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「人恋し、改めて人の良さを観る」(澤田良雄)

鬚講師の研修日誌(60)
「人恋し、改めて人の良さを観る」

澤田良雄氏((株)HOPE代表取締役)

◆ライブセミナー講師の人の恋しさ
 
人恋しい日々が続く。心身の健康を期して散歩すると以前と違う場面に気がつく。それは、行き交う人と交わす挨拶である。

「おはようございます」お会いする人に先手で声がけすると「おはようございますと」と返ってくる。声の大きさは様々だし、マスク着用なのではっきりしないこともあるが以前とは違う。それは、声がけに返してくることだ。

以前はまれであった挨拶の交わしが、なぜほとんどの人がすかさず返すのであろうか。きっと小生同様、人恋しさが募り散歩にも出て、そこでの人との出逢いにほっとする心境であろう。とりわけ小生はこの心境が強い。
 
なぜなら、例年この期はフレッシュマンの新たな心意気に寄り添っての支援を楽しむ時期であり、新任役職者として「さすがあなたが~長になってくれたおかげです」と選ばれた社員の想いの実現に向けた支援のときである。
 
今年は状況は一変。国難的コロナ感染防止に伴い、人との関わりの自粛要請に伴うライブ型セミナーは、中止、延期の状況である。寂しさが募る。芸能関係のタレントや音楽関係者が「ライブ中止、営業軒並み中止です」と話される状況に等しい。

勿論、例年関わってきた人材育成担当者との「残念ですが、当社のこの期間の申し合わせ事項ですので……」「理解できます……」とのやりとりがあってのことである。

とりわけ、先方からの「残念ですが……」この心持ちは感謝の心で受け止める。なぜかといえば、25年継続、15年継続、5年、昨年から関わってきた企業・団体での担当者が変われども、
「受講者を一人一人をしっかりみて、その場で掴んだ事実を元に、良さの裏付け、改善の根拠をきちんと説いてくれる、しかも当社の想いに準じてのことであり、一緒に研修を創り上げていくことは楽しい。それは、受講者が変わっていくのがみえるということです。……でも今年は……」
とやむ無しの意思の汲み取りに他ならない。

だからこそ「状況が変わって来ましたらまたやりとりしましょう」と敢えて聲高にお答えする。例え、実施契約を交わし、実施打ち合わせ日を目の前にしてでもある。

中には「例年はこの期でしたが、今年は半年後にお願いします。どうしても一度先生にみていただきたいですから」と半年後の実施を約束の交わしもある。
 
また、初出講を楽しみにした企業から、「今年は、どのような研修になるかと楽しみにしていましたのに……」との言葉も嬉しい。従って、「残念ですが」の感謝とは、出講期間の長短を問わず信頼していただけていることへの喜びである。

◆一方的施しは満足の実感が乏しい
 
勿論、研修法はライブセミナーにとらわれる必要は無い。デジタル学習の活用が注目され、オンライン化による学習、テレビ会議形式ZOOM活用、動画活用によるYouTubeなどデジタル機器、システム活用した方法は多様である。

先日、5分間会議で脚光を浴びている知友の講師O氏から、
「先日ZOOM方式でセミナーしました。シンガポールからの受講もいただきました」
とメールを受信した。講師業としての先手投資に、さすがの人と賞賛をした。

また、「イベントでの特別講義をオンラインで実施しました。反応がしっかりつかめませんが自己満足しています」と電子メール導入コンサルタントのH氏からの報告もいただく。H氏は創業コンサルタント・行政書士としての指導は常時対人面談によるので、一方的発信に違和感があったのであろう。

このような学習法は、新しいことではない。小生も従来から依頼に基づき、ビデオ教材の講師、講義録のDV制作、ビデオテレビ会議型セミナーも実施してきた。ウェブサイトへの執筆も長年続けている。しかしながら、今ひとつペースに乗れず、タイミングもずれる。それは、ライブセミナー講師の生命である受講者と創り上げていく育成が楽しめないことだ。なぜなら、全人間的コミュニケーションとしての反応が互いにみえないからである。

