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【経営の技術 全4回】-③「現場で戦うために必要な視点」(小池浩二)

小池浩二氏の [継栄の軸足] シリーズ (58)
【経営の技術 全4回】
第3回目「現場で戦うために必要な視点」

小池浩二氏(マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)

■戦う準備の躾づくりとは

業績が上がりにくい根本原因は、「相手と戦わずして、自爆して負ける」という中小企業の抱える問題特性が大いに関係している。それは基本動作ができず、決めことを守らない、組織を統一させる仕組みやルールと基準ができていない等の中小企業の生い立ちからくる「人・組織」の問題でもある。

戦う準備の躾づくりとは「自社内の規律・ルール・基準・方法」を知り・理解し・実践できるレベルになることである。どうしても基礎的な個人資質・働く環境整備が大企業・中堅企業と比べ、見劣りする中小企業は、この「本来、できているべき分岐点ライン」の底上げからスタートとなる。だから、この分岐点ラインをいきなり飛び超えて、「やれ戦略展開だ」と叫んでもうまくいかない。

この「本来、できているべき分岐点ライン」ができずに戦場に赴いて、いくら大将が笛を吹いても集団は彷徨集団になり、戦いには勝てない。野球に例えるといくら個人技能のボールを早く投げる、ボールを遠く飛ばす技能があっても、チームプレイである監督のサインを理解できない、送りバントができない集団では勝てない。

いくら良い素材があっても、戦うための準備ができていないために、負け戦に臨む指揮官(経営者)と戦士(社員)の集団となる。

■会社・商品のことを良く知らなければ戦う集団の一員にはなれない

誰も自分のことはよく知っている。生年月日・血液型・星座・名前の由来等を社員に質問して答えられない社員はいない。しかし会社の創業年月日・社員数・年商・歴史・メインバンク・商品のセーリングポイント等を尋ねても、十分に答えられる社員は少ない。

「隣の芝生は青く見える」ではないが、社長が想像している以上に社員は自社のことを知らない。本当かと思われるなら、自社の会社案内・ホームページの中から、一度テストを作成し、実施してみるとよくその実態がわかる。唖然とすることが多いのが実態である。

冷静に考えたら、自社の概要・自社の商品を知らずして戦いを挑もうとしているのだから、ある意味、中小企業はたくましい。

ある創業100年を超える食品メーカーの事例である。100年を超えているから、その分野では老舗である。ましてやこの会社の創業者はその分野を日本で広めたとして、特産地に銅像が建っている。

しかし、こんな誇りと感じられることでも社員・パートはお構いなしである。ただ単に時間を過ごし、給料をもらいに来ている集団としか外部からは見えない。会社の歴史、概要、商品がどのようなところで売られ、どのようなお客様が買い、どのような食べられ方をしているかは興味がない。

勿論、会社も教えていないから悪いが、パートさんと話しても出てくるのは「会社への不平・不満」ばかりである。だからパートさんの入れ替わりも激しい。会社の良さを知る前に辞めてしまうのである。当然の如く、パートさんは自社製品を買わない。

新しい人は「会社の今を見て」判断する。会社の歴史等については、知らないから判断材料に加味されない。だからうまくいかない。このような会社の社長は穴熊タイプの社長が多い。つまり、社員との触れ合いが少ない社長である。

反面、社長は会社に対してインナーセールスをする人と認識持つ社長もいる。
ある洋菓子メーカーの社長もそうである。この社長は常に従業員が集まるミーテイング・朝礼にて会社の歴史・価値観・現況について必ず短時間でも説明し、本題に入る。

縁があって働いているこの会社のことをよく知ってもらいたい—この社長の考え方に「親が自分のしている仕事・働いている会社を自慢できることは大切な子供への教育」がある。

つまり地域社会の一員として会社は貢献しなければならないとする考え方が根底にある。だから、社内に対してトップセールスを繰り返す。そうするとパートさん募集も「あの会社で働きたい」と応募を出さなくても、来るようになった。働いているパートさんが会社の良さを伝えてくれることにより、人材誘致セールスを自然としていたのである。

この会社の従業員・パートの人は自分たちが作ったお菓子をスーパーでどのような人が買うかをよく観察している。このように会社・商品のことを良く知ることは原点である。戦闘能力の高い会社は足元にあることをキチンとできる。

名刺1枚で30分以上話ができなければ、戦闘能力はつかないと私はよく説明する。名刺には種々様々な情報が記載されている。会社名・役職・氏名・住所・営業所・取扱い商品・ロゴマーク等である。

お客様・関係先に自社のこと、商品のことを説明できなければ、戦えない。現在の環境下では、営業担当だけが説明できても業績向上にはつながりにくい。生産部隊・管理部隊もキチンと説明できる会社はお客様への攻撃量を直接的・間接的に増加させることができるから、業績も向上しやすい。

ただ単に、「作業をこなす」パート・アルバイトならよい。しかし「仕事をする」社員なら、話にならない。自社の「売りは何!」、この商品の「特徴・他社との優位性は何!」、この商品は「どのような使われ方をし、どのようにお役に立っているか!」を知らないことは、作業を仕事のように見せかけて行っているのである。

何も問題意識を持たずに時間を費やすから、成長しない。このような集団を烏合の衆という。つまり、戦う集団の一員としては認められないのである。

ご参考にしてください。

 

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筆者 小池浩二氏が【中小企業に必要な経営の技術】の概論を動画で説明しています。

こちらからどうぞ → http://bit.ly/2NFrWHm

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