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「対面研修での未来創造支援:6つの確認と提起」(澤田良雄)

髭講師の研修日誌(63)
「対面研修での未来創造支援:6つの確認と提起」

澤田良雄氏((株)HOPE代表取締役)
 
コロナ感染防止対応がいまだ自粛要請での事業展開、未だ収束が見えない現状。だからこそ、悲観的思考に陥らずポジティブ思考による新たな発想、新たな活躍ぶりの実践が不可欠。現在の課題解決は、未来創造への第一歩である。

そのために、対面型研修で「何をどうする」と受講者と共に確認し、提起し合っている現状である。それは、従来から重ねてきた自信ある「絶対にこの方法がよい」との殻からの脱皮、言動を変える実践に向けての考え方、心得、具体的実践策である。

今回は、昨今の受講者との絡みから確認し、まとめ上げた提起事項を記すこととする。

◆運を呼び込む7つの習慣
 
経営者の学習仲間では、婦人衣料メーカーK氏は、生地を利用しての防疫力高いマスクを製造販売、イタリア料理店Y店主は従業員のアイデアを生かし、テイクアウトメニューを実施、印刷関係企業のI社長は、アクリル板を利用しての感染防止製品を開発販売。各氏のいち早く取り組んだ戦略は運を呼び込み、現状の厳しさをしのいでいる。

この時期でも、学習仲間がコロナ感染防止策を徹底しつつ、最適人員で集うからこそできる利点である。だからこそ、互いに紹介し合い、利用し合い、そして、忌憚のない顧客目線での所感が更なる進化を迅速に実現している。
 
それは、経営理念に基づく、環境変化への対応である。企業は環境適応業、企業は環境創造業との通説に基づき「厳しい、ならばどうする」の陽転思考に基づく新たな取り組みの実践に他ならない。

ここでの確認事項は、苦難福門の考えに基づく「運を呼び込む7つの習慣」である。それは、経営の神様松下幸之助翁は「運が良い」との陽転思考を伝えている。例えば、学歴の乏しさは「教えて頂くありがたさ」に、身体の弱さを「お願いすることにより人が育ち、企業の発展の力になった」等々。

現在、コロナ感染防止に関する厳しさ(苦難)をどう捉えるか。そしてどう対応するか。「運」も棚ぼたのように突然落ちてくることはあるまい。それは「運を呼び込む」普段の言動如何が鍵であると共に、有事の時だからこそ打開する考え方の持ちようである。

7項目と提起は次のとおり。

① ポジティブ思考でイメージを創る=当社の良い面を見出す、ラッキー観での新たな商品・方法をイメージ創造 
② 決して諦めない、変える継続の実践=達成まで続ける、失敗は成功のもと、知恵を重ねる
③ 運の良いと想う人と接する=感化を受けるプラス影響、愚痴、悪口はなし、これが良い
④ 勉強する=不得意は成長のチャンス。それは学ぶ力、新たな能力は運を切り開く知恵の元
⑤ 素直に感謝する=謙虚、人のおもてなしを感受する、施しの返しの実践、そこを人は支援する
⑥ 笑顔で接する人間味=人を包み込む豊かな人間性が生きる、運良き人との類を呼ぶ
⑦ 健康的生活の励行=身体、心、考え方の3つの健康、身体は快眠、快食、心は相談、考え方は社会性の研鑽、気力にあふれ、共感呼ぶ言動は協力者が集まる 

どれでも、ちょっと気にかければ実践できる。文頭の3氏の事業対応当初は、この7つの実践が生きたという。そんなこと言ってもと、やらない言い訳の正論は、人も「運」も呼び込めまい。
あなたもきっと良い運の人です!!

