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「ブロックチェーンと再生可能エネルギー、AIなどを機軸にする第四次産業革命」(高島康司、SJC2018.2月例会講演抄録)

【SJC講演抄録】
「ブロックチェーンと再生可能エネルギー、AIなどを機軸にする第四次産業革命」
(SJC2018.2月講演より)

高島康司氏(社会分析アナリスト、著述家)

ブロックチェーン技術に基づいた仮想通貨、特にビットコインが急激に価格上昇しました。
もともとビットコインは重要ではなくて、根幹にあるブロックチェーンという技術が重要です。ビットコインは、ブロックチェーンを通貨に適用した適用例にすぎません。

ブロックチェーンとは、ものすごくざっくり言うと、あらゆるところにあるコンピュータ(サーバーではなく)に分散台帳として記入して、それらのブロックをチェーンで結ぶ技術のことです。

このチェーンで結ばれたブロックをどれか一つ書き換えようとすると、チェーン全体で世界中にコピーがあるため、すぐ復元できるし、書き換えが判明します。よって、どれか一つを書き換えることは極めて難しい。

そういう技術なので、今までのようなサーバーの要らないシステムを作ろうということです。
これを通貨という領域に当て嵌めると、ビットコインのようなかたちになるということになります。

このブロックチェーン技術による第四次産業革命というものが、いま勃興期にあります。

ブロックチェーンは、あらゆるデータが書き込めます。
たとえば不動産の登記のデータ。登記所は要らなくなるでしょう。また保険契約においても、保険会社が要らなくなるかもしれません。住民台帳、住民登録もブロックチェーンでできるようになるでしょう。社会福祉も全部ブロックチェーンでできます。図書館も蔵書が全部ブロックチェーンでデータ化されます。図書館の管理サーバーのようなものは要らなくなります。

面白いところでは、エネルギー産業での適用が考えられています。
再生可能エネルギー、たとえばソーラーであれば、それぞれの家が発電所になるわけです。ソーラーシステムの場合は、一日の電力需給のバランス管理が難しいと言われていますが、それをブロックチェーンでやる。スマートメーターのいうものが各家にインストールされて、自動的に各家の電力需給を割り出してお互いに売り買いさせてくれます。

第四次産業革命というとき、ブロックチェーン技術と再生可能エネルギーとの結びつきが、一つの要です。

再生可能エネルギーの発電コストが、ものすごく下がりました。
1kwhあたり、イギリス、オランダで風力で7円、太陽光で3円。
日本では、天然ガスで13.7円。原子力が10円ほど。石油だと30円近い価格になります。

テクノロジーの進化でこれだけ安くなったということで、いま再生可能エネルギーへのシフトが起こっています。これが送電・発電のシステムにおいてブロックチェーンと結びつつあるということです。

NHKスペシャル「激変する世界ビジネス“脱炭素革命”の衝撃」(2017.12.17放映)という番組がYouTubeに載っています。

去年くらいからでしょうか、再生可能エネルギーへと転換するとカネを生むということで、莫大な資金・投資が集まり、一気にシフトが起こっています。

再生可能エネルギーがブロックチェーンと結びつくと、中央の管理システムが要らなくなります。

次の問題として、どこがこのブロックチェーン技術の主軸になるのか、ということです。このあたりの争いが、壮絶に行われています。

これに名乗りを上げたのが、サウジアラビアです。

昨年11月4日に、サウジアラビアの王子が11人逮捕されました。さらに200人を超える高官が逮捕されました。

サルマン皇太子という現在の国王の若い息子、彼が実権を握るための権力争いなのではないかと言われていますが、実はそうではない。サウジアラビアの古い経済から新しい経済にガラッと転換するに際し、古い経済の既得権益を持っている人間を皆、切った、ということです。

「サウジビジョン2030」というサルマン皇太子によって発表された国家ビジョンがあります。この中に、NEOM(ネオム)というIT次世代都市構想があります。ニューヨークの23倍の広さだそうです。

サウジの政変のもう一つの背景は、富裕層の財産を没収してこのための資金を得る、ということだったかと思います。

サウジは、このNEOMで、ブロックチェーンと再生可能エネルギーが結びついて、これをAIがコントロールする様々なシステムの開発センターになろうということです。

ピーター・ティールという人がパランティア・テクノロジー社という会社を持っています。現在のインターネット上での人をトラッキングするシステムで、個人情報をすべてインターネットから集めてきて未来の行動まで予測する犯罪予測システムです。人の行動は5年後まで予測できると言っています。このシステムはCIAとかFBIが使っています。

