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【チームとしての考え方を共有化 】全4回―(3)「メンバーが理解すべきチーム運営の10の視点-1」

小池浩二氏の 【プレイングマネージャーの仕事術]】シリーズ(28)
【チームとしての考え方を共有化しよう 全4回】
第3回目「メンバーが理解すべきチーム運営の10の視点-1」

小池浩二氏(マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)
 
(1) 利益の追求はチームの未来をつくる

会社経営で最も重要なことは「継続して栄えること」です。言い換えれば、倒産しないということになります。

会社は天候と同じで良いときもあれば、悪いときもあります。しかし、不思議なもので、良い状態のみの会社はありません。日本経済成長の牽引産業である自動産業各社は幾度も倒産の危機に遭っています。

よく、社員の皆さんから、「会社の利益は何のために必要ですか」と質問を受けるケースがあります。

学問的に答えるならば、広義な意味で社会の発展のために必要となるでしょう。国の立場なら、税金を納める、雇用を確保するとなるでしょう。

しかし、企業サイドの立場になると、利益を出さないと未来への設備投資ができません。設備投資ができないと競争力のある商品開発ができなかったり、エリア開拓等はできません。つまり、同じ商品を同じ作り方で、同じお客様に販売していくしかないわけです。

そうなると確実に商品力は下がり、利益が出ずに会社力は衰退していきます。ビジネスマンにとっての利益とは、「未来への投資」のためです。そしてこの未来への投資が会社を継続して栄えさせ、社員の雇用・給与の確保を守ることに結びつくわけです。

(2) チームで動くメンバーの疑問をなくす情報の公開

なぜ、情報の公開が必要なのか?

私たちの生活環境は情報公開社会に様変わりして、それに順応して日常生活を送っています。携帯電話・パソコン・衛星放送等を利用せずに生活している人はいないでしょう。つまり、現在の社会生活は公開社会を基盤として生活を営んでいます。経済・産業は社会環境が変われば、それに対応していきます。

文明開化が起これば、武士がちょんまげを切り、理容業界が発展しました。石油が採掘されれば、それを使う自動車産業が隆盛を極め、それを走らせる道路が各地につくられ、建設業が盛んになります。

つまり、会社は取り囲む社会環境の変化に順応させるしかありません。
単純に、日常生活が「情報公開社会」ならば、それに会社の運営方法を合わせることです。

平日、あなたが多くの時間を費やすのは会社生活だと思います。朝、出勤して、自宅に帰宅するまでの時間は10~15時間ぐらいでしょう。1日の行動の一番多くの時間を費やしているのが、会社生活です。この「会社生活」で最低必要な情報が公開されないとメンバーはリーダー・会社に対して「疑問」を抱くのは普通の感覚です。

つまり、情報の公開に踏み切れない会社・チームはメンバーからリストラされると認識していただきたいと思います。

(3) メンバーの意識を共有化させるチームの土俵づくり

職場のコミュニケーションはメンバーの意識を共有化させる土俵づくりです。

共有化させる土俵とは、場・状況・情報の共有による問題意識の共有化になります。チームには常に考えること・実践していく内容のベクトルを合わせることが不可欠となります。これがメンバーの意識の共有へつながります。

メンバーの意識の共有化で大切なものがあります。それは成功体験・失敗体験の共有です。

成功体験・失敗体験は確かに経験しないとわからない点があります。大事な視点はこの成功体験・失敗体験を個人のものとするか、会社のものとするかでその視点が変わります。

創業50年の会社には50年なりの成功体験・失敗体験があるわけです。この歴史からくる知恵を共有するか、それとも自分で経験したことのみで仕事するのか? この違いです。

確かに経験していない人には疑似体験となります。しかし、疑似体験のよさは予防戦を張れることにあります。
「そういえば、部長がこのときはこうしたほうがよいと言っていたな」と知識があるだけで違います。

