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「カンボジア近況」—-虚業の繁栄「一帯一路」の一面 (前編)「シアヌークビル」

小島正憲氏のアジア論考
「カンボジア近況」—-虚業の繁栄「一帯一路」の一面

(前編)「シアヌークビル」

小島正憲氏((株)小島衣料オーナー)

■カンボジア概況
・正式国名:カンボジア王国 
・元首:ノロドム・シハモニ国王 (在位 16年)
・首相:フン・セン (在任 21年)
・政治体制:立憲君主制  ※フン・セン独裁化の傾向
・人口:1506万人(2015年)
・国土面積:18.1035平方キロメートル(日本の約半分)
・宗教:大半が上座部仏教 その他イスラム教、カソリック
・民族:カンボジア人90%、その他チャム族、ベトナム人
・首都:プノンペン 人口約183万人
・国際港:シアヌークビル 国道4号線でプノンペンと直通
・タイと国道5号線、ベトナムと国道1号線でつながる

・2019年1月、中国が40億元(約640億円)無償支援決定。

・2018年にカンボジアを訪れた外国人観光客は前年比11%増の620万人。このうち、中国人旅行者数は70%増の190万人に達した。観光省は、中国からの旅行者数を20年に300万人、25年に500万人、30年に800万人に引き上げる目標を示している。カンボジアで1月30日、中国との観光年が始動し、開幕式が開催された。国別首位の中国からさらなる観光客の誘致を目指す。

・カンボジア北西部シエムレアプ州で昨年7月から建設中の文化施設「カンボジア中国文化創造公園」が、年内に完成する見込みだ。シエムレアプの中国領事館によると、中国との文化交流などをテーマにした7,000 万米ドル(約76 億円)規模の同事業には、中国の雲南文化産業投資集団が投資している。

・カンボジアの携帯電話サービス大手スマート・アクシアタは1日、中国人観光客向けSIMカードを発売すると発表した。中国本土系IT大手、騰訊控股(テンセント)が運営するチャットアプリやモバイル決済のブランド、「微信(ウィーチャット)」との業務提携により、「スマート・ウィーチャット・ゴーSIM」の名称で、3米ドル(約330 円)と5米ドル、7米ドルの3種類の価格のカードを販売する。 言語設定は中国語。

・中国の王文天・駐カンボジア大使は25 日、記者会見を開き、メディアが中国に関わる微妙な問題について報じる場合には、在カンボジア中国大使館に事実関係を確認した上で報道するよう求めた。

王大使は「最近、カンボジアの交流サイト(SNS)では中国に関するネガティブなニュースや『フェイクニュース』が増えている」と不満を表明。一例として、通販サイト「アマゾン」で便器の蓋にアンコールワットの図柄を使用した中国企業の商品が販売されていると一部メディアがウェブサイトで報じた件を挙げ、中国大使館が調査した結果、中国企業とは無関係であることが判明したと指摘した。

王大使はまた、「カンボジアを訪れる中国人観光客は中国人が開いたホテルに宿泊し、中国料理店で食事を取っており、カンボジアの経済・社会の発展に貢献していないという報道があったが、そうした見方は誤りだ」と主張した。王大使は一方で、フン・セン首相とカンボジア政府が「フェイクニュース」の広がりを重く受け止め、有効な対策を取っていることに歓迎の意を示した。

1.シアヌークビル近況

(1) 中国人激増とカジノ乱立

・米系不動産仲介大手CBREカンボジアは「あと3年でシアヌークビルは高層ビルが林立し見違えるような街になる」と予測している。2018年に同州を訪れた観光客は約200万人で、うち47万人が外国人。中国人は前年比2.3倍の12万人。
 
数年前から、シアヌークビル州には中国人観光客やビジネスマンが激増している。シアヌークビル州のカンボジア人口は10万人ほどであり、そこに12万人あまりの中国人が殺到しているため、今では、中国人街と化しており、治安の悪化、ホテル不足(宿泊料の急騰)、土地価格の急上昇、水不足、ごみ処理場不足など、厄介な問題が山積になっている。

