産後はもちろん、仕事の仕方が変わります。それを後押しするために産休、育休という制度がありますが、実際のところ、その期間の仕事や顧客維持などを課題としている企業は多いようです。

 

例えば、最近では女性の営業も増えていますが、続けるつもりであっても出産をすれば一時的に職場を離れる必要があります。その間、顧客から見れば担当不在になってしまうのは問題です。企業としてはなんとか対策したいことでしょう。

 

しかし、ちょっと考えてみて欲しいのは、本当に女性の休職だけが問題なのかということです。
言うまでもなく日本は超高齢社会。私の両親ももうすぐ70代ですから、今から不安に思うのは介護のこと。何かあれば私が見るしかなく、その時は今のような仕事の仕方はできません。
一昔前であれば、専業主婦である女性たちが、こうした問題を吸収してくれていました。しかし、これからはそうはいきません。実際に介護を理由にした離職や時短勤務なども増えていますし、年間10万人が介護離職に追い込まれるという試算もあります。それに比べ、期間が決まっている妊娠、出産の方が断然わかりやすいですよね。

 

つまり、女性の出産に伴う休職が問題なのではなく、社員が休むという想定の元で、業務が設計されていないことが問題なのです。
最近ではテレワークなどの制度もできましたが、あの実態も馬鹿げています。
弊社では現在数人の女性スタッフを在宅で雇っていますが、届け出をする時点で心が折れそうになりました。というのも、仕事をする場所が県外だと社会保険などの管轄が違うから手続きできないと言われたり、勤務する部屋は登録しないといけない、タイムカードをつけないといけないなど、テレワークを支援しているようには感じられない対応ばかりだったからです。もしやるとしても、ここまで制約があると、請負業務のような形態でないと難しいのだと痛感しました。

 

ダイバーシティという言葉が聞かれるようになって久しいですが、日本は、女性活躍だけでなく、高齢者や外国人など、取り組むべき雇用課題を見据え、早急に手を打っていく必要があるように思います。特に、これからは、いつどのタイミングで社員が「休みたい」と言い出すかは予測できません。出産であれば決まった期間内で引き継ぎも準備もできますが、親の介護などは予測も準備もできないのです。

 

もし今、社内に出産を控えている女性社員がいたとしたら、それをチャンスと捉え、社内の仕組みを整えていただくのが後々のための第1歩ではないでしょうか。