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【リーダーシップ・マネージメントの誤解 全4回】- ①「リーダーのみに期待しないほうがチームはうまくいく」

小池浩二氏の [プレイングマネージャーの仕事術] シリーズ(30)

【リーダーシップ・マネージメントの誤解 全4回】
第1回目「リーダーのみに期待しないほうがチームはうまくいく」

小池浩二氏(マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)
 
■リーダーシップではなく、現場の仕事ができるから、リーダーになる現実

中小企業ではチームのまとめ方がわかっていない人が、まとめ役になる現実があります。

わかりやすく説明すると、リーダーシップやマネージメント能力があるからリーダーになるのではなく、現場の仕事が他の社員よりできるからリーダーになる傾向が非常に強いと言えます。

リーダーシップやマネージメントの考え方や方法論がわからないままに、事前訓練もなく、まとめ役になるわけですから、どうすればよいかわかりません。

ましてや、この10年の環境変化に戸惑いを覚えるリーダーも多くいます。仕事のIT化が進み、社内のコミュニケーションの方法が大きく変化しました。多くの会社で見られるのが、グループウェアと活用することによって、社内での会話が非常に減っていることです。隣にいるのに、メールでやり取りする、リーダーが目の前にいるのに、口頭での相談ではなく、グループウェア日報で報告するとか、目的と手段の履き違えが多くみられます。

結果、その弊害として形だけのコミュニケーションとなり、真の意味でのチームを醸成していくプロセスが削がれています。

■成熟社会はリーダーのみに期待しない

また、成熟社会の本格到来により、業績の上げ方、仕事の進め方が高度化、専門化になりすぎてそれに対応していくのも大変です。シンプルに考えてください。リーダーの数より、メンバーの数のほうが圧倒的に多い事実。この激しい経済変化で、リーダーのみに期待してよいのでしょうか? わたしは違うと思います。

この10年の変化は誰もが未体験ばかりです。そして今までの経験は役に立たないとも言われます。この状況でのチーム舵取りは、初めてのリーダーばかりです。前が見えづらい時代には、リーダーに頼りすぎて、一人の判断に依存するのは危険です。舵取りが間違いやすい環境時はリーダーの間違いや迷いがチーム全体を悪い方向へ進めます。

リーダーの数より、メンバーの数のほうが多いわけです。リーダーもメンバーも始めて経験する現在の経済環境。今までのリーダーの経験もメンバーの経験も役に立ちません。

あなたなら、どう考えますか? 
わたしなら、リーダーとメンバーは一緒に悩み考え、対策を打ち出し、行動していくほうがよいと考えます。肩書きや地位だけで対応できる環境ではありません。ここで必要なことは、役割としての立場です。

リーダーという肩書き・地位だけでチームを動かすのはムリです。そうではなく、チームをメンバーと共に成長させていく牽引役としてのリーダーが欲しいのです。だから、チームをチームメンバー全員でサポートしていく必要性も出てくるわけです。

■駒を選べない中小企業でリーダーに人格力を求めるな

古くから「リーダーは生まれるものであって、創られるものでない」と言われてきました。これは政治家・武士の話であり、天命としてのリーダーです。

確かに生まれつきリーダー的性格を持っている人はいます。学生時代にクラブ活動のキャプテンや生徒会会長はその一例です。

しかし多くの会社のリーダーは大多数が後天的な役割としてのリーダーです。もって生まれた性格と後天的な役割認識としての資質は違います。後天的な役割認識とは自分がチームのリーダーとしての自覚があるかどうかです。

この自覚があれば、人は変われます。リーダー論に関する書物を読めば、究極的にリーダーは人間的魅力に裏づけされた人格力が決め手になるのは理解できます。しかし、駒を選べない中小企業で、人格力アップと言ってもいつになるかわからないし、定年退職でいなくなります。ましてやA部長がダメならB部長に選手交代なんて大手企業ならできるが、中小企業にはできません。

人格力を磨くことを否定しているわけではありません。それよりも、人を動かす技術を考え、覚えたほうがうまくいくことを理解していただきたい。なぜなら、これがリーダーシップであり、マネージメントなのですから。