ことに、カジノが大小とりまぜて87か所も稼働しており、夜間の街は、カジノの中国人用心棒や怪しげな中国人女性に占拠されているような現状である。また、昼中も中国人が地元法規を守らず交通事故を起こすため、喧嘩が絶えないともいう。

そのため政府もシアヌークビルで発生する殺人、麻薬密輸、賭博や誘拐などの摘発のため、州当局を支援するため、国家警察、移民局、総務局、法律専門家で構成する部隊を結成し派遣することを決定した。また中国政府も同州への中国人流入に伴って起きている治安悪化など各種問題の早期解決に向け、地元警察当局などとの協力を強化していくことを発表した。

つまりシアヌークビルの治安維持のために、中国政府が乗り出すことになったのである。地元では、中国による支配の強化として、それを警戒する声が上がっている。

 

現在、シアヌークビルでは、建設ラッシュであり、いたるところで小山が取り崩され、海辺が埋め立てられている。また海辺が中国人に買い占められ、数年前はカンボジア人が自由に遊べた浜辺や海水浴場が、囲い込まれてしまっている。さらにほとんどのレストランが中国語しか通じないようになってきており、看板も中国語が多い。

このような事態に、シアヌークビル州のユン・ミン知事が州当局に対し、クメール語の間違いなどを含む中国語の看板を全て撤去するよう命令したほどである。それでも現地人ガイドによれば、意味不明のクメール語を付記した中国語看板が多いという。しかもそれらのレストランやホテルから出されるごみ、観光客が捨てるごみなどで、沿岸部が汚され、ユン・ミン知事や職員や作業員によるチームの先頭に立って清掃に参加しなくてはならないありさまとなっている。

反面、数年前まで、シアヌークビル飛行場は開店休業状態であったが、今では、1日10便(そのうち中国往来便が70%)となり、賑わっている。

《中国企業が買った浜辺》

(2)日系SEZ VS 中国系SEZ

中国江蘇省政府外事弁公室の黄錫強副主任は10月29日、カンボジアの記者団と懇談し、省政府として、同省からさらに多くの投資家がカンボジア南部シアヌークビル州に投資するよう促していく考えを示した。黄氏によると、中国はシアヌークビル州にシアヌークビル経済特区(SEZ)を設置し、同SEZにはこれまでに125社が進出。2万5000人分の雇用を創出した。

同氏は「江蘇省からシアヌークビル州への投資はアパレル業界が主体だが、今後は家電製造や電子技術などを重点としていく」と述べた。シアヌークビル州のユン・ミン知事は1月25日、江蘇省南京市で呉政隆省長と会談し、両地の友好関係協定に調印し、「江蘇省と緊密な協力関係を築きたい」と述べた。

シアヌークビルには、日系:シアヌークビル港SEZ(設立2012年)と中国系:シアヌークビルSEZ(設立2008年)がある。この二つのSEZはまさに好対照となっている。日系SEZで稼働中の工場は2社のみであり、まさに閑古鳥が鳴いている。反面、中国系SEZには125社(SEZ内の実地検証では60社ほど)が進出しており、大盛況である。

日系SEZの借地料は21~55$/㎡、中国系SEZは35~55$/㎡と大差がない。その他の条件も、大きく変わらない。おそらく日系SEZには日本政府から資金協力がなされており、SEZの採算には無頓着であり、一方、中国系SEZは民間資本(江蘇省無錫紅豆集団)の手で開発されているため、採算を取るために懸命の営業努力がなされた結果であると、私は推察する。

いずれにせよ、この紅豆集団の大成功が起爆剤となって、シアヌークビルに中国人が大挙して押し寄せる結果になったのではないか。なお、このSEZからプノンペンの方に30分ほど走ったところに、新たに「浙江経済特区」の巨大なSEZが計画されている。

      

 

(3) 国道4号線沿い乱開発

中国の王文天駐カンボジア大使は、カンボジアの首都プノンペンと南部の港湾都市シアヌークビルを結ぶ高速道路を3月に起工することを確約した。同高速道の建設は、中国政府系の道路・鉄道建設大手、中国路橋工程(CRBC)がBOT(建設・運営・譲渡)方式で進める。建設費用は19億米ドル。総延長は190キロメートルで、工期は4年を予定している。中国の重機メーカー、山推工程機械(山東省済寧市)は、カンボジアのプノンペン―南部シアヌークビル間の高速道路の敷設事業向けに、ブルドーザー10台余りを受注した。契約額は1000万人民元(約1億6300万円)。

