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【戦い方のセオリーづくり 全4回】 -③「仕事を教えて、標準化を図れ」

小池浩二氏の [継栄の軸足] シリーズ (41)
【戦い方のセオリーづくり 全4回】
第3回目「仕事を教えて、標準化を図れ」

小池浩二氏(マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)

■「標準化」とは仕事の型を決めること

中小企業は日常業務の標準化、そして体系化が苦手分野である。自分の仕事は自分にしかわからなくしていたり、職人気質が強く、組織の一員としての認識が不十分である。

そして退職者がでようものなら、一からやり直しのレベルならよいが、どんな仕事の進め方をしていたかを掴んでいないためにマイナスからのスタートになり、新人は大変な会社に入社したと感じ、3ヶ月ぐらいで辞めていくこともある。

■仕事を教えない自称職人集団

中小企業が業務標準化にとりかかるまでには、次のようなプロセスがある。

まず、会社の規模が小さく社員が少ない段階では、ある業務をわかっている(できる)特定の個人が対応している。

その後、人数が増加し始めると、他の人に業務を教えなければならない。そこで、できる人がきちんと教えることができればよい。しかし、そうでない場合は暗黙の了解で、できる人に仕事が集中し、できない人との格差が広がる。ムダが目に付く状態だ。経営者は「仕事を任せろ」と指示するが、囲い込み意識が強く、進まない。この段階になって、ようやく重い腰を上げ、標準化にとりかかる。

このように、中小企業の社員は日常業務の標準化・体系化が苦手である。不思議なもので、私の経験上、業績が上がらない会社になればなるほど、必要性は強く感じていても仕事を教える工夫をしない。

忙しいから教えられないのか、教える意識がないから教えないのか、教える方法がわからないから教えないのか? おそらくは、そのすべてが当てはまっている。

繰り返しになるが、標準化とは「標準を定め、それを組織の誰もができるようにする活動」である。だから、そのポイントは、業務について社員間の「相互理解」の促進と「互換性」の確保である。

■キーピングロスをなくす

なぜ、業務の標準化が必要なのか?
それは「キーピングロス」を起こすからだ。

キーピングロスとは「本来、できなければならない業務をできないために発生するロス」である。
よく製造業・建設業でコストダウン活動を見かけるが、コストダウン活動には大別すると、2種類ある。

まずは、本来のコスト(仕様書・設計書・見積書通り)に抑えるコストキーピング活動と、もう一つは従来のコストから製造方法・原材料等の変更を通して、コストをドラスティックに変えるコストリダクションである。

多くの会社で見受けられるのは、コストキーピーング活動ができておらず、確保すべき利益を確保できていない点である。これは戦術レベルにおいて、決まった具体策・基本動作の理解・浸透・徹底ができていないことを意味する。

何も製造現場・建築現場だけのことではない。むしろ会社を一歩出たら糸の切れた凧状態になる営業部門はキーピングロスの概念すらないところが多い。

つまり、1ヶ月当りの訪問件数、見積書提出数、新規開拓アクション件数等がなく、出てきた結果だけでプロセスを見ようとしないので学習能力・効果が発揮されず、毎回同じ行動・結果の繰り返しが多くなり、営業部門は中小企業の部門において1番のブラックボックス状態にある。

このキーピングロスゼロ活動での戦術の具体策・基本動作を会社、部門の共通語にしなければならない。この共通語が多いほど他人様の集団である会社にとって、現場を迷わせない指針となる。野球、サッカー等の集団スポーツにおいてこの共通語・決まり事が多く、それを守れるチームが強いチームである。

■2種類のマニュアル

標準化というと、すぐに社員から拒絶反応が出る。標準化とマニュアル化を誤解しているからだ。

マニュアル化とは、会社や組織の持つ伝統、個々の社員の持つ知識やノウハウを共有・伝承していくための「型」を決めることである。一方、標準化とはそれを誰もができるよう工夫することである。両者の違いは形式レベルと実行レベルであることを認識していただきたい。

違う観点から言えば、マニュアル化は知り・解るレベル、標準化はできるレベルである。だから、標準化を図るためには、「マニュアル」があればやりやすい。

標準化に有効なマニュアルは2種類ある。規範マニュアルと業務マニュアルである。規範マニュアルは経営理念、経営方針などを明文化したものである。つまり、企業としての「価値観」を理解させることである。

これは「中期ビジョン」「働く姿勢」「会社の風土」の意味合いなどを含み、組織の一員として働くうえでの、考え方の基準となるものである。業務マニュアルは業務遂行上のカン、コツ、ツボのポイントを工程、手順、方法としてまとめたものである。このマニュアルがあれば、その業務ができる人・できない人・あと少しでできる人に分けられる。この二つのマニュアルを用意したうえで、いかに実行させるかを考えていくのである。

●仕事の達成レベルを早める方法

次は、「標準化」の具体的な進め方である。仕事を教えやすくするためには、仕事を分解することである。なぜ分解するのかといえば、相手に仕事の種類を理解させ、仕事の遂行について、その手段・方法をわかりやすくさせるためである。

まず、分解作業を通じて、部門ごとの業務全体像と大分類となる業務を把握する。そして、大分類ごとに中分類を設定する。この中分類が職場の中核となる業務で、定型的な単位作業としての仕事を細かくしていく。

そしてその中分類ごとにその仕事の手順を小分類に分け、さらにその実施・判断のカン・コツ・ツボをまとめる。この中分類・小分類が教えるべき仕事となるのだ。

新人・中堅社員がどの仕事をどのレベルでできるかを把握することは、リーダーとしての基本動作である。これは、一般にいわれる戦力分析である。業務小分類に対して、「できない」が0点、「少しできる」レベルが1点、「手助けを受ければできる」が2点、「1人でできる」が3点、「教えることができる」が4点である。これで毎月、戦力分析の棚卸を実施する。そして総点数における獲得点数の比率を点数として表示し、本人にも自覚させる。

仕事の達成レベルは関係する社員が見られる場所、つまり職場に掲示する。そうすることで、思い立ったときにすぐに訓練ができるのである。

 

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