知識を知恵に変えることで人類は進歩しているわけです。それと同じで会社の歴史から知恵を仕事の進歩につなげないと歴史の意味が薄れていきます。

(4) チームは全社員参画型でつくる

参画とは自ら考え、判断して、行動を起こして、責任を取ることであります。
それに対し、参加はその場にいるだけとなります。

会社・チームの目的・目標は全社員が同じでしょう。しかし経営者・リーダー・メンバーのそれぞれの役割は違います。役割が違うから、「自分のチーム・自分」は今、何をすべきかを考えないと経営者・リーダーへの依存度が高まるばかりです。

ある特定の人に依存度が高いチームは崩壊危険度が極端に高くなります。
経営者一人では、リーダー一人では、成果に結びつかないテーマは山ほどあります。

今、すべき自チーム・自分の役割をメンバー全員が自ら考え、判断して、行動するから、「我がこと」としての意識が出始めます。そこに成果への執着が生まれてきます。そして達成したときの喜びの体感度合いが高まります。

体感度を強く感じることができる会社は「働く喜びを感じる企業」となり、自分はこの会社・チームから必要とされている充実感で満たされているから、働き人としては幸せです。

メンバーは、会社から個人的に得られる満足感、例えば、報酬、昇進等に対する満足感のみならず、会社の目標達成に対する満足感、そこに参画した喜びをも得たいとする願望もあるわけです。

(5) メンバーの人格を認めるチームの一体感づくり

「meイズム」という言葉があります。
これは人間にとっての1番の関心ごとは自分にあることを意味します。裏を返せば、他人に関しては無関心となります。一人の世界ではこれでよいのでしょう。しかし集団でチームを構成するときには、一体感づくりの弊害になります。

一体感づくりを考えるときに、チーム全体での一体感づくりとリーダーとメンバー間の個々での一体感づくりがあります。

先に考えやすく、取組もうとするのがチーム全体での一体感づくりでしょう。しかし、冷静に考えれば、リーダーとメンバー間の個々での一体感づくりができていないのに、本当にチーム全体での一体感づくりができるのでしょうか?

リーダーとメンバー間の個々での一体感づくりで必要となる行動は、リーダーがメンバーを認めることから始まります。業績のよくないチームのリーダーは、メンバーを否定しがちです。あれができない、これができないと嘆きます。それに比例して、メンバーはリーダーの言うことに聞く耳を持たなくなります。

なぜ、このようなことが起きるのか? それはリーダーがメンバーの人格を認めていないからです。

リーダーがメンバーの人格を認めれば、対等に話す行動を起こします。勿論リーダーが仕事の進め方には経験があります。これを全て対等に話せるようにしていくわけではありません。

メンバーでも少し考えれば判断ができるテーマで、素直に「あなたはどう思う?」と聞かれると、認められていることを実感します。人は誰でも、自分のことを認めてくれて意見を求めてくる人に対して、協力していこうと思います。

メンバーに関心を持つことが個々の一体感づくりの早道です。

リーダーであるあなたは、メンバーと違う高い視点で物事を捉え、最適になるように判断して、チームを運営しています。だからこそ、一体感をつくる意識こそはメンバーとの距離感を失くすことです。

小さな子供は、鉄棒の逆上がりができると親に認められたくて、すぐに報告してきます。人に認められたい欲求は人間の持っている原始的なものです。しかし、年齢を重ねると色々な物が邪魔をして、素直にストレートに表しません。

あなたのメンバーもリーダーに認めてもらいたがっていることを忘れないでください。

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■ 小池浩二氏 (マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)
実践に基づいた「中小企業の基礎打ち屋」として、中小企業成長戦略のシステムづくりを研究。これまで500社以上の中小企業経営に関わり、経営診断、経営顧問、研修等を実践。多くの経営者から「中小企業の特性と痛みをよく理解した内容」と熱烈な支持を得ている。
  http://www.m-a-n.biz/ 
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         筆者 小池浩二氏が
【プレイングマネージャーの仕事術】の概論を
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     http://www.m-a-n.biz/8-1-0.html