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【経営の技術 全4回】-①「会社は人間動物園であり、潰れるようにできている」(小池浩二)

小池浩二氏の [継栄の軸足] シリーズ (56)
【経営の技術 全4回】
第1回目「会社は人間動物園であり、潰れるようにできている」

小池浩二氏(マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)

■会社は人間動物園

スポーツ、趣味の世界等色々な組織の特徴は基本的に価値観が似ている人が集まる。

例えば、草野球の仲間で今度キャンプをしようかと話せばすぐに話はまとまる。しかし、会社組織は価値観・育った環境・年代・性別等の違う人たちが集まって作る特徴を持つ。だから、何か明確な会社組織を統一させる意図を企てないと組織として機能しない。つまり、放りっぱなしの状態ならば確実に崩壊するようにできている。

育った環境が違う、何が好きか嫌いかという物の価値観も違う人たちが偶々、同地域に住んで、待遇的にも妥協できるところから集まって組織をつくる。それが多くの中小企業である。

どうしても現在の会社で働きたくてしょうがなかったない人は5%いれば良いほうだろう。動物の集団である動物園は自然の共生に基づいて生きていくが、人間が動物園状態になれば、
「自分の生産性は忘れ、やれ評価が低いだの……」
「誰々さんと合わないだの……」
「会社の方針を示しても好き勝手にやっているとか……」
野放図状態になっている会社が多い。

つまり、会社は何もしなければうまく回らないということを前提に会社運営方法を考えるほうがうまくいく。

■獣道では危険が多い

中小企業はその生い立ちからみるに、生きていくために必死で、商品・顧客は自然発生的にでき上がって行く。そのため、ある一定規模まで成長すると曼荼羅模様を呈し、八方塞がりの状態になることがある。

この混沌とした状況は生き伸びて行くことを最優先した結果で、最初から体系的に論理的に商品・顧客構成などできるわけがないし、またその必要もない。しかし、業績が安定期に入りつつある状態になれば、企業規模も10人、30人と大きくなる。そこで必要となるのが“道”の整備であり、これこそが“企業基盤のインフラ整備”である。

創業当初には、獣道をつくりは走り、見つけては走って行く。このような行き方は先導者だから可能だったのであり、それができないのであれば先導者にはなれない。しかし、いつまでも獣道を走っていては道に迷ってしまう。道標をつくり、獣道を整備することが必要なときが来る。

この道標をつくることこそが社長の仕事である。経営計画という目標を具現化するための指針となる道標が“方針”である。

■しつけは苦虫

当たり前のことが当たり前のようにできない数多くの中小企業に小難しい経営理論を展開しても猫に小判である。

先端の経営技術を否定するわけではないが、「待ったなしの企業」以外はその前にやるべきことがある。
「何でもかんでも社長のワシに依存して、自分たちで考えようとしない」とか、
「業績を上げたいのに業績検討のやり方がわからない」とか、
「資金繰り中心の経営をやりたいのに誰も売掛金回収に責任をもたない」とか、
「部門長にマネージメントを執りなさいと指示するが、すぐにできる現場の仕事ばかりやって職場は糸の切れた凧状態になってバラバラだったり」とか、
「取り組むべき決め事を決めるが決まったことが決まったようにできない」とか、
「さんざん口酸っぱく報告しろと言っているにも関わらず催促しないと報告しない」とか、
「我慢に我慢を重ねても何回も無断遅刻・欠勤する」とか、挙げればキリがない。

本来、会社を運営するに当り、息を吸ったら吐くように当り前のこととしてできなければならないことである。

■創業者はハード(設備)、ハート(風土)は創るが、システム(経営運営法)までは手が回らない。

会社の成長軌道は
① 誕生期……会社が生まれて間もない時期、
② 基礎固め期……商品、顧客の基盤が少しでき上がる時期 
③ 急成長期……他人様が入り、会社が急激に成長する時期 
④ 安定期……売上高規模はメーカー(5億)、商社(10億)、小売(7億)になり
⑤ 成長期、になる。

