事件記者時代、警察担当のサツ回りの頃、殺しが起きれば、流しか敷カンのどちらか、だった。敷カンは面識犯。被疑者と被害者の関係が濃密な濃カンならスピード解決だが、希薄な薄カンや流しなら難航する。濃カンの動機は恨みか、金銭トラブル、痴情のもつれとシンプルだった。
しかし、時代とともに、様々な要因が絡み合うようになった。年間約1,000件の殺しの9割は敷カン。その6割は家族犯罪だ。今や殺人の半数以上は家庭の中で起きている。DV、親や子殺し、介護殺人……。児童虐待死は毎年50件前後。先の国会で、体罰を禁止する改正児童虐待防止法が成立したが、悲劇の連鎖を断ち切ることは容易ではない。