講演録「コロナ禍の経済、今後の見通し」(加藤 出)

~日銀の金融政策と、今後の日本経済 [ 特集カテゴリー ] ,

講演録「コロナ禍の経済、今後の見通し」(加藤 出)

■講 師 加藤 出氏(東短リサーチ(株)代表取締役社長チーフエコノミスト)

1988年4月東京短資(株)入社。金融先物、CD、CP、コールなど短期市場のブローカーとエコノミストを兼務後、2013年2月より現職。マネーマーケットの現場の視点から日銀、FRB、ECB、BOE、中国人民銀行などの金融政策を分析している。2007~08年度東京理科大学経営学部非常勤講師。09年度中央大学商学部兼任講師。20年度成蹊大学経済学部非常勤講師。 著書に「日銀は死んだのか?」(2001年)、「メジャーリーグとだだちゃ豆で読み解く金融市場」(2004年)、「バーナンキのFRB」(共著、2006年)「日銀『出口』なし!」(2014年)、「図解とQ&Aですっきりわかるマイナス金利」(監修、2016年)など。主な連載コラムに週刊ダイヤモンド、日本経済新聞電子版、日経ヴェリタス、毎日新聞など。テレビ東京「モーニング・サテライト」、BS・TBS「サンデーニュース・Bizスクエア」、BSジャパン「日経プラス10」、NHK総合「視点論点」などにコメンテーターとして出演。

 

■コロナ禍の世界経済を

 外観してみると 

日本は、新型コロナの感染者数は欧米諸国に比べて結果的に少ないとはいえ、経済への打撃はかなり強いものがあります。主な国の実質GDPの水準をみると、2019年、コロナ前を100として、その後の推移はIMF(国際通貨基金)の予想推計では、日本は去年、イタリア、イギリスほどではないとはいえ、結構、大きな落込みでした。

このIMFの先行きの予想で気になるのは、4月に発表された2026年までの見通しで、台湾、エストニア、ノルウェー、韓国など、全般的にIT系の企業が活発なところが随分伸びてきますが、日本は低調だということです。世界をリードしていくようなIT企業がいまひとつ少ないということや人口が減ってきている、特に生産年齢人口は95年から減り続け、今後も顕著に減っていくので、それも折り込まれているということです。目先のウィズコロナ、アフターコロナの中で日本経済をどうやって運営していくかという問題と、中長期的に見てどうしらいいかという議論も必要ということだと思います。

アメリカの1人当たり実質可処分所得は、コロナ禍前の2020年4月の月当たりで4万6000ドル弱(500万円前後)だったものが、コロナで逆に増えてしまい、3月に限っていえば5万8000ドルを超えています。3月は、前年同月比で29%も増えています。日本人であれば、一部は使うけども貯蓄しておこうという人も多いかと思いますが、アメリカ人はこういうときバンバン使うので、様々なところで商品の供給が追いつかないという事態を生み出しており、一方でヨーロッパや日本の自動車など輸出産業の中には、その恩恵を大変、受けているところもあり、アメリカが今、世界経済をかなり引っ張っています。

ただ、こういう実質可処分所得の激増はいつまでも続くものではありません。失業給付金は9月までですし、アメリカでも財政赤字が膨らみ過ぎると、国債発行額も急激に増えていますので、まだしばらくは需要が強いものの、今ほどの爆発的な瞬発力はいつまでも続かないということだと思います。

経済の状況全体を見た場合、金融緩和で、コロナ対応で金利を世界中、押し下げていますので、その影響として、例えば、住宅価格がスウェーデン、ニュージーランド、オーストラリア等々随分と上がっています。一方で日本は、2013年ぐらいから上がってはいますが、95年を起点にするとまだ水面下にあります。日本のように地方に行けば空き家がたくさんあるという状態ですと、老後に家を売却して資金にするということが成り立たない地域が多い。となると、それは現在の消費を慎重化させる面もあるわけです。また、住宅価格が上がらないと家賃も上がりませんから、消費者物価指数、インフレ率、日銀は2%というインフレ目標を掲げていますが、家賃が上がらないというのは、けっこう大きな影響があったりします。

