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「成績評価制度(3)~「評価する」ことを根本から考える」(蒔田照幸)

【新型コロナ時代を生き抜く人事評価】
第8回成績評価制度(3)~「評価する」ことを根本から考える」

蒔田照幸氏((株)賃金人事コンサルティングオフィス代表取締役) 

評価の実施ルールについて「それは何故なのか」と根本から考えてみたい。

まず評価時期だ。これは評価期間が終わった直後がよい。
直後だと言うと、よく出される意見として、評価する前に評価者と被評価者の面接をしてはどうかと言われることがある。評価前なら、面接に対して部下もより一層真剣になるのではないかという訳である。

それはそれで分からないでもないが、でもそれは期中において上司と部下が仕事について真正面からじっくりと腹を割って話し合っていない場合のことではないだろうか。適宜話し合いをやってさえいれば改めて評価前面接はやる必要はないと断言しておこう。

仕事についてとことん話すやり方はいろいろとあるだろう。上司がその場で指導すれば済むこともあるだろうし、また時には別室で話を聞いたりしなければならないこともあるだろう。

ここでお気付きの方もいるかもしれない。そう、これはOJTである。日々やっているから何でもないように思えるかもしれないが、これが重要なのだ。

仕事中心だと言っても、そこは人間対人間である。仕事から逸れることもあるかもしれないが、それもまたいいのであって、それこそがOJTの醍醐味と言っていいだろう。最近は1on1(ワンオンワン)という部下指導のやり方を取り入れている企業が増えてきていると聞くが、OJTが基本になっている。

OJTにしろ1 on1にしろ、要は、あの手この手を使って部下が今以上に仕事をうまくやれるようになればそれでいいのである。それだけだと敢えて言い切っておこう。そこに人間的成長だとか言いだすから話がややこしくなるのだ。

結果的には、仕事を通して人間的成長があるだろうが、課長がそこまで考える必要はない。指導の時には部下の仕事の上達のことだけを考えておればいいのだ。

会社は、課長に多くのものを要求し過ぎである。余談になるが、先日、訪問した会社の社長と話していたら、「わが社の管理職の役割を幹部社員と話して決めたので見てほしい」と言われ拝見したが、役割のみならず人間性についても触れられており、仕事が完璧にできる聖人君子というイメージだった。どこにそんな人間がいるのだろう。社長には「多すぎますよ」とだけ言っておいた。

次に評価者を誰にするかということだが、評価者は直属上司である。例えば、課長の部下として社員が7人いたとすれば、この7人を評価するのは直属上司である課長だけという意味である。だから間接上司である部長は評価自体には直接参加しない。

未だに課長を一次評価者、部長を二次評価者にしている企業もあり、それなりに納得性もあるようだが、やはりこのやり方は改めたほうがよい。

直属上司だけにしている理由は、評価対象が成績だからである。つまり一番身近にいる課長が一番よく分かっているはずだという訳だ。もしもこれが能力や真摯さ、協調性、積極性、責任感など人間そのものを直接評価するということであれば、間接上司や隣の職場の課長や部長にも評価してもらったほうが正しい結果が出るだろう。

コンサルをしていてよく話題に上るのは、「課長だけに任せて大丈夫だろうか」という声である。課長だけでは心細いようなのだ。それではどうしようかということになり、最初から部長と一緒に評価させてみようということになりやすいが、これは間違いである。

では、このような場合どうしたらいいのだろう。答えはこうだ。課長に責任を持って評価させ、その評価結果を部長に渡し、部長はしっかりとその評価結果を審査し、納得がいかなければ、差し戻すのだ。

差し戻したところで同じ結果だろうから、その場合は、部長は項目ごとに一緒にチェックすることだ。そして課長の責任で最終評価を決めることになる。最初から、部長と一緒に評価することとは本質的に違うのだ。

成績評価基準書には、課長の役割が明記されているが、管理者研修は定期的に実施したほうがよい。この管理者研修とよく似た研修として、評価者の甘辛などのクセを矯正するという評価者訓練なるものがある。

私は人事コンサルタント歴35年になるが、なりたての頃、数年間はこの訓練の講師を何回もしたことがある。その結果の感想であるが、やはりクセの矯正は難しいと思う。会社としての評価基準を共有しようという研修なら効果はあるだろうが、甘辛の程度を一致させるというのには無理があり、クセの程度の矯正訓練はお勧めできないというのが結論である。

 

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■日 時  2月10日(水)14:00-15:30 
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蒔田照幸((株)賃金人事コンサルティングオフィス代表取締役)
ミルボン、ユニクロ、九州共立大学、(医)金森和心会病院など約700社、人事コンサル歴35年、懇切丁寧な指導で定評がある。人事評価分野では、2018年に大学と提携しAI投影法を開発。京都府立大学卒。1949年三重県出身。

◎賃金人事コンサルティングオフィス
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