2.壁を破る・視点変え・発想転換8条件
 
国内トップ製鉄所でのベテラン層研修。ここまでのベテラン社員の活躍貢献度は見事。だからこそ今後もその凄さを生かした「さすが、おかげさま」と言われる活躍を楽しむことを支援しての研修である。

その実践は、経験則プラス改革(変えること)。よく、行き詰まる、壁に当たるということが言われるが壁は自身で作るのであり、経験を重ねた経験則が作り上げる。

絶対間違いないと、自分の経験則にはまればはまるほど壁・殻が厚くなり、崩せない。更に経験値の豊かさはこうすればこうなると先も読める。特に失敗体験がいらぬ先読みとなり、「でもね、だってね、こういうことがあったからうまくいくはずがない」との否定論での躱しもある。

この壁・殻破りはどうするか。それは、失敗を恐れず試しを成す、視点を変え、切り口を変え・発想転換することと確認し、その具体的取組み8条件をまとめ上げた。

① 自己の自信を壊す勇気を持つ。それは意固地、頑固、うぬぼれの脱皮なり
② 失敗は成功の母、失敗は次の成功の足がかりであり、より良い智恵を産み出すチャンス。
③ 自分と異なる考え方(異見)を歓迎し、新たな視点で物事をみる
④「もう一つ、もう一歩」のワンモア精神を生かしてこだわりの探究心を持つ
⑤ 他からの忠告、アドバイスは素直に取り入れる。異見こそ新たな発想源なり
⑥ 物事の核心を掴むこと。それは目的に対応して多面的思考を試みるチャンス
⑦ 鳥の目、(全体を見る)魚の目(流れを読む)虫の目(現実・現場・足下の実態に触れる)、コウモリの目(逆から見てみる)の4つの目の付け所を生かす
⑧ 時には異なった条件に身を置いてみる(場所・人の集まり・立場・仕事・学習など)そこで、いつもと違った目線での新発見を生かす
 
特に、ベテラン層の暗黙知(経験、勘、コツ)はハイテクのもと。それは、継続は力なりの継続とは変えることの継続である。だからこそ、絶対的自信での暗黙知を深化(変える)、向上が、デジタル化によりスケッチされてハイテクになることは周知の通り。

変えることがなければやがて、IT化、ロボットに置き換えられる。このことは、現在問われるポストコロナの対応にも通じる。それには、以前の戦略、戦術、方法に対する新たな発想で取り組む実践に他ならない。

3.心を満たす一言の挨拶が嬉しい
 
人の密着がタブーな感染防止策の現在、こういうときだから一言の心の交わしが大事とは周知の通り。建設器材メーカーS社の新人研修時、K取締役がぽつりと「最近社員から挨拶時の声が低いですね、と言われましてね」とつぶやいた。

計画的休業を取り入れた現状、ついつい募る不安感が挨拶にも影響を及ぼしているようだ。また、在宅勤務での孤独感がもたらす原因に、仲間との声がけがないことも研修時に出される実感である。

たかが挨拶、されど挨拶、各社での職場でのコミュニケーション、活気対策にはいの一番に提起される条件である。だからこそ一言掛け合う心の交わしはかかせまい。例え業務遂行方法が対面であったり、テレワークであったり、オンラインであっても成すべき心の交わしは一言の交わしで十分可能。それは、心の伝えは、言葉、文字、振る舞いの最適な表現方法で様々ある。

改めて挨拶上手のコツを確認してみよう。

□挨拶は寄り添う心の証です=挨拶の「挨」は心を開く「拶」は迫る・近づくとの意味合いがあり、互いに関心を持ち合うこと。関心を寄せる。そこには喜び、悲しみ、感謝、励まし、いたわり、ねぎらいを感じる感性の豊かさが生きている。

□気が利く挨拶=気が利く挨拶とは、関わる人へのおもてなしの魅せる表現。おもてなしとは、相手のして欲しい事はどんなことかを察し、その対応として、自身(社)ができる施しは何をしてあげるかを即断即決し、先手の実践だ。

黒酢メーカーK社から届く伝票には
「こんにちは。暑い日々が続きます。お元気でしょうか。今回もお買い上げ頂きありがとうございました……。時節柄ご健康に留意されますようご祈念いたしております。……」
と手書きで挨拶文を書き添えてある。

また、和洋菓子店M社の新幹線駅前店では、背広でネクタイ、鞄をお持ちのお客様には「袋を二重にさせていただきました」とお渡しする。それは、お客様の「重いな、遠方に帰る、袋が破れたら困るな」こんな心情の琴線・機微に触れる気配りの良さの施しだ。「気が利く」とはこういうときに発せられる言葉でもある。

