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「フランスに対する懸念について」(真田幸光)

真田幸光氏の経済、東アジア情報
「フランスに対する懸念について」

真田幸光氏(愛知淑徳大学教授)

私は、今年も密かに、
「欧州情勢」
には不安を背景とした関心を持っています。

英国の欧州連合離脱問題も、昨年末、その方向性に一段落がつき、EU加盟国が28カ国から27カ国になっても、
「メルクロン体制」
の造語に象徴される、
「独仏連携」
によって、EUは正常な運営が続く、よって、
「通貨・ユーロ」
に対する不安も払拭され、
「欧州発の金融危機」
は一旦回避されたと見られており、その為、欧州情勢は一旦、落ち着いています。

もちろん、英国と欧州連合の離脱協議の行方、そして英国そのものの行方には心配がありますが、先ずは、今年一年は不安定にまでは至らないと見られています。

また、懸念されたドイツ経済の不安も、米中摩擦が一旦、落ち着きを取り戻したことによって、ドイツの対中輸出が回復し、景気鈍化懸念が払拭されるとの見方が強まっています。

しかし、こうした中、フランスの情勢には気になる点があります。
それは、社会不安です。

フランス庶民は、既得権益層に対する強い不満が、
「富の公平分配を実施せよ!!」
と言う形で示されており、その結果、昨年から、
「黄色いベストデモ」
が収束しない中、鉄道職員などは、ストライキを展開しています。

そして、本年に入り、1月半ばには、フランスを代表する観光地であるところのルーブル美術館でストライキが発生して、これにより休館、フランス人来館者はもとより、多くの外国人観光客らが入場できなくなると言う事態になりました。

新聞報道などによると、ルーブル美術館の職員らが加入する労働組合がストを通告し、およそ100人のデモ隊が入り口前を封鎖し、この影響で世界最多、年間およそ960万人が訪れるルーブル美術館は休館を決定すると言う珍しい事態となりました。

フランスでは昨年12月5日から交通機関を中心に大規模なストライキが続いていますが、一連のストでルーブル美術館が休館したのは初めてとなります。

「政府が話を聞かないから、美術館を封鎖するしかないのです。」
とルーブル美術館職員は語っており、その背後には権力システムに対する強い不満があり、フランスの不安の根源になりそうです。

今後の動向を注視したいと思います。

 

真田幸光————————————————————
清話会1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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