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講演録「発達障害の傾向のある人を雇用したら」(小島 健一)

-トラブルやいざこざをどう未然に防ぎ、かつ収めるべきか [ 特集カテゴリー ] ,

講演録「発達障害の傾向のある人を雇用したら」(小島 健一)

小島健一(鳥飼総合法律事務所・パートナー弁護士)

人事労務を基軸に、問題社員処遇から組織・風土改革、産業保健、障害者雇用まで、紛争予防・迅速解決の助言・支援を提供。メンタルヘルス不調やハラスメントが関わる深刻な案件も、早い段階から依頼者に寄り添い、解決まで支援。「さんぽ会」幹事、日本産業保健法学会(2020年11月発足)理事。

 

発達障害という言葉は大分知られるようになってきましたが、一番知られてないのが実は中高年の男性です。逆に小さいお子様をお持ちのお母様はかなりご存じではないかと思います。今の小中学校では、発達障害の特性が見られる子どもを早い段階から支援しようという文科省の取組みがここ10年ぐらいで進んできましたから、小さなお子さんをお持ちの親御さんは判るのです。しかし50代のわれわれが育った時代、発達障害という言葉には全く出会いませんでした。ただ自閉症は旧来から知られており、実はわれわれの世代にもそういった自閉症の方が患っているものと共通な要素があることが分かったのは、比較的最近です。アメリカなどでは、30~40年前から自閉症についての研究が行われており、我が国に入ってきたのは20、30年遅れといったところでしょうか。

私も長年、人事労務の仕事に携わってきましたが、どうしてこうなってしまうのだろう、この人はなぜこんなことをやっているんだろう、そんな疑問を抱くことがありました。しかし発達障害を知ることで、今まで埋まらなかったピースがはまったような、そんな実感も得られましたので、人を雇い仕事をお願いするという局面で、問題社員やうまくいかない社員、さらには自分自身というものをよく知るためにも、発達障害とはどんなことなのか、少しでもお伝えできればと思います。

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【特別寄稿】「ジョブ型」管理職で組織の活性化を!(蒔田 照幸)
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【特別寄稿】「ジョブ型」管理職で組織の活性化を!(蒔田 照幸)

蒔田照幸 (株)賃金人事コンサルティングオフィス代表取締役

三重県出身。人事コンサル会社役員等を経て2015年より現職。東京商工会議所人事講座担当講師、船井総合研究所客員コンサルタント等を歴任。ミルボン、ユニクロ、九州共立大学、(医)金森和心会病院など人事コンサル歴35年、指導実績は約700社。人事評価分野では2018年に大学と提携しAI投影法を開発。

 

 日本型雇用システムが見直されようとしている中で、最も多く議論の対象となっているのがジョブ型雇用である。既に日立製作所、KDDI、富士通などで採用されている。このジョブ型雇用は、当初Dx時代のデジタル人材雇用に限られていたが、徐々に対象範囲が拡大し、一部の大手企業では管理職さらには一般社員にまで適用と報道されている。デジタル人材雇用は、今後の事業展開の戦略次第では重要な課題であるが、ここでは触れない。また一般社員への適用は全くの的外れだと指摘しておこう。一般社員には能力主義の定期昇給制度の適用が正解なのである。

 ジョブ型管理職報酬と聞いて思い出すのは、殆どの企業で失敗に終わってしまったが、20年以上も前の管理職年俸制である。両者が酷似しているのだ。失敗に終わった主な理由は、⑴管理職年俸制導入の目的が曖昧であったこと、⑵部課長の目標不在で評価不能だったこと、⑶人件費管理ではなく低水準での固定化であったこと、などである。

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講演録「“コロナ後”の日本」(馬場 伸幸)

-令和3年衆議院選挙・維新の戦い [ 特集カテゴリー ] ,

講演録「“コロナ後”の日本」(馬場 伸幸)

馬場 伸幸氏(衆議院議員、日本維新の会幹事長)