現状では、プノンペンからシアヌークビルに行くには、国道4号線を3時間半ほど走らなければならない。ここに中国の支援による高速道路ができることになった。現在、それを当て込んだものと思われる開発が、国道4号線沿いのほとんどの場所で進められており、乾季にはダンプやブルドーザーなどの巻き上げる土埃で、車のフロントガラスが短時間で曇ってしまうほどになっている。今では、国道4号線沿いで、のどかな田園風景など、全く見ることができない。

(4) カフェ・アマゾン

そのような国道4号線沿いに、きれいなトイレを備えたガソリンスタンドがたくさんできており、そこにアマゾンという名の洒落たカフェができている。コーヒーの味も美味しく、土埃の中を走ってきたドライバーたちに憩いの場を提供している。数年前、カンボジアではトイレ探しに苦労したが、今では、それは解消された。
なお、カフェ・アマゾンはタイ系資本。

(5) シアヌークビル港の利用

●中国海軍の艦隊、シアヌークビルに寄港
中国海軍のミサイル護衛艦「蕪湖」「邯鄲」(いずれも全長135 メートル、排水量4,000 トン)、補給艦「東平湖」(全長179 メートル、2万トン)が9日午前、カンボジア南部のシアヌークビル港に寄港した。今回の寄港は4日間の日程による友好訪問が目的だ。
中国海軍艦隊はカンボジア海軍の艦船による護衛を受けながら入港し、港では中国の王文天駐カンボジア大使やカンボジアの華人団体、中国企業の代表らが出席し、歓迎式が行われた。同日夜には、カンボジア海軍のティア・ビン司令官が乗艦し、艦隊主催の招待会に出席した。各艦は12 日まで停泊し、11 日には2隻が一般市民に開放される。

●商船三井、自動車船が南部港に初寄港
商船三井は25 日、同社が運航する6,400 台積み自動車船「グランド・オリオン」が、カンボジアの国際港であるシアヌークビル自治港(PAS)に寄港したと発表した。建設機械など約1万2,000 トンを荷揚げした。23 日に寄港した。商船三井の自動車船がPASに寄港するのは初めて。PASに大型船が着岸可能な多目的ターミナルができたことで、同社の大型船の寄港も可能になった。
カンボジアへの自動車輸送は現在、海上コンテナか陸送が主流だ。カンボジアでは、モータリゼーションの加速で輸入台数の増加が見込まれ、将来は大ロットの定期輸送の需要が期待される。

●海上自衛隊の練習艦2隻、2 5~ 2 8日に寄港
在カンボジア日本大使館によると、海上自衛隊の練習艦「しまゆき」と「せとゆき」が25~28 日にカンボジアの南部シアヌークビル自治港(PAS)に寄港する。現地の士官学校の卒業式に出席するなどして日本とカンボジアの友好関係を深める。25 日に現地で式典を開催する。その後、海上自衛隊の幹部がカンボジア国軍のシアヌークビル基地を見学するほか、首都プノンペンで海軍司令官を表敬訪問する予定だ。

シアヌークビル港には、中国だけでなく、いろいろな国の船が入港している。なお、シアヌークビル港は、2018年6月、日本からの円借款による多目的ターミナルが完成し、そのキャパを増やしている。

《シアヌークビル港の遠景》 

(続く)

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清話会  小島正憲氏 (㈱小島衣料オーナー )
1947年岐阜市生まれ。 同志社大学卒業後、小島衣料入社。 80年小島衣料代表取締役就任。2003年中小企業家同友会上海倶楽部副代表に就任。現代兵法経営研究会主宰。06年 中国吉林省琿春市・敦化市「経済顧問」に就任。香港美朋有限公司董事長、中小企業家同友会上海倶楽部代表、中国黒龍江省牡丹江市「経済顧問」等を歴任。中 国政府外国人専門家賞「友誼賞」、中部ニュービジネス協議会「アントレプレナー賞」受賞等国内外の表彰多数。