□家庭では=ステイホームの時間も多いこの頃、親子、夫婦間で話されているだろうか。「K子さん、おはよう。今日もお世話になります」と言葉をかける幼稚園理事長もいる。生活場面に応じて「美味しいよ」「ありがと」「出かけてきます」「ただいま」「ごめん」「おやすみ」……の言葉掛けを自然に交わす、この習慣、環境が業務に反映する。この時期だからこそ習慣化させていこう。

□帽子(名前)靴(一言のプレゼント)を=出だしに名前をつけて、「あいさつ」そして、感謝、ねぎらい、依頼のことばを加えた結びの挨拶は嬉しい。例えば、「Sさん、こんにちは。昨日はご連絡ありがとうございました」。いかがだろうか。

□あ・い・さ・つ のキーワード。
あ=明るく、笑顔で目をかけて   
い=いつでも、どこでも、誰にでも
さ=先に 「挨拶は下位からすることだ」、ちょっと待って。立ち位置の逆転した先手の挨拶はその人の人徳。謙虚なねぎらいと感謝。まさに、「実れば実るほど頭を垂れる稲穂かな」。ベスト業者会と称する割烹店に関わる協力企業の経営者の学習会では「挨拶はかくれんぼと同じ、見つけた人が声かける」ことが合い言葉。 
つ=ついでに一言プレゼント(上記の靴)、そして続けること

4.好かれる人の8つの特徴
 
新人研修で、どんな新人が好感持たれ、良い対人関係が形成されるか。それは好きな人の条件を確認することだとし、話し合った。
まとめ上げた8つの特徴を紹介しよう。

① 明朗な人 (明るい・物事を肯定的に見て楽しい人・他人の自尊心を守る)
② 誠実な人 (言行一致で嘘がない・正直・善意で安心・奉仕の精神に富む)
③ 信用できる人 (教えられたことをきちんと成す。約束したことは守る)
④ 寛容性のある人 (他人のマイナス面も許せる・愛情深い・自分と違いのある意見も聞く)
⑤ 熱意のある人 (使命感に燃えている・忍耐強い・倫理観に基づき勇気がある)
⑥ 重厚さを感じさせる人 (軽さを感じない・人格、品格を感じさせる・深さを感じさせる)
⑦ 共感性のある人 (他人の立場にたてる・優しさを感じる・他人の痛みがわかる)
⑧ 調和感覚のある人 (物事を広い視点で見る・固執的な考え方でなく柔軟性がある)
ということである。

切り口を変えてみると、先輩、リーダー的立場の人に望まれる人物像でもある。例えば、指導でも好きな人だからこそ学びたい。業務でも、好感持った人だから一生懸命頑張る。こんな生身で感じ合うのが組織の対人関係である。

好感度高い人間性で感化させていく育成がやがて「あなたに似てきましたね」、こんな言葉が周囲からかけられる。これがその好感度高い上位者の証であろう。

5.このような時こそ、先に提供するギブの実践を
 
政令都市C市の現業部門の研修では、給食調理、学校内校務、運転、環境収集、道路整備……住民との密着の場での活躍する職員での学び合いである。従って、
「給食を食べた子供からの“美味しかったです”と笑顔で声かけられると疲れが吹っ飛びます」
「校庭がいつも綺麗になっていますね。と学校の側を通る住民からお礼を言われますと、見てくれているのだと責任とやりがいがあります」
とグループワークで交わされる活躍紹介である。

今年は梅雨の長雨が草の伸びを呼び、暑さは調理場の室温も異常となる。しかし、「皆の喜ぶ顔が仕事の喜びです」との施しの実態がここにある。それは、ギブの実践に他ならない。

グループ全体発表後受講者と確認した事項は、良く使う言葉のギブアンドテイクのとらえ方。周知の通り、ギブ=与える テイク=いただく。このギブ(G)とテイク(T)の組み合わせで5つのタイプの人間像が表現できる。即ち、

① T・T人間=貰うことばかり、貰うことが当たり前、だから感謝なく、くれないとの不平が出る
② T・G人間=やってくれたらしてあげるタイプ。してくれないんだからやる必要なしの考え
③ G・T人間=先に施しのできるタイプ、でも、やってあげたのに=「のに人間」では……。
④ G・G・T人間=いつも一つの貸しを作れる人
⑤ G・G・G人間=欲心なしの施しを自然にできる人
 