 1965年大阪府堺市生まれ。高卒後(株)オージーロイヤル入社。86年衆議院議員秘書(中山太郎議員)。93年堺市議会議員補欠選挙初当選。2006年堺市議会副議長、11年堺市議会76代議長(市議6期)、12年衆議院議員選挙初当選。16年日本維新の会幹事長就任。17年衆議院議員選挙3期目の当選。

 

■「地方から日本を変える」――

日本維新の会の矜持 

 日本維新の会は、いつも皆様のご期待に添えてこられたわけではないと思います。政党自体にも紆余曲折があり、二度にわたる離合集散がありました。今の日本維新の会になって約5年、幹事長の仕事を拝命し、この間、組織をきちっと固めてさらに大きくしていくという思いを強くしながら、活動をして参りました。

 過去2回、大阪都構想を掲げ、「地方から日本を変える」ということで、やって参りました。会社で言えば、大阪市の中に大阪本社と大阪本店があり、経営者が2人いて、それぞれの経営理念で、それぞれの商売を好きなようにやっている、というのがかつての大阪でした。指揮官を一つにして、皆様方からお預かりしている税金(財布)も一つにさせていただいて、より税金が有効に、一円でもムダのないように使っていきたいというのがわれわれの考え方でありました。

 大阪都構想は今のところ成就はしておりませんけれども、基本的な考え方はこれからも変わりません。チャンスがあれば、大阪都構想か違う形かわかりませんけれども、行政の仕組みを変えていくという考え方はいささかも揺らぎはございません。

 大阪都構想が昨年、住民投票で否決されたときには、メディアでいっせいに「日本維新の会は終わり、大阪維新の会も終わり」と盛んに書き立てられました。われわれもそういうことが言われないように、色々な勉強をして参りました。

 皆様方の目下の一番の関心事はコロナだと思われます。われわれは、昨年コロナの流行の兆しが見えたときに、政党としては初めて国会で質問をさせていただきました。昨年1月の衆議院本会議、代表質問で私が「コロナというものが中国で流行っているらしい、春節になると多くの方が中国から来日をされる、ということに対して水際対策をどうしていきますか」と質問をしました。あのときは安倍総理でしたが、まだ他人事かなという感じでした。予算委員会でも私のほうからコロナ対策の質問をしました。PCR検査の際に、プライマーという試薬がないために検査ができないという情報をキャッチしておりましたので、PCR検査の段取りを早くしたほうがいいですよ、ということを申し上げましたが、当時の加藤厚労大臣もあまり危機感の感じられないような答弁でした。

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第4回「後継者候補としての準備期間」(河本和真) 
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第4回「後継者候補としての準備期間」(河本和真)  [ 第4回 ]

2020年11月から始まったネクストプレナー大学。ネクストプレナーとは、後継者不在企業を事業承継し、発展させる次代の担い手であり、温故知新の精神と、企業経営に求められる知識・経験・熱意・人間性を有するビジネスパーソンのことを指します。

2025年には127万社が後継者不在を理由に廃業し、650万人の雇用と、22兆円のGDPが消失すると言われている「大廃業時代」を迎える日本にとって、当社が考える解決策がこの「ネクストプレナー」です。

2020年11月に0期として始まったネクストプレナー大学ですが、無事に2021年6月から1期をスタートすることができました。

「大廃業時代」に対する危機感を持ち、自身が経営者となって中小企業を、ひいては日本を発展させるぞ! という心意気の方々が40名集まりました。彼らが中小企業を承継する一人前の「ネクストプレナー」になるまで、どのようなカリキュラムで学ぶのか、今回はご紹介させていただきます。

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第3回『在日韓国人の定義』~活躍の幅、広がる?(申 燕澔)
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第3回『在日韓国人の定義』~活躍の幅、広がる?(申 燕澔) [ 第3回 ]