◆無観客・共に創り上げる感動が無いのは……

このことは、この時期話題になる「無観客」で成される落語家の「反応が見えないのでどう受けているのかつかめない」、漫才の方が「どこが受けているのか感じられず難しいです」との声と同様である。例え、シナリオ、筋書きがあっても、ライブ(生ま・現場・現実)だからこそ、観客からのリアクションの反応のサポートにより、その場に生きるアドリブの言葉や、仕草、表情がひらめき、最高の演芸を創造するのである。まさにお客様のお陰で、持ちうる力(専門力)を出し切れたとの満足である。

また、スポーツ界では無観客試合がある。真剣勝負であることに変わりがなかろうが、観客動員による試合後の「ファンの声に」「応援団の声援に」「サポーターの一体となったエールに力を頂いたおかげです」の勝利の言葉は聞けない。それは、観客から力を頂くライブだからこその双方で作り上げていく感動のシナリオで無いからだ。つまり、生で観た観客の、観劇、観戦だからこその醍醐味といえる。小生も同様である。
 
確認してみよう。「観る」とは、単に目に入る見るでなく、良く注意をして観察する、言い換えれば関心をもって、気にかけて関わることになる。だからこそ、送り手の一挙手一投足のわずかな動きにも目をかけ、全身で感じる反応である。

それは、加工されない現実であり、そこには必ず人と人との全人的コミュ二ケーションが交わされる。良く言葉に出す関心を示し合う、気に掛け合う、気持ちをくみ取り合う、そして即反応をすぐさま返し合う、しかもその反応は、褒めもあるし、失望もあるし、ブーイングと常に変わる。だから良い。それは、さらに良きものにしていこうとするパートナーシップが形成されている証なのだ。
 
従って、ライブ型セミナー講師としては、それだけ厳しく、一話入魂、一瞬懸命さで取り組む。だからこそ、終了時の受講者からの感想を聴き、一人一人の感想内容と、その人の変化の実態との整合性を確認した後での挨拶では、絶句し涙することも多い。講師冥利に尽きる瞬間である。まさに、落語家、漫才、スポーツ……の終了時の感動シーンへの近づきの確認である。 

現在は棚上げ、人恋しいときである。

◆ライブでの食を楽しみを提供する店に学ぶ
 
現在、厳しい職業は小生だけではない。その一つに飲食業がある。知友の店でも特に、多数の顧客、宴会等を主とした店舗は激減であり厳しさは相当である。しかしながら、小さいからこその強みで、顧客が続けさせている創作料理のG店がある。
 
このときだからこそ学ぶことを心して陣中見舞いがてら会食に赴いた。当店のI店長夫妻でもてなす食事はいつも興味があり、楽しく美味しい。それは、まさに夫妻個々の持つ職人技の融合されたライブのもてなしと言える。
 
今回もカウンター席を用意頂き、調理手順を観ながら、食材、調理法の説明をお聞きし、作り上がるプロセスを楽しむ。美味しそうだ、食べたいな、期待の頂き時に見事な美的センスの盛り付けでお勧めいただく。食して「美味しい」と満足感での感想を述べるとI店主が「ありがとうございます」とニコッと返す。合間の時間、妻が「以前京都から……」と話しかけると、女将さんがすかさず「いとこの〇〇子さんですね。お元気ですか」と、1年前に一緒したいとこの名前を見事に返された。「えっ」と驚き、その素晴らしさを賞賛した。
 
食を終え、ご夫妻の評判の証を小生なりに分析、話させていただいた。どうやら職業病かもしれないが、ライブの施しの共通に親和感を重ねてのことであり小生の指導力の緩み無き確認でもある。それは、

◎客のカウンター席は、お客様が調理を観つつ、I店主から食材の紹介、調理法など解説、丁寧に創るプロセスも楽しみ、味わいを高める楽しみを提供

◎自ら地産地消で厳選した材料の仕入れを生かし、顧客条件(年齢、好み、会食の目的など)に対応した献立の組み立て、調理で顧客様の食する楽しみを演出する

◎価格は高めであるが十分な満足を提供、顧客満足度を高める尽力は見事

◎パートナーの奥様の職歴は看護師。キャリが生きた接客サービスでは即名前を覚え、お名前、仕事、ご家族の話題など適度な会話で食する合間の時間を上手に繋ぐ
 
更に、その日のメニューを記録し、次なる来客時には、かぶらない献立提供に生かす。従って、「今度はどんな料理に巡り会えるか楽しみです」との声も多い。

と申し上げ、職歴が生きた料理人の専門力と、接客力の夫婦一体となった評判力の創出が立地条件から見込める顧客の特徴を踏まえて、高めの価格でも信頼と楽しみを提供できる成長店であると結んでみた。
 