このピーター・ティールという人は、トランプのアドバイザー的な人です。そして、「シリコンバレーの時代は終わった。これからはサウジアラビアだ」と言ったということです。

第四次産業革命のもう一つの主軸はAIです。
サウジアラビアのリヤドにあるホテルリッツで、「サウジビジョン2030」のレセプションが行われました(2017年10月24日~26日)。
これは、先述の逮捕劇が行われるちょっと前に行われています。逮捕される11人の王子は、皆ここに招待されていました。そして、このイベントの終わった直後にこのホテルで逮捕されています。ホテル全体が刑務所になったということです。

ここで発表された、現存するAIで最先端といわれる「ソフィア」というAIを見てみましょう。普通の人間との会話の文脈を理解して、応答していくものです。
この会合の中で、彼女が世界で初めてロボットとしてサウジアラビアの市民権を与えられました。

このソフィアはどこで作られたか、というと、香港のハンソン・ロボティクスという会社です。彼らが今度、シンギュラリティ・ネットという新しい会社を立ち上げ、ブロックチェーンのもとにAIをたくさん走らせようというものです。

AIにはそれぞれ特徴があります。翻訳がうまいAI。顔面認識のすぐれたAI。自然言語を解する能力にすぐれたAI等々。これらいろんな特徴を持ったAIを走らせて、そこにタスクを与えます。

たとえば、1000ページのアラビア語の本を2日で10ヵ国後に翻訳して、わかりやすい要約を日本語で作成する、というようなタスクです。
するとAIが、命令を出さなくても勝手にネットワークを作って動き出します。そして2日後にきちんとタスクが完了して提出されます。
その役割の分量に応じて報酬が払われるのですが、それはAGIトークンという仮想通貨で払われます。これが浸透すると、「AGIトークンエコノミー」とでも呼ぶべき経済圏が形作られるだろう、ということです。

この母体となるブロックチェーンを作ったのは誰かというと、ロシアのヴィタリック・ブテリンという天才少年です。彼らはたくさんのAIをネットワーク上で自由に走らせて交流できるようにした結果、何が起こるか見たい。

シンギュラリティ(技術的特異点)という概念があります。技術がある一定のレベルに達すると予測できないことが起こるということです。多くのAIが脳細胞のようなネットワークを作ると、下手をしたらグローバルブレインのようなものができるのではないか、と期待しています。

このように、AI、再生可能エネルギー、そしてブロックチェーン、これら3つを主軸にして、産業革命のごとくにおととしか昨年あたりから劇的に変わろうとしています。

これらもろもろの流れの中で、日本は非常に遅れています。

再生可能エネルギーというのは一つの象徴だと思うのですが、今年あたりから“ジャパンリスク”、投資がどんどん日本から逃げていくリスクがあるのではないか、と思っています。

そうなったときに何年も経ったとき国債の危機にもなりかねないのではないか、とも思えます。それまでに何とかしなかえればならない。その動きは、あるのかもしれないけれども弱いのではないか、と僕は思っています。

多くの日本人は「日本は技術大国なんだ」とメンタリティが閉じてしまっています。「ソフィア」だって、ブロックチェーンがどれだけのものか、ということもほとんど報じられず、心地よい空間の中に閉じてしまっている。

これからどこかで転換していかねば、「ジャパンリスク」は増えていくのではないか、そんな危機感を持っています。

2018.2.22 SJC2月例会講演内容から一部を抄録しました。)

【SJC2018.5月例会】
★高島康司氏、2月例会大好評により、再登壇!
「日本の報道では伝えられない“世界情勢の肝”をつかむ」
—-技術革新とパワーバランスの密接なつながりに乗り遅れるな
■講師  高島 康司
(社会分析アナリスト、著述家)
■日 時  5月17日(木)17:30~19:00—講演会
    (19:00~20:30まで食事付の懇親会)
■会 場  お茶の水ホテルジュラク中二階「白鳥」C 

★詳細とお申込みは、こちら。
http://bit.ly/2FUhXwW