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「新たな想いの実現を楽しむ自己管理の実践策」(澤田良雄)

髭講師の研修日誌(67)
「新たな想いの実現を楽しむ自己管理の実践策」

澤田良雄氏((株)HOPE代表取締役)

新たな年を迎えて、企業及び諸団体でのトップクラスのご挨拶で所信が表明されている。

関わる経営者の学びの会では今年も各メンバーから「今年の抱負として」色紙に筆し、発表することからスタートした。いくつか紹介すると、
・「真価の追求(本物の価値は何か原点と整合性を診る)」とは建設機材メーカー社長
・「歩む」(早く無くても一歩一歩確実に実践する)これは幼稚園理事長、
・「継続」(過去の良き取り組みの再活動)とはメーカー役員、
・「挑戦」(倒産から復旧新たな事業に挑む)は衣料メーカ-社長
・挑戦でも「継続挑戦」と掲げたのは前年に二期赤字から見事に1,000万円のキャッシュフローを確保したご夫婦で経営する墓石関連社長である。
また「成長」を掲げ、昨年トップ幹部で取り組んだ学習を本年は実行でものにする覚悟を表明したのは運送業トップである。

一方、活躍向上に向けては「無私の精神で誠実な振る舞い」「事前準備」「凡事徹底」「一心でとりくみ」が発表され、「安心・安定」と掲げたのは高齢者施設での現コロナ禍への厳しい環境整備に取り組む副施設長、そしてコロナ禍での第一線に立つ看護師長は「丁寧」と発表した。

更に「諦めない」メーカー役員、「優先順位の選択」と記したのは、議員と店舗経営の二足のわらじで活躍する社長、生活規範向上では「早起き」と会の運営を支える役員、「心機一転」は団体役員、「鍛える」とはコンサルタント、「感謝」と掲げたのはガンから生還したトップの表明である。

そして健康管理では「体調管理」は80才呻吟師匠、「体重70kgとする」と目標とを掲げたのは一貫して健康を掲げてきた店舗経営者。その実績は素晴らしい。きっかけは、糖尿病の診断。「このままですと、透析の治療になります」との診断に奮起してライザップを利用し、30kgの減量成功、デブスタイルからすっきり型に変身、現在も日々10km~20kmを走る実践者である。今年は更なる取り組みとのことだ。 
 
元気な発表から以後、この約束事の実践を楽しみ、実践結果を披露し合いは楽しみである。勿論、企業活動での目標管理とは異なり、達成への義務、責任は強くなく、あくまでも自身の自己管理による想いの実現の取り組みであるが、結果報告では、見事になしえた成果を披露するメンバーも多い。

そこには共通した条項が浮き彫りになる。ここでは、この想いの実現に向けて、自己管理の過程をどう効果的に重ね、自己の達成感を享受するか、その実践コア条件を6点提起してみよう。また、現況のコロナ禍でのオンライン、テレワークなどの在宅勤務での取り組み、あるいは、自粛要請への対応にも応用いただくと良い。

まず、
1)第一歩は「自律心」がいかがであろうか。
 
自己管理の基本は自身でPDCAサイクルを回すことであり、その取り組みは他律されることなく、自己をどれだけ律すかが肝心である。

自律とは、自分は何をなすべきか、何が正しいかを判断し、決断し、自らの意思で行動することである。そこには、自ら自分の行為を規制することもあり、外部からの制御から脱して自身の立てた規範に従って行動することである。

従って、次の6点に自ずから心することになる。

①「したい」「したくない 」との感情的レベルで事に当たることなく、想いの実現に向けた具体的事項は必須条件として取り組むこと
②「このくらいはまあいいか」のほどほど感や怠惰心を律して、最高実践に自ら追い込む強く、厳しい自己統制(全体を見て収める)を試みる
③「好き、嫌い」の単なる感情支配による事柄、対人関係への取り組みは排する
④ 計画・予定の実践段階では、自己都合による先送りは極力避けること
⑤ 組織常識(理念・約束事・文化・立ち位置など)を踏まえ、掲げた想いの実現に合った行動をするとの自覚を持ち続ける
⑥ 人間の良心、自らの内なる純真なる声に従って、自分の言動を厳しくコントロールすることに留意する
 
自ら呪縛する感は否めないが、自由な選択行動だからこそ敢えて律する心得の提起である。それには、想いに対する気概如何が道どうあるかが前提である。

問いかけを本・気に集約してみると、以下である。

2)3本+5気の原則

(1) 3本とは、本心、本物、本腰であり、想い自体に対する確認である。

掲げた想いが単なるそのときの気持ちの表現であったり、その場で掲げる義務の対応であれば、その想いは単なる作品であり、本物、本心とはいい難く、実現に向けての本腰入れての実践は難しい。

何事も本腰にならねば、良い実践はできないし、新しい力、知恵も生まれて来ない。振り返り時に時折、聞く言葉に「忘れていました」「最初は気にしていたのですが、いつの間にか……」に類した言葉はその類いの掲げた想いであろう。