ご夫妻から「褒めていただきありがとうございます。分析されていたんですか。そんなこと意識してません。自然体です」と笑顔で応答する。すかさず、「自然体」この言葉に賞賛を加える。それは、身についた本物に他ならないからだ。

夫妻は、続けて「現在は、ひいき様のお願いもあり、自粛要請を踏まえた開店時間とし、1日1~2組のお客様に楽しんでいただいています。厳しいときですがありがたいことです」と小生と目を合わせ頷き合う。

「ごひいき様も人恋しいんですよ。私達も同じです」と返す小生は、芸能、スポーツの観客と同類の「客ぶり」である。「客ぶり」とは茶道の言葉にあり、おもてなしする主人側に対しておもてなしの喜びを提供することである。ただ食べるだけでなく、一流の食の創作の味と、おもてなしの極意が学べるお店だからこそ、お客の和に満ちた「客ぶり」のパートナーシップで感動を創造する時の過ごしであると確認した。

それは、食を介しての人と人のライブコミュ二ケーションだからこその素晴らしさといえる。

◆人の良きところに視点を当てる
 
さらに、学ぶべき点は、人の良きところに視点を持っていることである。小生の知人、親族、以前お会いしたひいき様、そして、パートさんに対しても必ず良き事柄を話題として提供してくれる。それは、「全人間的コミュニケーションというなら人は長所もあるし、短所もあるだから両目を開けてみなさい」とは承知しての考察である。
 
なぜなら、小生は真に変えることの実効を生み出すには、前向きに理解し、納得して、言動を自ら変えていく働きかけ(指導・支援)を本望としており、YES・BUT方式の支援である。つまり、「良いところ(YES)をさらに良くするために(BUT)ここをこう改善すると、さらにこの良さは生きる」と示唆を施す。従って、
〇こう良いところがあるけど、ここがあるからだめ●、
●これがだめだけどこれは良い〇
という流れではない。

生身の人、大方はNOの否定が入れば指導から逃避する、反発する、自分はだめなのか、学習するべきかの葛藤が沸くことは当然である。特に若手社員層はこの傾向はある。

良さの見立ては自分が認知され、自分が頼られている帰属意識を助長し、自尊心が高まる、そこから新たなことへの挑戦意欲が喚起される。学びにおけるここまでの言動を変えていく挑戦へのストーリーが形成される。

勿論良さの見立ては結果だけの観点でなく、結果(その状態=言動)に至るプロセスを推察してみることである。そこには、 秘めたる強みを引き出し、生かす支援があり、本人自身が認識の無い利点の気づきの支援でもある。良い点を見出し指導の起点とする。指導による変化を診断し、新たに加わる良い点を認め、自尊心の高揚を支援する。だからこそ「働きがい」を持った活躍が醸成される。

「働く」とは動くではない。動くには人偏が無い。決められたルールに基づき動くロボットに等しい。働くには人偏がある。つまり人の力を重んじることだ。ライブセミナーの良さはここにある。たとえ多数の受講者であっても、その場の一人の言動の事実例は多数で共有化でき、事実例を生かした論理は納得性を生む。実は断言するのは、小生の自省とあがきのキャリアの重ねから掴み得た主張に他ならない。

◆このときだからの復習は「長所発見法」を楽しむ
 
思い返せば、思い上がりの指導を成していた時期もあった。それは、器の小ささをカバーする虚勢であったにもかかわらず、そのくせ「わかってくれない」「なぜ言ったとおりできないんだ」と感情の高ぶりを示す指導者だった。

当然、葛藤、悩みの境地に入る。この体験が次に生きた。それは、内観の体験による人間性の改善、指導の工夫によるスキル向上など自己改革によるキャリアの積み重ねに導いてくれたからである。やがて、人と人の関わりを楽しみ、あなたも良し、私も良い、あなたにはこんな可能性が秘められているだからこうしてみたらとの示唆を提供するサポーター(支援者)として役どころの見極めに近づいた。

