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「国際通貨基金の経済見通しについて」(真田幸光)

真田幸光の経済、東アジア情報
「国際通貨基金の経済見通しについて」

真田幸光氏(愛知淑徳大学教授)

世界的にも信用力の高い国際機関である国際通貨基金(IMF)は4月6日に公表した世界経済見通しの中で、
「2021年の世界経済の成長率はプラス6.0%となる」
と予測し、今年1月時点から0.5ポイント上方修正しています。

2020年は新型コロナウイルス大流行によって、マイナス3.3%とマイナス成長となったとも推定しており、そこから、大きく回復するとの見通しとなっています。

更にまた、来年の経済成長率も、本年1月の見通しであるプラス4.2%から0.2ポイント上方修正し、プラス4.4%としました。
 
IMFは昨年の経済成長率を上方修正したことについて、新型コロナの流行による国境の封鎖が緩和されて経済が新しい業務スタイルに適応したことにより、多くの地域で下半期の成長率が予想より上昇したことを反映したと説明しました。

また、今年と来年の経済成長率がこれまでの見通しより改善するとの予測は、米国など経済大国が追加財政支援を行うことと、ワクチンの接種が進むとの、
「期待」
によるものであるとコメントしています。
 
こうした中、日本の経済成長率見通しは今年がプラス3.3%、来年がプラス2.5%で、1月の予測からそれぞれ0.2ポイント、0.1ポイント上方修正されています。
 
IMFは毎年4月と10月に各国の経済成長率予測を発表し、1月と7月には改定報告書で主要国を中心に成長率見通しを調整していますが、また、7月と10月の発表データもフォローしたいと思います。

尚、米国の中央銀行に当たる連邦準備制度(FRB)が経済再生に注力する今の基本金融政策姿勢を暫らく維持するという意志を改めて強く示しています。

即ち、FRBは4月7日に公開した先月の連邦公開市場委員会(FOMC)議事録によると、FOMC参加者の殆どが、
「FRBは今の最大の目標となる雇用と物価安定という目標が、相当程度進展を見せるまでにはまだまだ時間がかかるであろう」
という点で意見の一致を見、現行の金融政策の維持について合意したと見られています。

そして、米国のワクチン接種が予想よりも早く進行し、長期金利の上昇、インフレ兆候も少しずつ見られる中で、FRBがテーパリング(Tapering=中央銀行が国債などの金用資産を買い入れる量的緩和を段階的にやめ、終了に向かわせる手法)に向かうのではないか、基準金利の早期引き上げを断行するかもしれないという市場の懸念を払拭することが、「安定」に向けて、重要であるとFRBが判断していると見られています。 

こうしたことから、米国を中心とした世界の主要な金融市場は今後も安定的に推移するのではないかと見られています。
こうした一方で、同じく米国・FRBのパウエル議長は、自動化が雇用市場の回復の遅れの原因である可能性があると考えているとコメントしています。

即ち、パウエル議長は、新型コロナウイルスのワクチン接種プログラムの進展により米国経済が改善した後でも、数百万人が雇用機会を得るのには労する可能性があると指摘しています。

こうした見方をFRBがしていることも付記しておきたいと思います。

 

真田幸光————————————————————
清話会1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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