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「カンボジア近況」—-虚業の繁栄「一帯一路」の一面 (後編)

小島正憲氏のアジア論考
「カンボジア近況」—-虚業の繁栄「一帯一路」の一面
(後編)「バベット・プノンペン」

小島正憲氏((株)小島衣料オーナー)

2.バベット近況

①カジノ復活

この10年、ベトナム国境にあるバベットには何度も訪れ、数か所あるSEZの様子など、つぶさに見てきた。ことにベトナムで反中運動(2014年5月)が起きたときには、ベトナムからバベットに逃げ込んできた中国人技術者やビジネスマンの受け入れ状況の調査を行った。

そのときカンボジア政府は、5000人ともいわれる中国人たちをノービザで入国させ、しかも宿舎を無料で提供した。バベットは騒然とした雰囲気に包まれたが、やがて中国人たちは、長くても2週間で、ほとんどベトナムに再入国していった。その後、バベットは以前の静かな状態に戻った。

バベットには10数年前から、ベトナム人相手のカジノが10権ほど乱立していた。しかし私が10年前に行ったときには、その多くが閉鎖されていた。その状態は、2年ほど前まで続いた。

ところが今回、それらのカジノのすべてがオープンしており、新たに数軒の豪華なカジノが新設され、しかも建設中のものもあった。地元のカンボジア人によれば、カジノ客はすべて中国人で、プノンペンから来るという。どうやら、この地も中国人に占領されたようである。以下は、バベット国境地域に林立するカジノの一部。

②中国人街

バベットには、国境の目の前に、大規模な中国人街が出現していた。地元のカンボジア人の話によると、カジノ関係者や中国人建設労働者対象のものであるという。

中華人街の中には、大きなビルが建てられており、1階には中華料理レストランやミニスーパー、薬屋、建設資材・工具屋、携帯電話屋などが並んでおり、2階以上は宿舎になっているようだった。さらに奥まった場所に、中国人建設労働者の居住する臨時宿舎が、10棟ほど建てられていた。

私が、それらの建物や生活風景をデジカメで撮っていると、街角にいた大柄な男が、「プシン、プシン」と中国語で怒鳴ってきた。その男はカンボジア人ではなく、どうも中国人街の中国人用心棒のようであった。私は悪いことをしているわけではないので、平然と撮り続けたが、その男が掴みかからんばかりの形相で迫ってきたので、足早にその場を後にした。この地は、中国人に取り仕切られているようだった。

   《 中国人街の入口 》


    《 中国人街の風景 》

   《中国人建設労働者の宿舎》

③SEZの様子

バベットには、10数年前から、タイセン・マンハッタン・ドラゴンキングなどのSEZがあり、それらは活発に稼働していた。ただしこれらのSEZは、過激なストライキが多発したことで有名にもなった。現在は、ときおりストライキが起きる程度になっているが、それでもつい最近、タイセンSEZのキングメーカーズという靴工場で、2000人の労働者が、工場が受注不足のため休業することになったため、休業中の賃金の一部の支払いを求めストライキを行った。

   《休業中のキングメーカーズ》

バベットのSEZは、どこも建設中の工場は少なく、あまり繁盛しているような感じを受けなかった。

③国道1号線沿いの開発少なし

プノンペンからバベットに至る国道1号線沿いには、シアヌークビルへ向かう国道4号線沿いとは、まったく様相を異にし、そこには開発の嵐は襲っていなかった。国道1号線沿いには、まだまだのどかな田園風景が広がっていた。この差は、何だろうと考えてみたが、解答は思い浮かばなかった。

④ベトナム人女性護送

バベットに向かう途中にも、ガソリンスタンドが多くあり、きれいなトイレやカフェ・アマゾンがあった。私たちが、途中で、アマゾンに立ち寄りコーヒーを飲んでいると、駐車場に黒塗りの護送車が停まり、中から若い女性がたくさん出てきて、トイレに向かった。不思議に思ったので、カンボジア人ガイドに聞いてみると、プノンペンの風俗街で働いているベトナム人女性で、ベトナムに強制送還されるのだという。ベトナムよりカンボジアの方が、夜の風俗の規制がゆるく、中国人客も多いので、それを目当てに出稼ぎに来るのだそうだ。

3.プノンペン近況

①コンビニ、大競争に突入

プノンペンでは、今、コンビニエンスストア出店の大競争が繰り広げられている。先行するイオンは、「マックスバリュエクスプレス」の店名で、1月に7店舗目を開店した。そのうちの1店に訪れてみたが、店頭には野菜や果物が豊富に並べられており、コンビニというよりは、ミニスーパーという感じを受けた。もちろんコーヒーを飲む場所もあってくつろげる雰囲気であった。

後発の「サークルK」(地場系)は、すでに18店舗目をオープンさせている。「サークルK」は、2階建てになっているところが多く、そこでコーヒーを飲んだり、弁当を食べたりできる。面白いことに「サークルK」には、「おでん」が売っていた。この暑いカンボジアで、「熱いおでん」が売れるのだろうかと思って見ていたが、結構人気があるようだった。

ちなみに、日系の「マックスバリュエクスプレス」では、「おでん」は売っていなかった。そのほか、プノンペン市内には、「クイック&イージー」(シンガポール資本)という店名のコンビニが8店舗ある。これらコンビニのいずれにも、バイク用の駐車場はあるが、車用の広い駐車場はほとんどない。

②イオン3号店出店へ

イオンは年初に、プノンペン南部に3号店を出店すると発表した。2023年の開業を目指す。すでにイオンは1号店・2号店を成功させていると言われており、その余勢を駆っての3号店というところだろうか。

(了)

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清話会  小島正憲氏 (㈱小島衣料オーナー )
1947年岐阜市生まれ。 同志社大学卒業後、小島衣料入社。 80年小島衣料代表取締役就任。2003年中小企業家同友会上海倶楽部副代表に就任。現代兵法経営研究会主宰。06年 中国吉林省琿春市・敦化市「経済顧問」に就任。香港美朋有限公司董事長、中小企業家同友会上海倶楽部代表、中国黒龍江省牡丹江市「経済顧問」等を歴任。中 国政府外国人専門家賞「友誼賞」、中部ニュービジネス協議会「アントレプレナー賞」受賞等国内外の表彰多数。