従って「今日は、お会いできましたことを嬉しく思います。共に楽しく気づき合い・ふれ合い・磨き合って参りましょう。精一杯支援して参ります」、こう自筆で記すのは研修会場の黒板である。その舞台はライブセミナーである。対する受講者は常に環境の変化に対応して変わる。従って、自己練磨による器の広げは欠かせない。
 
人恋し、ならば、このときだからのゆとりを生かす自己磨きの復習は何ができる。それは人のを良さを素直に観る人間力を錬磨することがよい。その錬磨法はなにか。それは、長所発見法である。

早速、このときだから多くの時間を一緒する身近な妻の長所を書き始めた。50ポイントがまず目標。
1.明るい、*友達が多い、*食事がうまい、*電話応答が見事、*両親思い、*字がきれい、*自己主張をきちんとする、*娘から頼られる、*万華鏡を製作する、*万華鏡教室の指導の評判が良い、*人形劇のボランテイア活動が長い、*藍綬褒賞を授与された、*整理整頓……(ちょっと待て短所に目がいった)、*細かいことを気にかけない、*地元自治会役員として頼られる、*近所づきあいが旨い、*洗濯をよくしてくれる、*いちいちうるさいときがある(また、また)、20.私に気にかけてくれる……30……40……後10……。50.まだあるかな。……70まで書き足しを楽しんでいこう。結構楽しい。

デスクから妻にお茶をお願いする。心なしか弾む語調が面白い。読者諸氏も楽しんでみてはいかがであろうか。現在、関わる人へもし「あの人はどうも……」との強弱は問わずとも否定的見方があるとすれば<長所発見>の試しをお勧めする。必ず親和感が沸き、これまでの関係改善の糸口となろう。
 
ふと気づく。人を観る範囲は自分の器でしか見えない。自分を通して人を観る。だからこそ、自己の人間力を磨け、それは、知識を広めよ、知見の目を広げよ、辛苦の体験を重ねよ、考えることを楽しめ、整理整頓を徹底せよ、健康管理に自律せよ。良さを観る・みる力量は自己をさらに高めること。そのことなくして、相手の良さをいかす支援力は向上しない。との確認だ。

ならば、今このときだからこそ、学ぶ、試す、ものにする好機と捉えよ。と自己激励する。自粛要請による巣ごもりの時間のおかげと捉えてみると感謝である。

人恋し。担当者とのメールで交信、情報提供、髭講師のつぶやきを送信する。返信もまた楽しい。ビジネスでの現況対応ではテレワーク、オンライン会議、在宅勤務……でも業務は進む、以前よりも効率的だの論評もある。しかし、目にする耳にする「仲間が気になる。顔を合わしたい、たわいない話もしたい、食事を楽しみたい」との声も多い。それは、他人との接触、対面で関係を持ちたい、楽しい集まりの願望は生身の人の誰でも持ちうる素直な欲求である。

4月入社の新人も在宅勤務でラインでの研修が続いている企業もある。企業人としての企業の理解、活躍の基本事項や、専門分野での基礎知識、商品のと取り扱い、営業の基本動作など各自なりに取り組んでいよう。しかしながら、同期の仲間だからこその時を同じくした触れ合い、学び合いの機会が無いことは残念であろう。
 
研修方法もデジタル活用によるいつでも、どこでも、いくらでも、誰とでもとの利点を生かした取入れも加速する。だからこそライブセミナーを軸にした最適な人と手法を組み合わせた独自の育成商品を提供することを楽しみとする今日である。
 
コロナ感染の終息を1日も早く実感できることを祈念いたします。

 

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澤田 良雄

東京生まれ。中央大学卒業。現セイコーインスツルメンツ㈱に勤務。製造ライン、社員教育、総務マネージャーを歴任後、㈱井浦コミュニケーションセンター専 務理事を経て、ビジネス教育の㈱HOPEを設立。現在、企業教育コンサルタントとして、各企業、官公庁、行政、団体で社員研修講師として広く活躍。指導 キャリアを活かした独自開発の実践的、具体的、効果重視の講義、トレーニング法にて、情熱あふれる温かみと厳しさを兼ね備えた指導力が定評。
http://www.hope-s.com/