実は、この3本は、切実感とか切羽詰まったときの影響があろう。この詰まる実態が生死にかかかわる段階であれば自ずと本心、本物、本腰入れての取り組みを誘発させていくからである。

紹介例での「糖尿病診断で透析になります」「2期赤字、このままだと倒産するかも……」等の現実を突きつけられたときに湧き上がる想いは一例である。切実感の希薄さの例は、昨今のコロナ禍での感染防止の要請へのインタビューで「身近に感染した人がいないから」との回答に見ることができる。

想いは3本に裏付けされていることが前提であり、達成への実践過程での自律の甘さを左右する。そして、

(2) 5気とは
 
3本に基づく実践へ取り組む気構えに着目し、5気をストーリー化すれば、

本気になれば→やる気が出る→そこに熱気が沸き→根気よく続けることにより→(歓喜の喜び)→その事実は周囲からの評価により人気を得る、
となる。

一例を紹介すると、昨年の想いの実践で「月100万円の売上げを確保します」と掲げた創業1年目のトータルボディケア(マッサージ治療院)の院長が10月に達成した。

定例学習会で報告があったが仲間で賞賛の拍手を送った後、その経過をお聞きした。シングルマザーで、2才の子供を育てながらの創業の1年目、HPも単なる紹介でなく、差別化した治療法、ご利用者の声、写真(了解)などの編集にこだわり、人脈による会合参加(子供同伴)など、
「できることは最大の取組みをしました。おかげで、支援者も広がり、月売上げ100万円を達成しました。勿論コロナ禍ですので毎月とは行かないことは事実です」
とまさに「やったー」との歓喜での回答であった。

なるほど5気による実践の集積である。当会、幼稚園理事長から、職員への福利厚生として導入支援もあるが、会友としての相互支援の自然発生も喜ばしいことでもあった。5気の実践ぶりは人の心を動かすパワーといえる。

3)実践は今できることの最高実践を心する
 
新人研修で訴求事項での第一としているのは、
「新人でもできないわけではない。今、できることの最高実践せよ。決してあのときにやっておけば良かったとの悔いは絶対にしないこと。それはやればできる自分を粗末にすることである」
と説く。

これは、自律、そして5気実践の基本心得である。

よく二人の自分がいるという説を聞く。それは、
「やろう、やらねばとする自分と、やってもやらなくても周囲からとがめられることはない。今やらなくても良いという引き留める自分です。そのときに勝つ自分は、引き留める自分なんです」
という内容だ。

誰しも程度の差があれども肯くことである。とすると、他律されることなく、義務・責任が強く問われないときには何といっても、この後者の自分に勝つことが不可欠となる。

小生の指導理念は、一期一会、一話入魂であり、一期一会とは、
「茶会の心得して、この茶会がまたあるとは限らない。ならば立てる人は最高の技と心を施し、いただく人は、その素晴らしさを存分に味わうことである」
即ち、生涯にただ一度、まみえること、一生に一度限りの大切さを説いた言葉である。

先日お会いした、ボクシング界での元東洋太平洋ライト級チャンピオン坂本博之氏は「一瞬懸命」を信条としていると話される。闘い、一発で勝敗が決まるこの厳しさの極限での活躍だからこその言葉だ。

一生懸命、一所懸命、一瞬懸命……懸命とは力一杯頑張ることである。

いずれにしても「機会損失によるできなかったら・ればの理由を可能な限りなくす」ことである。 

しかしながら、懸命な取組みにも、楽しさがなければ疲れてしまう。楽しさを持つことも自己管理の重要ポイントである。

4)達成への楽しみをつくる
 
よく苦労を乗り越えたと言う。しかし、これは結果論である。多分にその渦中にいるときは、ただ目の前に出くわす厳しい、辛さ、悲しさ、苦しさへの対応そのものだ。これを乗り越える気概や創意工夫の実践が想いの実現ヘの近づきであるだからこそ、そこにはワクワクする楽しみを持つことが良い。

小生主宰の話力向上教室の今年の学びの心として「我慢」と掲げた受講者がいた。なぜかと問うと、
「たとえ面倒なことがあっても、我慢してでもクリアすることができれば楽しい、嬉しいことにたどり着く、そう思い描いて取り組むうえでの心の持ちようです」
と笑顔で解説した。

65歳の女性で昨年ゴルフを本格的に取り組み、マイクラブを揃えて、コースデビューを果たしたまさにポジテイブ思考の持ち主である。誰しも新たな想いに取り組めば順風満帆にすべてが行くわけではない。時には壁にぶつかる、躓くこともある。

重量挙げ五輪金メダリストの三宅義信氏から「苦労は楽しいです。それは目標に向けて一歩進む事であり、苦労が実れば目標達成に一歩近づくことなのです」とお聞きした。苦あれば楽ありとの言葉もあり、辛さの漢字の上部に一本線を入れると幸せも文字になる。辛さに逃げることなく一工夫の施しを加える実践を楽しむ事が良い。三宅氏の説きはこの事へのエールでもあろう。
 
