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「G-20と日本について」(真田幸光)

真田幸光氏の経済、東アジア情報
「G-20と日本について」

真田幸光氏(愛知淑徳大学教授)
 
国際社会は混沌です。

国際社会皆が、地球規模のグローバルに、均衡の精神で協調政策を取れば良いのでありますが、国家ベースのインターナショナルに、覇権主義に基づき、自国第一主義に議論を展開する、しかも強烈なリーダーもいないので、議論はまとまらないで、つまらぬ大人の妥協を見せかけでし、それにより禍根を残し、問題を先送りする、これが混沌の背景であり、今回のG-20は正にそうした状況を強く印象付けたものとなったと私は見ています。

一言で言えば、困った状況です。
もちろん、米中が一旦上げた拳を下ろしそうなことは結構ですが、それ以外に大きなトピックスもなく、各国がそれぞれの立場で、所謂、パワーゲームを展開した格好となりました。

さて、こうした中、以下は日本を軸として見るG-20について、私見をご披露させてください。
日本が初めて議長国を務めた日本各地でのG-20=主要20か国・地域の会議は無事に終了しました。

このうち、私は6月中旬に福岡市で開かれていたG-20の財務大臣・中央銀行総裁会議に関心を寄せて見ていました。

日本としては、一連のG-20会議は、
「国際社会に於ける真のリーダーシップを示すチャンス」
であったであろうと思います。

そして、この会議では、
「貿易摩擦による世界経済の下振れリスクの認識」
などを盛り込んだ共同声明を纏め、閉幕しました。
世界が注目する米中摩擦を回避できるような共同声明とはならず、残念でしたが、しかし、
「単に貿易収支ではなく、経常収支を見よう。
二国間ではなく多国間で議論しよう」
と二点の訴えをしたことはとても意味があることであったと思います。

そして、日本の麻生財務大臣は、
「今、米中間の話しか出ませんが、世の中ではいろいろな所でいろいろなことが起きている。
そういうことも含めて、我々としては検討しなくてはならない」
とコメント、2日間の会議では、ほとんどの国の間で米国と中国本土の摩擦で世界経済が下振れするリスクが共有され、議長国の日本としては米中を念頭に、
「保護主義への反対」
を明確に示したいところでしたが、採択された共同声明では、
「貿易や地政を巡る緊張は増大してきた。」
との表現に留まりました。

しかし、私は上記の二点を高く評価しています。

一方、通商関係大臣などが集って開催された会議では、情報通信を巡る米中覇権争いを背景とした、巨大IT企業の税逃れを防ぐ「デジタル課税」のルール作りについても、来年の合意に向け、
「取り組みを更に強化する」
とし、これに関しても、私は、一定の成果を上げたと見ています。

ただ、上述したことを前提としても、米中の意志からすると、あまり、効果が上がらないのではないかとも考えています。

即ち、
◎「貿易摩擦による下振れリスク対応」
これは、表面的に見れば、正しい対応と言えるかもしれませんが、米中は、情報通信の覇権を意識、制宙権争いを開始、その技術流出を意識した知的財産権の問題を先ずはターゲットとして戦いを始めており、米国は中国本土に対する圧力をかける口実として、貿易摩擦問題に焦点を当てていることから、米中の対立を抑制する為には、世界的な知的財産権保護に関する、米中共に納得する仕組み、ルールを新設しない限り、この問題の根源的な解決には至らない。
そして、米中は、覇権争いをしていることから、この問題で簡単に結論が示されるとは思われない
二国間ではなく多国間で議論しよう
米中共に、世界全体に対する圧倒的な覇権を持たぬ今、多国間協議で結論が出ないことは、世界の誰よりも米中自身が知っている。
そうした中、米中は、自らが、屈服させられる国を、二国間協議で撃破しつつ、テリトリー拡大を図る戦術に出ている。
こうしたことから、米中自ら、喜んで、多国間協議体制に転ずる姿勢に変化するとは思えない。

◎「デジタル課税」
米国のトランブ大統領は、GAFAとも水面下で連携し、情報通信覇権を拡大しようとする姿勢を取っているものと見られ、単純にデジタル課税に応じるものとは思えない。

と私は考えており、更に、世界の多くは、
「日米連携が見られる中、日本は米国寄りであり、公正明大なる第三者とは言えない」
との見方をしていることから、日本が真にリーダーシップを発揮する為には、並外れた努力と戦略を必要とする、と私は考えています。

そして、ズバリ申し上げれば、今後、日本が大きな成果を上げられるか否かは、日本が、世界の中で中立的スタンスが取れるか否かに掛かっているものと見ています。

日本の実力は今後も問われると私は見ています。

 

真田幸光————————————————————
清話会1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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