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「2019年の世界経済を概観」(真田幸光)

真田幸光氏の経済、東アジア情報
「2019年の世界経済を概観」

真田幸光氏(愛知淑徳大学教授)

昨年末の先進国株式市場の混乱などを背景に、景気不安感を持ち、今年の世界経済はスタートしており、こうした中、世界経済の鈍化傾向は続く可能性があると見ておきたいと思います。

米中覇権争いをベースに混乱の火種が残る中、米国では、株高による資産効果が今後は剥げ落ち消費が落ちる、更に米国の減税効果も落ちることから、世界経済を牽引してきた米国経済は内需部門の低下を背景に鈍化すると一応見ておくべきでありましょう。

そして、世界的な在庫調整が当面続くことから、生産の鈍化が世界的に見られる可能性も意識しておかなければならないと思います。

こうしたことから、景気先行きに懸念を持つトランプ大統領の介入などもあり、米国の利上げ傾向に変化が見られる、よって、米ドル高トレンドにも変化が出る可能性があります。

一方、BREXITの行方は混沌としており、ドイツのメルケル首相、フランスのマクロン大統領の権力掌握力の低下が見られる中、独仏では混乱が拡大、そして、イタリアリスクも加わる欧州経済は、EUそのものに対する不安が拡大、その結果として、EUが発行している通貨・ユーロに対する不安も拡大し、欧州情勢は混沌を続ける可能性も高いと思います。

そして、ECBの量的緩和終了を受けて、ユーロ圏での経済混乱が加速化する可能性もありましょう。

また、米国と共に世界経済を牽引してきた中国本土経済も、欧米の景気減速感が強まる中、外需部門の伸びが鈍化、内需もこれにつられて減速し、バブル感が顕在化してくると見られます。

中国本土政府としては、財政が悪化しないように留意しつつ、内需刺激を図ると見られますが、全体的に景気減速感は否めないでしょう。

こうした結果、2019年の経済成長率は、米国が2.2%前後、ユーロ経済圏が1.5%前後、そして中国本土は6.0%前後と固めに見ておくと良いかと思います。

尚、原油価格は安定的に推移するものと見られ、工業国を中心とした世界経済へはプラス効果を示すと思います。

さて、このような世界経済動向を前提とした上で、日本経済を概観すると、外需部門の足踏みと昨年後半から顕在化しつつある在庫調整を主因として、日本経済の拡大ペースも当面は鈍化、経済成長率は1.0%前後となると見ておきたいと思います。

そして、上述したように、外需不振を予測する中、日本経済の成長には、内需の重要性が相対的に増してくると見ておきたいと思います。

日本経済にとって、好材料要因としては、上述した通り、原油価格の下落であり、悪材料は10月に予定されている消費増税でありましよう。

消費税引き上げに関しては、増税額を上回る規模での歳出拡大が計画されているとは云え、消費税引き上げ見直しの議論まで出るかもしれません。

しかし、私としては、日本国内の粋を集める形で、ここで一気に、
「日本再生の基盤を作る」
ことを目標とした計画を作り、但し、「利権にまみれず」、ということを前提として、粛々と国内投資を拡大していくべきであると考えています。

そして、先ずは内部留保に走ってきた民間企業が、少子高齢化と人出不足を前提にして、
「AI化を含むIOT化を一気に推進し、人と機械が共生出来るような企業社会の構築に向けて、民間投資の拡大を図る」
ことを念頭にして、活発に投資を拡大する、一方、日本政府は、先ずは、
☆老朽化したインフラ設備のリハビリ投資を粛々と実施する
☆更に、自然環境の変化などに伴うインフラ設備の見直しと投資を実行する
といったことを図るべきかと思います。

また、政治家、特に長い間、執権政党として動いてきていた自民党には抵抗があるかもしれませんが、ここで一気に、
「現在、認定できる年金資産を、現金と現物に分けて、全て洗い出し、その現存する年金資産を基にして、新たな年金制度を構築し、元号が変わる今年から、一気に年金の新制度に移行し、年金問題に起因する国家不安リスクを少しでも解消し、財政の健全化を図るべきではないか」と、私は考えています。

いずれにしても、2019年の世界経済と日本経済は、少し厳しめに見ておき、
「上振れをすれば、ラッキーである」
と言ったように考えられるよう、心しておけば良いと私は考えています。

 

真田幸光————————————————————
清話会1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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