視点を変えてみれば、苦労は自己成長も楽しめる。というのはベテラン社員研修で確認するキャリアの凄みの議論では、「いろいろの苦労体験があったからです」と行きつく。それは体得された暗黙知であり、現象を表面で捉えることでなく、なぜこの状態の要因の推察、さらにどう変化していくかを読み取る予知能力は、難解な課題をクリアしてきた賜だ。

この先を読むパワーは、事故の未然防止の最大パワーとして生きている。この凄みはAIの素となり、ロボット、自動、無人とのハイテクを編み出していることは周知の通りである。

「苦は買ってでもしてみよ」こんな言葉が飛び交っていた時代があったからこそ、現在のハイテクが生み出せるともいえる。苦は生涯能力を体に宿す自己成長の種なりといえそうだ。
 
仏教詩人・板村真民さんの言葉に「念ずれば花開く」との言葉がある。難しいことだけどもやろうじゃないか、と新たな苦労をつくり、実際にやる努力を続けていれば必ず事は成る。達成感の喜びがそこに待っている。

”もうできないだろ”と辛さからさじを投げたら、実にもったいない。ワクワクと楽しく、楽しみをづくりを重ねることが良い。何なら、人の力を借りることを楽しむことも成すと良い。

5)セルフリーダーシップの発揮を楽しむ
 
自己マネジメントは、決めたことをどのようにやりくりし達成するかである。そこにはセルフリーダーシップの発揮も楽しむということだ。それは、自身でマインドを鼓舞させる働きかけや、人の力を借りる働きかけも必要だからである。

その発揮は企業組織の現実の活躍ぶりと異なりはあるものの、自らの想いを、公開し、関わるたて(上下)よこ(同僚)ナナメ(外部・専門者)の協力を得て成し遂げることは同様である。従って、

① 自身への働きかけ
「あなたならできると自己を認めてマインドを鼓舞し、時には、戒めさらには新たな学びへとの誘いや課題解決へと引っ張り役の施し。

② 人の力を借りる働き掛け
自己力での限界があれば人の力を借りる働きかけをなせばよい。すなわち、PDCAサイクルをスパイラルに回すうえで、Cの検討結果ヘの対応時、良ければ更にもっとやってみようと楽しみ、悪ければ、じゃどうするかの対応への姿勢が肝心。じゃどうするかと本気で立ち向かえばそれは他の力を活用する働きかけによる相談、意見を聞く、手を借りて乗り切ればよい。

よく、「挫折しかけましたが、なんとか思いなおして、人の知恵も借りて継続した結果です 」との報告があるがそのものである。「おかげさまで」」との感謝の言葉をかけ合うことも関わる人との共に寄り添うパートナシップの素晴らしさである。
 
だからこそ、他の人の力を生かす、リーダーシップの実践がそこにある。実現結果の質、スピードは人の力の活用により決まる。

6)地道にゆっくりと、この心持ちが良い
 
「ゆっくりいくものは無事に行く  無事に行く者は遠くまで行く」との言葉がある。

慌てて動けば事故を起こす確率は高い、そうすると目的地まで行けなくなることもある。逆にゆっくり行けば事故を起こさず、たとえ起こすことがあっても最小限に食い止め、最終的にたどり着くと理解できる。 

冒頭の掲げた言葉にも「歩み」は早くなくても一歩一歩確実に、「丁寧」があった。あのときにもっとゆっくりすれば、あのときに今一度点検すれば良かった、この悔いはなくしたいものである。

ゆっくりの実践は、丁寧、確実、確認、末を乱すな、後始末の大切さを意味する。この無精がトラブル発生の要因になる。

ゆっくり、そこには余裕を持った間合いを生かすことも良い。今年は丑年、ゆっくり、ゆっくりとと逞しく歩む特徴にあやかり、一歩一歩近づく楽しみを味わいながら目的(想いの)への到達も楽しい。

新たな想いは、心豊かな人生づくりにとっては不可欠である。それは、その時代、その年に自身の足跡を歴史として残せるからである。

足跡は個人に止まらず、活躍する組織、企業の発展の軌跡として生き続ける財産となる。今年はコロナ禍でのスタートだからこそ、かつてない年としての足跡が残せる楽しみである。
 
自由に想いを掲げ、紆余曲折の実践過程を累積して、今年を楽しく語る場面を描き記した6条件がお役に立てば幸いである。

 

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澤田 良雄

東京生まれ。中央大学卒業。現セイコーインスツルメンツ㈱に勤務。製造ライン、社員教育、総務マネージャーを歴任後、㈱井浦コミュニケーションセンター専 務理事を経て、ビジネス教育の㈱HOPEを設立。現在、企業教育コンサルタントとして、各企業、官公庁、行政、団体で社員研修講師として広く活躍。指導 キャリアを活かした独自開発の実践的、具体的、効果重視の講義、トレーニング法にて、情熱あふれる温かみと厳しさを兼ね備えた指導力が定評。
http://www.hope-s.com/