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「日米関係について」(真田幸光)

真田幸光氏の経済、東アジア情報
「日米関係について」

真田幸光氏(愛知淑徳大学教授)

 私は、
「米国とは決して喧嘩をしてはならない」
と考えています。
しかしながら、
「米国を信用し過ぎてもいけない」
とも考えています。

大国は大国の論理で動き、そのパワーゲームの中で、時に、同盟国であっても、これを利用する、裏切ることもあり、その結果、同盟国は、所謂、
「大国に梯子を外される」
と言ったことが起こる可能性もありましょう。

従って、日本は米国のみならず、中国本土やロシアとも喧嘩をせず、しかし、信用し過ぎてもいけないと考えています。

そうした意味で、見た目には小国であっても、実際には金融力、技術力、情報戦も含めた軍事力に長けている、英国連邦を抱える英国、そしてスイス、イスラエル、シンガポールと日本は連携しつつ、
「世界に必要なものやサービスを適正価格で安定供給していく国となり、世界に必要とされ、尊敬されつつ、平和に生き抜いていく立ち位置を見つけるべきである」
と私は考えています。

ところで、昨今、米国・トランプ政権は同盟国・日本に対してもセーフガードを発動、中韓よりもその圧力を弱める可能性はあるものの、
「日本に対する防衛費負担増には全く譲歩の姿勢を示さない。
 更に、日本に対する防衛装備品輸出を更に拡大していく姿勢を示している」
といった動きを示唆、こうした一方で、厳しく対峙してきた北朝鮮の金正恩委員長との対話にも応じるといった姿勢転換を見せるなど、日本の思惑とは少しずつ異なる方針を示しています。

私には、これも、
「米国は、大国の論理の下で動いているものである」
と見られ、日本が期待している方向に必ずしも米国は動かないのではないかと見ています。

更に、
「米国は、今も太平洋戦争当時の日本の底力を忘れておらず、警戒している」
とも私は見ており、例えば、
「朝鮮半島の非核化」
を唱える一つの背景には、
「朝鮮半島の核武装により、日本も核武装に動くことを厳に回避しようとしている」
とも見られます。

更に、穿った見方と叱られましょうが、私には、
「米国は、日本の防衛力強化は100%、米国のコントロールが効く形で推進させようとしている。
また、その為の憲法改正に日本が向かうよう誘導している」
とすら思えます。

北東アジア情勢に変化が起こるかもしれないこの時期に、安倍首相がすかさず訪米し、トランプ大統領との対話に出ることにしたのは、米国の本音を探る上でも大変重要であります。

更に、もし南北融和の延長線上で、一気に朝鮮半島が米露、そして中国本土と連携して、地域全体のインフラ開発などを一気に推進していくこととなれば、米露、中国本土、南北朝鮮は日本を抜きにして、新たな北東アジアの新たな枠組みを検討し始めるかもしれません。

そうした意味からも安倍首相には、しっかりと米国、トランプ政権を抑えてきて欲しいものであります。


真田幸光————————————————————
清話会1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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