[ 特集カテゴリー ] ,

【組織を動かすポイント 全4回】(1)「組織づくりに必要な原則を理解せよ」(小池浩二)

小池浩二氏の [継栄の軸足] シリーズ (59)
【組織を動かすポイント 全4回】
第1回目「組織づくりに必要な原則を理解せよ」

小池浩二氏(マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)

中小企業の経営者は、従業員が20人前後になると「組織図」をつくりたがる。この背景には、会社内の役割を明確にしたいという強い思いがある。

しかし実態は、役職の乱発や職務権限が不明確など、さまざまな問題が発生する場合が多い。

●なぜ古参幹部が生まれるか
 
組織を維持・成長・発展させるためには、まず「方針」が必要だ。方針が存在するから組織ができるのであり、逆に方針を明確にしなければ、基本的には組織はできないという認識を持つことである。そして組織は、この方針を達成するための「役割」によってつくられる。 

中小企業では、役職を与えられた人が定年するまで、その役職が永久欠番制になっているケースがよく見られる。これは、役割は二の次で、まず役職ありきという状態だ。 

会社が成長し始めると、このような役職だけの古参幹部の存在がどうしても問題になる。古参幹部の弊害は、会社の成長・発展に対応できない、対応する努力をしないところから生まれる。「この部門では自分が仕事においても人間性においても一番だ」と勝手に思い込み、だから「俺の言うことを聞け」となる。

ある会社の工場長もそうである。この工場長は組織のなかでの年齢は最も上だが、ナンバー2のほうが、現場での仕切り、対外交渉、人材育成の面で実力的に優れていた。社長も工場長を任命するときに迷ったらしいが、年功序列で現工場長を任命した。

工場でのミーティングで、社長がナンバー2と仕事の段取りの話をすること自体が工場長には気に食わないらしく、社長が帰った後で社員に八つ当たりをする。ナンバー2に焼きもちを焼いているのである。「自分が工場長なのだから」という意識が強いのだ。

しかし会社からすると、実質的に工場長の役割を果たす人に仕事を委ねるのは当然である。本人は工場長の呪縛にとりつかれ、このことが理解できない。こういったケースでは工場長の役割を外すと本人も楽になり、うまく回り出すことがある。

日本語標記の役職名には「重み」を感じる。重いから、変な役職意識を植え付け、古参幹部が生まれやすくなる。

私が勧めるのは日本語役職名ではなく、マネージャー、リーダーなど横文字の役職名にすることである。こちらのほうが受ける印象がソフトで、幹部本人にも役割を重視させやすい。

不思議なことに、中小企業は朝令暮改が得意なはずなのに、こと組織の改編に関しては後手である。役職は「安住の地」ではなく、不適格と判断された場合は期の途中でも降格・配置転換があり得ると認識させるべきだ。降格ができない(させられない)背景には、明確なルールがない、ルールが公開されていない、あるいは社長が情に厚すぎるという理由がある。

●組織は「必要機能」から考える

このように先に「人ありき」で組織をつくると、役職の永久欠番制や古参幹部の弊害を生んでしまうため、組織が機能しにくい。だから、人ではなく役割、つまり「機能ありき」で考えることだ。

中小企業の基本機能は全体調整機能(社長)、販売機能、生産機能、財務機能である。これが基本形で、最もシンプルかつ最低限必要な機能を集めた単純な組織形態である。

指揮官(社長)がいて、戦車部隊(営業機能)と武器づくり部隊(製造機能)があり、兵糧米づくり部隊(財務機能)があれば戦闘はできる。

しかし会社の規模が拡大すれば、それにともなって必要な機能を細分化・専任化させることが求められる。

例えば、営業部門で考えよう。30人未満会社の営業部門の機能としては、年度営業計画の策定、営業部門の運営管理、営業実績のチェック・コントロール・評価、販売促進、クレーム処理体制、仕入が主体である。

これが規模の拡大とともに細分化され、営業戦略策定、物流戦略と管理、営業情報の管理と活用、営業組織の強化・育成と活性化、市場調査、商品企画・開発、得意先管理、回収管理、在庫管理、倉庫管理などの機能が必要になる。

自社の組織機能と照らし合わせ、規模が成長にするにつれ、どの機能を細分化・専任化しなければならないかを理解してほしい。

会社全体の組織においても、規模が拡大すれば、機能を細分化・専任化していかなければならない。従業員が50~100人に拡大すれば、基本機能から役員会(経営部門)、物流機能、仕入調達機能、人事機能が必要となる。

この状態で戦線が拡大すれば、各戦線での指揮官が必要になるし、戦車部隊(営業機能)が物流機能を兼任していると効率が悪くなり戦えなくなるから、歩兵部隊(物流機能)が専任で必要になる。そして100人以上になれば、加えて本部機能が必要になってくるのだ。

さらに前線の戦いが拡大すると、全体調整と細部の調整機能を入れないとバラバラになる。部隊は動くがチグハグさが目立ち、思うように効果が上がらない。

そこで必要になるのが、全体調整機能の経営本部機能、拡大した戦線を調整する各部署の本部機能である。具体的には営業本部機能、生産本部機能、管理本部機能であり、必要性に応じてこれらの機能をとり入れていく。 

そして200人以上を超える企業になれば、マーケティング機能、商品開発機能、情報システム機能、経営企画機能が必要になる。戦いに勝つための新兵器づくりを武器づくり部隊(製造機能)が兼任するには限界があるからだ。やはり専任の研究チーム(商品開発機能)が必要になるし、特殊部隊(経営企画室)、偵察部隊(マーケティング機能)を設けないと、拡大した戦線で戦うのは無理である。

このように、規模の拡大につれて組織を動かすために必要な機能が増えてくる。この機能を明らかにしたうえで、各機能を束ねる役職を決めなければ、組織づくりはうまくいかない。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
筆者 小池浩二氏が【中小企業に必要な経営の技術】の概論を動画で説明しています。

こちらからどうぞ → http://bit.ly/2NFrWHm

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ////////////////////////////////////

■ 小池浩二氏 (マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)
実践に基づいた「中小企業の基礎打ち屋」として、中小企業成長戦略のシステムづくりを研究。これまで500社以上の中小企業経営に関わり、経営診断、経営顧問、研修等を実践。多くの経営者から「中小企業の特性と痛みをよく理解した内容」と熱烈な支持を得ている。
  http://www.m-a-n.biz/ 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~