会社をオギャと産み落として、・誕生期・基礎固め期で10年、・急成長期・安定期で10年、そして本格的な成長期に入るのにその後5~10年と一般的な中小企業は成長していく。

急成長期・安定期で社内、工場関係の基本設備は整う。そして本格的な成長期に入るときには風土ができ上がっている。しかしどうしても経営運営方法については後回しになる。考えてみれば、35歳で創業し、本格的な成長期に入ると年齢は60~65歳ぐらいになっており、経営の最重要課題として後継者育成が出てくる。

多くの経営者は経営運営方法について仕組みを創ったり、整備したいと思うが、目の前のやるべきことに追われ、経営運営法のシステムまでは手が回らない。

そこで、後継者に社員と一緒になって創らせる企業が多くなる。

■企業基盤のインフラ整備

私が「中小企業の基礎打ち屋」として1000社以上手術・治療してきた経験則でみると、経営の第一義は継続して栄えることであり、そのために奇策はない。やるべきことをキチンとやることの繰り返しが会社を強くする。

私が中小企業専門の経営コンサルタントとして提唱するのは「企業基盤のインフラを整備する」経営の技術だ。中小企業の社員は大企業の社員と比較すると基礎的な能力は劣るが、何とかこの会社で頑張っていこうとする労をいとわない職業人としての姿勢は立派である。

ではなぜ当たり前のことができないのか? それは能力がないからできないのではなく、今までやったことの経験がないのでやり方が分からず今はできていなかったり、習慣化されていなかったり、学習能力の差だけである。

よくよく考えてみれば、選ばれし天才集団のプロ野球選手でさえ、自主トレ・キャンプで反復練習したプレーしか公式戦ではやらない。基礎的能力の高い集団でさえそうなのに、基礎的な能力が劣る中小企業の人間集団が色々なことを事前準備して鍛えないで本番に突入したら負けるのは当然のことである。

基礎的な能力が劣る中小企業の人間集団の成長レベルを上げるためには企業基盤の環境を創る事が早道であり、素材で勝てなければ素材を磨く環境で勝つ風土を作ることが勝てる集団を創造していく。

その環境とは ① 公開経営 ② 全社員参画経営 ③ 一体感、をベースにした会社のシステムである。

経営者の背中を中心とした一体感で成長してきた中小企業にとって、その一体感の創り方を全社員参画型の公開経営をベースにした一体感づくりへと変革させねばならない時期にきている。特に創業者だからできたやり方と後継者ができるやり方は根本的に違う。

■血を通わせる

企業基盤のインフラ整備とは、木に例えると木の根であり、土壌である。この目に見えない部分がしっかりしていないと木は成長しない。仮に大きな木の幹・葉をつけていても根っこが腐り始めると倒れる。

企業基盤のインフラを整備するとは、まるで生き物であるかのように丁寧に水をやり、陽の光を当て、根づかせ、そして血を通わせることである。血を通わせるとは「社員に対して常にそのことを訴え続け、浸透させること」であり、雨の日・台風の日にどのように備えるかを事前に対応できるようにすることである。

土壌がしっかりし、そこに物選びが良いと会社は成長軌道に乗る。そして人選び、人づくり、金づくりが整い始めると会社は飛躍的に成長していく。

大事なことは全社員に他人事ではなく、我が事・自分事として会社の諸施策を考えさせ、「我が事型経営」を体感させることである。

例えば、一個人では手取り金額が減れば自分のお小遣い金額が減ることぐらい直感でわかるが、会社の場合は利益状況が分からねば賞与の状況はとても理解できない。

他人事として受け止め、自分たちが稼ぎ出したという考えではなく、当然の権利としか受け止めない。これも企業基盤のインフラが整備されていないから起こる現象である。

 

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筆者 小池浩二氏が【中小企業に必要な経営の技術】の概論を動画で説明しています。

こちらからどうぞ → http://bit.ly/2NFrWHm

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