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「ロシア、プーチン大統領の悩みについて」(真田幸光)

真田幸光氏の経済、東アジア情報
「ロシア、プーチン大統領の悩みについて」

真田幸光氏(愛知淑徳大学教授)

私は私の個人的経験からして、ロシア人には比較的良い感情を持っています。
しかし、国家としてのロシアは、
「ロシアはやっぱり、おそろしあ」
否、
「恐ろしい」
と言ったイメージを拭い去れません。

また、多くの日本人の方が仰る、
「ロシアの前身である旧ソ連は第二次世界大戦末期も末期に日本に入り込み、日本から多くの領土を奪った義のない国である」
と言うイメージも、もちろん私も持っています。

さて、こうしたロシアの今のトップであるプーチン大統領には今、大きな悩みがあると言うのが大方の見方となっています。
即ち、
「プーチンにとっての悩み」
とは?

それは、ずばり、
「ベラルーシ問題」
であります。

ベラルーシのルカシェンコ大統領を、ロシアが引き取り、ベラルーシ政権を、ベラルーシの野党に任せるべきか、それとも、ロシアから軍隊を隣国ベラルーシに派兵し、野党や市民デモを弾圧にかかるべきか?と言う問題にプーチン大統領は直面していると見られています。

プーチン大統領は、本年年初に行われた、ロシア憲法改正の是非を問うロシア国民投票の結果、大統領の任期を2036年まで延長させることに成功し、この結果、ロシアの野党は、完全に無力化させて順風満帆な体制を更に確立していました。

加えて、所謂、プーチン大統領の政敵と見られるアレクセイ・ナワリヌイ氏が病院で、生死の境を彷徨っていることもプーチン大統領にとっては良い状況なのでありましょう。(但し、ナワリヌイ氏は恐らく,移動の飛行機の機内で、毒が入った液体を飲まされたと見る向きが多く、予断は許されませんが)こうしたことから、ロシアにおけるプーチンの政治的立場は安定していて、揺ぎのないものであると見ておいて良いものと思います。

また、依然としてロシアに抵抗して来るウクライナ現政府も、その領土の一部をロシアに強奪され、ロシアとの戦いに敗れ、ウクライナという国は分割されてしまっていると言うことは、ウクライナにとっては一大事でありますが、それはロシア、そしてプーチン大統領にとっては、好ましい状況かと思います。

こうした中、プーチンが今ここで、ルカシェンコ大統領に救いの手を差し伸べる様なことをすれば、ベラルーシ国民の反ルカシェンコ大統領へのデモは益々激しくなり、大統領交代を要求して来るものと思われ、その結果として起こり得ることは、反ロシア政権誕生と言う事態であり、ベラルーシ人の中にいる「親ロ派」の立場をも危機に晒す可能性もあり得るのです。

プーチン大統領にとっては、ベラルーシに対して強く出ることも、優しく出ることもどちらも好むところではないようです。

2018年のアルメニアでの革命でのロシアの失敗があります。
一方、親ロシアの2州を引き込んでのウクライナ内戦は終結の道はまだまだ遠しであります。

こうした中にあって、べラルーシは、未だ、事実上、唯一の旧ソ連の一員であり、従来から、一貫して親ロ派政権であり、同国経済は、ロシア経済と密接な関係にあり、同国の通商関係も専らロシアとの間の取引であり、それだけに、ベラルーシの野党も、ここでロシアとの関係を絶つなんてことなど、出来ないようです。

そこで、プーチン大統領にとっての解決策はと言えば、ルカシェンコ大統領を、ここでベラルーシ大統領の地位から解任させ、彼を、クリミア半島の首長に就任させることであろうか?との見方まで出てきているようであります。

今後の動向を注視したいと思います。

 

真田幸光————————————————————
清話会1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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