在日韓国・朝鮮人(英: Koreans in Japan)とは、日本に在留する韓国・朝鮮籍の外国人、または国外居住含め、韓国籍・朝鮮籍の特別永住者を指す。

  • 歴史と経緯

1910年韓国合併により、大韓帝国の人が日本国籍に変わって、多くの韓国人が就職や留学のために日本に移住した。戦後、200万人の韓国人が日本に残っていたが、GHQの方針と大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国の政府樹立により国籍を韓国あるいは朝鮮籍を選択するようになった。帰国のための費用を日本政府が出してくれて、140万人が韓国に帰った。韓国国内の不安定な状況から残留した人も60万人いて、その人たちがいわゆる在日1世代を作った。

1965年の日韓国交正常化前から住んでいた在日韓国人であるオールドカマー(old comer)は特別永住者であり、国交正常化の後に移住したニューカマー(new comer)は一般永住者が多い。

特別永住者は日本植民地時代の前後に移住した韓国南部出身者が多く、これらは韓国国籍者と正式国籍ではない朝鮮籍の人に分けられる。

 

  • 在日の人口は減少しつつある現状

日本の法務省傘下の入国管理局の統計によると、2019年末の時点の登録在日韓国人の数は46万3154人で、全在日外国人のうち、在日中国人(在日台湾人を除く)に続いて2回目の16%を占めている。

ところが、上記のように日本中の在日韓国人の人口を調べると、留学生を含む在日外国人の部類に入っていることが分かる。一般に、「在日」という言葉の響きは特別永住者のみを指す。

下記のグラフの通り、特別永住者は年々減っている。原因としては、日本社会で暮らすためには国籍を取得した方が生きやすいからだ。日本国籍がないと、選挙権や公務員になることなどが制限されてしまう。しかし、帰化したとしても帰化した痕跡が残るので完璧に日本人にはなれないというのが現実だ。

日韓の国民は在日について、教育を受ける機会がなく在日への認識が非常に乏しい。

現在、世代の中心も3世4世に移り、5世を迎えている。日本語しか分からない人が増え続けている。それは朝鮮や韓国系の学校ではなく日本の教育で育った人が多く、家庭内でも韓国語を日常的に使われていない家庭も多い。もう純粋な韓国人同士の在日は少なく、日本系ハーフ、クォーター等々様々な家系の在日が存在している。在日でもほんの少しの韓国系が混ざっていれば、在日のレッテルが張られ、 在日韓国人であることを隠したがる人が多い。日本国籍を取れば「韓国系日本人」である。

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SDGsの基本とビジネスへの関わり⑥ (菊原 政信) [ 第7回 ]

SDGsグローバルWAYマネジメント -未来志向のSDGs経営に向けて-

今後のSDGs経営の第一歩とWAYマネジメントへの進化として考えられるのが、「S D Gsマインドの醸成」です。つまりCSRを基盤として、SDGs & ESG & CSVの領域をさらに拡大していき、やがてS D Gsマネジメントへ進化させて行きます。この流れの中では、S D Gs社内Projectの発足、C S Vビジネスモデルの立案、E S G評価・E S G投資の実施、統合報告書作成などと密接に結びついています。

 従来自社独自、いわば我流で作られた経営理念をSDGsグローバルW A Yへと刷新し、それに基づきビジョン、中期・長期経営計画、行動指針と落としこんでいきます。

すなわちS D GsグローバルW A Yとは、W A Yの定義である「企業の存在意義を明示するために、どのような企業活動を通じて実現するのかという方針を、内部や外部に発信していく手段の一つとして、『経営理念・ビジョン・行動指針』を明文化し、それぞれのエッセンスを相互に関連づけたもの」として事例としては、 J & J クレイド(我が信条)などです。S D Gsを連携させ、それはS D Gs経営理念(ミッション、バリューなどが含まれることがある)とS D Gsビジョンを社長や役員などの企業リーダーがつくり、組織文化として全社員に向けたS D Gs行動指針を全社員に向けたS D Gs行動指針をOff-JT(浸透研修)やOJT(職場内訓練)などによって、企業グループ全体の組織文化として醸成されたうえで、全社員が通常の業務を通じて行う際の言動の規範(ルール)としていきます。

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