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【社長の心 全4回】ー①「払いたくても満足させられない賞与」(小池浩二)

小池浩二氏の [継栄の軸足] シリーズ (52)
【社長の心 全4回】
第1回目「払いたくても満足させられない賞与」

小池浩二氏(マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)

■人の財布と自分の財布

ご存じだろうか?
経営者は「賞与時期になると利益が出なくとも、資金繰りが苦しくとも賞与支給資金の借入れを起こす慣習があること」を……

会社の数値には見えない部分があり、仮に数値上1,000万の利益が出ていても手元に1,000万の現金があるかというとそうではなく、本来あるはずの現金が在庫に化けたり、売掛金としてお客さんの所にあったりするから必然的に現金が足りなくなる。

だから、賞与資金を金融機関から借り入れを起こして社員の皆さんに支給するという「私人」では考えられないことが現実としての経営施策として行われている。

私人として考えられないこととは、例えばご自身にお金がないと仮定して、お正月に親戚の子供たちに消費者金融会社からお金を借りて、お年玉を渡すだろうか? 恐らく親戚が集まる場を避けてお年玉を渡さなくても済むような対応をすると思う。

しかし、会社の賞与資金にも幾らかの利子がつく資金から支給されていることが以前より少なくなっているが、現実にはある。私人としてはお年玉を渡すために消費者金融からお金は借りないだろう。しかし経営者は賞与支給のために同じことをやっている事実を何人の人が理解し、問題意識を持っているだろうか?

財布の出所が会社に変わると自分に都合が良くなり、問題意識を持てなくなることは役員・幹部として失格である。

■経営者は情に厚い

経営コンサルタントの目から見ると賞与は「会社にとって必要な営業利益、支給可能な自己資金があって支給する」ものであるが、清濁併せ呑む中小企業ではそうは簡単にいかない。ましてやそのトップである経営者は、相矛盾した心の葛藤に悩まされている。

ある経営者は社員が辞めた理由が「この会社で働いていてもマンションも買えない」と言われ、社員の働く環境づくりと無理をして賞与支給している。またある社長は「この社員を叱らないといけないが辞めるかもしれない……」と我慢している。

ミスターコストカッターと呼ばれる人なら簡単に人員削減で片付けるだろうが、中小企業ではそれもままならない状況の繰返しで必然的に情も厚くなっていく。

■責任は取らなくとも責任は感じろ

賞与支給時期に経営者の話を聞くと「社員の顔をみるとその家族の顔まで見えてくる」「経営者としての責任が……」と日本人の伝統的思考である大黒柱発想が伺える。

しかし、会社の中における経営者は「大黒柱より中心的役割」が大切である。経営者が大黒柱的発想を持つから回りの役員・幹部の皆さんが「経営者に依存しすぎる」傾向が見られる。

本来、経営の常道から見ると賞与資金がなければ賞与は出せないし、利益がなければ賞与はない。仮にこの状況になったとしたら、その責任は社長一人ではなく、全社員にあるのではないだろうか……何故なら、みんなの会社だからである。

経営者は最終的に一人で責任をとるが、責任を感じることは役員・幹部・一般社員全員で感じなければならない。違う観点から見ると経営者一人がいくら頑張っても賞与は変わらない。全社員が目標・決まったことを実践するから賞与の額が変化するのである。

■他人事(ひとごと)から関心事、そして我が事へ

冬期賞与を支給できない会社の社員達の話を聞く機会があったが、彼らの不満は賞与が無いことではない。社員は業績が悪ければ賞与金額が減額・無支給になることは頭では理解している。

大事なことは結果としての賞与無支給より、その過程の業績推移・賞与見通しを報告してもらいたかったという意見が大半である。なぜならば、どのくらい、売上・利益を創れば賞与支給になるのかという目標がはっきりすれば頑張り方が違っただろうと、後の祭りであるが社員たちは考えている。

つまり、社員たちの願いは、貰うことに越したことはないが、それより会社の継続繁栄を願っているのである。

賃金・賞与を貰うことに関しては、我が事、業績・資金については他人事(ひとごと)では会社を維持していくために抜本的な構造改革をしなければ会社の第一義である継続・繁栄は難しい。

まずは、他人事(ひとごと)から関心事に変え、そして我が事となるために経営の仕組みをよく理解していきましょう!

 

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筆者 小池浩二氏が【中小企業に必要な経営の技術】の概論を動画で説明しています。

こちらからどうぞ → http://bit.ly/2NFrWHm

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