■リーダーとリーダーシップは違う

リーダーとリーダーシップは違います。よく勘違いされる事ですが、リーダーとは、組織運営の役割としてなくてはならない機能です。それに対してリーダーシップは、リーダーであろうが、メンバーであろうが、ポジションに関係なく、自らがリーダー役を買って出て、周囲を巻き込み、引っ張っていくことがリーダーシップです。

チームリーダーはチームに対しのリーダーシップを発揮します。だから、組織の役割としてなくてはならない機能であり、この機能が無いチームは先導者のいない烏合の集団になります。

「リーダーになる」ことは難しくはありませんが、メンバーにリーダーと認知してもらわなければ、リーダーとしての役割は発揮できません。リーダーが旗を掲げても、振り返ると誰もついてこない「笛吹けど踊らず」では、リーダーの機能をチームにもたらしていないことになります。

リーダーであることは目的ではありません。これが目的なると独善的な推進者になり、古参幹部への道を進んでいきます。リーダーは組織の目的を達成する先導者の役割。現在のような変化の早い環境では絶えず「チームの目的・目標」を明確にしなければ、チームは迷ってしまいます。

リーダーは,一方では,自分は「何を達成するためにリーダーとしているのか」「その目的を達成するためにリーダーとして,何をしなくてはならないのか」「その目標を達成するためにはリーダーとして,どうすればいいのか」等々と考え続けなれればなりません。つまり、リーダーとはチームの目的目標を達成するための推進者であり、目的達成の責任者です。

■リーダーシップが上位者のみに求められるのは間違い

役職が上にいけばいくほど、リーダーシップがないと目立ちます。何であの人は部門長なのに、リーダーシップで引っ張ってくれないのかと、非常に目立ちます。

反面、例えば若い子が、1つのテーマで一生懸命頑張ってみんなを引っ張ると、あいつは若いのに、あんまり経験がないのに、しっかりしているといわれる。これもリーダーシップです。

リーダーシップはその人の役割遂行に必要な手段です。トップにはトップのリーダーシップが求められて、メンバーにはメンバーのリーダーシップが求められます。つまり、上に行けば行くほど、リーダーシップを発揮しやすい条件と裁量を与えられ、影響力が強いから、リーダーシップが発揮できないとすごく悪いほうで目立っていくっていうことになります。

リーダーシップとは、リードするスキルであり、周囲を引っ張り、巻き込んでいくこと。つまりチームの目標、個人の仕事を達成しようとするときにどれだけ人を巻き込む力があるかです。だから、リーダーシップは、リーダーだけではなく、全社員に求められる能力でもあります。

■「リーダーの成長が止まれば、チーム・個人の成長も止まる」ではダメ

基盤が脆弱なチームの特徴は、ある特定の人にしかできない業務が多すぎることです。日常業務、管理業務でもしかりです。

例えば、会議を行っている。司会進行は部長。部長の携帯電話にお客様から電話がかかる。そうすると会議が中断し、部長が戻るまで会議は始まらない。典型的な例です。

リーダーシップとは、リードするスキルであり、周囲を引っ張り、巻き込んでいくことです。このケースなら、部門のNo.2が司会進行をすればよいだけですが、やらないのではなく、できないのです。社長が居ないから……、部長に聞かないとわかりません……等と、このようなケースは色々な現場場面で見受けられます。

このようなプレイングマネージネント体制の中小企業のチームでは成長は望めません。「リーダーから教えてもらっていません、標準化ができていませんから、私たちはできません」では成長がありません。

極端な解釈をすれば、リーダーがダメなら、あなたもダメでよいのか、となります。それぞれ立場のリーダーシップは上の人間に対する依存心を失くすことから始まります。

リーダーシップは、高尚な知識でも学問でもありません。実践していくスキルでなくてはなりません。

 
 
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■ 小池浩二氏 (マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)
実践に基づいた「中小企業の基礎打ち屋」として、中小企業成長戦略のシステムづくりを研究。これまで500社以上の中小企業経営に関わり、経営診断、経営顧問、研修等を実践。多くの経営者から「中小企業の特性と痛みをよく理解した内容」と熱烈な支持を得ている。
  http://www.m-a-n.biz/ 
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         筆者 小池浩二氏が
【プレイングマネージャーの仕事術】の概論を
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     http://www.m-a-n.biz/8-1-0.html