どのタイプのあなたですか。⑤のタイプ。そんなことをしたら損という人もいよう。しかし、現実には返してもらう意図をせずとも、「いつぞやは……いつもお世話になります」と自然に返ってくる現実は周知の通り。

二宮尊徳翁の教えに盥(たらい)の水の例話がある。それは「盥に入った水を欲心を起こして自分のほうに寄せようとすれば水は逃げる。こちらから人のためにと押しやれば、自分のほうに返ってくる。」との話だ。現代では、京セラ稲盛和夫会長の言葉に「利他主義」がある。まさにその実践が先手の施しといえる。

小生、地元会議所のコロナ対応対策に関して、二つの活動を施した。二つの活動はにわかに発足した自主的協力に委ねた活動であった。

自主的とは、やってもやらなくてもいいときに、自らやることであり、おもてなしの心に基づく気配り上手の施しといえる。だからこそ、協力には感謝心一杯。平時のときには見えなくとも、有事のときに見えるその人の潜在的魅力にも触れられる。

それは専門力であり人徳であり素晴らしいことの発見であったりもする。コロナ感染防止に伴う厳しいこのときだからこそ、互いに可能な施しの実践を心したいもの。将来の来たる日「あのときに頂いた施しのお陰です」と笑顔で交わす場面が目に浮かびほっとする一瞬である。

6.褒め上手になろう、その7つのコツ
 
T県農業団体での幹部職員の研修では、最近の若者は褒めて育てるとの考え方も確認した。褒めることとは「人・物・実行していることの価値を発見して伝えること」だ。

コロナ渦で収束が見えずの今日、企業業績も厳しく、孤独な業務遂行の多い日々、決して生き生きと、仲間と楽しく活躍する条件が満たされているわけではない。時には、自分のしていることがどれだけ役立ち、評価されているかの不安感に襲われますとの声も聞く。

とすれば、こんなときだからこそ、愛情豊かな褒め言葉のシャワーは何よりの安心感・ぬくもり・喜びの享受となる。とりわけ、業務方法の新たな取組みは新たな学びも不可欠であり、早期修得の指導が求められる。

ここでも小さな自信を重ねる働きかけは褒め、認め、励ましのプレゼント言葉が生きる。その実践確認・提起は次の7点とした。

① いいと思えることが目についたら、すぐに認めの言葉をかけ、なぜ良いかを説く
② いきなり満点を求めない。小さなことでも変化を見ていき、その都度、努力を評価する
③ 本人が見て欲しい、気が付いて欲しいとの欲求を察し、その点に着目し、はっきりと褒める
④ 地味なことでも継続している行動に目をかけ褒めていく。案外派手な活躍に目がいきがちだが、当たり前のことでもきちんと成すことは素晴らしいことである。
⑤ くどくならないよう褒める。また、あれもこれも重ねない。褒められ所が印象に残らないし、褒められた実感が薄れる。時にはおだてととられることもある
⑥ 褒め言葉には「良かった」だけでなく、「ありがとう」「ごくろさま」の感謝、ねぎらい言葉も効果的。また 高める言葉に「さすが」「すばらしい」「すごいですね」「見事!」の活用も良い
⑦ 大事なことは誰が褒めているか。あなたに褒められた、だから嬉しい。これが実態。褒め上手は人間性の豊かな人。だから社員は育つ。貴方は育て上手な人

アフターコロナ、どうする。それには、新たな試み、新たな実践の施しであり、それには新たな学びを成すことに他ならない。

現実の課題解決、それは、これからの未来創造への取組みの第一歩に他ならない。この6項目もその一助とし、持続的経営への新たな強み形成に役立てば幸いである。

 

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澤田 良雄

東京生まれ。中央大学卒業。現セイコーインスツルメンツ㈱に勤務。製造ライン、社員教育、総務マネージャーを歴任後、㈱井浦コミュニケーションセンター専 務理事を経て、ビジネス教育の㈱HOPEを設立。現在、企業教育コンサルタントとして、各企業、官公庁、行政、団体で社員研修講師として広く活躍。指導 キャリアを活かした独自開発の実践的、具体的、効果重視の講義、トレーニング法にて、情熱あふれる温かみと厳しさを兼ね備えた指導力が定評。
http://www.hope-s.com/