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「出会いが生きる人脈の引き出し」(澤田良雄)

髭講師の研修日誌(81)

「出会いが生きる人脈の引き出し」

澤田良雄氏((株)HOPE代表取締役)

◆出会いを創る支援の催し
 
現在は業務のスピード化と質の高さが求められる。その対応には、自分と異なった特性を有する方との交流が生きる。いわば縁を生かしての幅広い人脈を築く時であるから、そのためには意図的に社内外に機会を創ると良い。
 
先般 会議所のお役処の部会活動として「行政と会議所が語り合う、当市が見据えるもの」と称した催しを実施した。語り手は、市経済振興部長と会議所会頭であり、地元の経済発展を推進する両巨頭である。

当市は、人口増加率の高さでは全国的に評価され、市政推進でもマーケテイング課の設置など経営力も話題で、TVからの取材も多い。加えて部長は歴代市長秘書を務めてきた信望の厚い参謀である。一方、会頭は全国で三人のみの女性会頭の一人であり、当然注目され、活動の新たな影響期待も高い人である。しかし、懸念事項は、この時期の参加者状況、だが、予定人員を上回り、お二人の講演×対談に満足いただいた。

さて、この催しの最大の目的は、参加者同士の交流である。それは、部会会員の職業は、士業、音楽家、各種教室、デザイナー、IT関連、健康関連治療、医院等々個人での活躍が多い。また、起業間もない人、当市への移住間もない人もいる。ならば、存在を示し、ビジネスパートナーの発掘をするよい機会ともなろう。
 
従って、講演後、会員音楽家の演奏を演出し、参加者の交流時間をたっぷり取った。さて、どうなるか…。懸念すること無し…。出会いを互いに創り合い、成功裡に進み、「このような機会を用意していただきありがとうございました」との感謝の言葉がけに安堵の実感であった。

◆選ばれる、相手の心に灯火をともせる人とは
 
しかしながら、交流会でも、自ら接していく人、受け身の人、どうしとうかと迷いの人もいることも事実。改めて出会いの機会を生かした確実な縁づくりにつなげる実践策を確認してみよう。
 
まずは、ひと言の声がけは「こんにちは。私は〇〇と申します。どうぞよろしくお願いいたします」。この一歩の踏み出しで出会いを作り、親近間を深める会話につなげる。この際、声がけに選ばれる人、そして受け入れられる人は、人柄の好感要素が相手の心に「感じのいい人だ」との灯火をともしている。それは、既に、面と向かった場面だけで無く、会場に入場前、会場内での言動すべてが見られての第一印象でもあることも忘れてはいけない。

この第一印象について、メラビアンの法則では、第一印象は最初の出会いの3~5秒で決定してしまうと説いている。さらに、ハロー効果といって、最初の印象によって見方の傾向ができ、それ以後も第一印象を引きずってしまう。従って、面と向かっての繕いによるいい人ぶっても逆に、はてなと猜疑心を生むこともある。ならば、第一印象の良き人柄とは、どんな要素であろうか、それは、次の5点が自然に醸し出される人間味であろう。

①明るい、微笑み、マナーをわきまえ、打てば響く心と言動で、接することのできている人
②人が好きで、関わる人に喜びをもたらすことを自らの喜びとする人
③自身の持っている魅力で、人のお役に立てることを楽しみにしている人
④いざという場面でも、臨機応変に対応できる人
⑤感謝、謙虚、素直、思いやりを人柄として、自然にかもし出せる人
 
従って、出会いのひと言でもお会いできた事への感謝の心で挨拶することであり、この出会いの点が、会話の交わし合いとなって線となり、縁づくりと発展していくのである。

◆出会いの工夫、それは興味を惹きつける名刺の工夫もよい
 
そこで一工夫。それは、出会い時には、名のりの挨拶から次にどうつなげるかである。その工夫は、名刺を活用して相手からの問いかけを引き出すと良い。例えば、小生の名刺には、似顔絵を入れているので相手はすかさず、似顔絵と実物とを見比べて、「似ていますね」とのひと言がかけられ、相手との距離がグッと縮まる。そして、記された内容への尋ねと紹介で話がはずむ。頂いた工夫例としては、本屋さんは本の形の名刺、木材取り扱いの人は、木目を色付けした下地に名前を刷り込んでおり、サッカー評論家S氏は、丸いボールの押し型をつけてある。ペンキ屋さんは左はしに7色のきれいな色を印刷してイメージアップを図り、ヒノキ材の小物製作者は、ヒノキの香りのする用紙を使用してある。
 
このような特色ある名刺は、必ず興味を示し、記された内容以外にも、このような工夫をする人はどんな人なのだろう、と人物的特色に興味を持った会話に弾むことも多い。そして、「今度、ゆっくりと話したいですね…」と、ビジネスパートナーとして心づもりを持っていただける。ただし、ここでの心得は、ビジネスの紹介は相手の問いかけに少しだけにとどめることにある。とうとうとしゃべくる輩では、決して好印象ある人物として親近感は持たれない。交流会に類した場は、多くの人との出会いを楽しみたい場なのである。

◆ご縁を頂いた人への成すべきこと
 
出会いから「縁」をつくり生かす、周知の通り「小才は縁に出会いて、縁に気づかず、中才は縁に気づいて縁を生かさず、大才は袖すり合った縁をも生かす」という言葉もある。仕事でも、私事でも、人は出会い、関わり合い、支え合いの時がある。肝腎なことは、できた縁を、生涯の相互支援のパートナー的お付き合いとして楽しめるかが大切である。
 
楽しむとは、どれだけ自身からの施し(専門的、人間的)が出来るかであり、お役立ての施しは、「御世話になりました」「おかげ様で」との感謝労いの言葉が、返礼されることも多い。小生にとっても、出講先でのご担当者、受講者、各種団体でのお役を通じた仲間とのご縁によるお引き立ての「おかげ様で」との交わし合いが財産である。
 
小生の知友に縁づくりの達人と称される経営者の縁づくりを全国的に推進しているT理事長がいる。著書に『一流が大切にしている人づきあいの流儀』があるが、T氏は宝くじで当たった100万円を資金として人脈づくりの組織を立ち上げて55余年。日本一の人脈を築き上げた人と評される人である。たとえ、実績、地位、経験がなくても成功すると説く人間交際術の第一人者である。

小生との縁続きは、30年。氏の開催セミナー講師として招かれ、時には発行図書の共著もさせていただいた。T氏の実践の極意の提案事項の一部を著書から紹介してみよう。

○相手に喜んで貰うことを施すこと、喜んで貰うためには、自分が最もして欲しいことを相手にすること
○とにかく名前を覚えて貰う、それは何回も工夫した名刺で印象づける
○誕生日(本人・ご家族)祝いはいつまでも喜ばれる
○お子様が欲しいものを、親の友人としてプレゼントする
○お迎えは、列車出口で迎え、お見送りは列車乗車口まで、重ねるお見送りが決め手
○本業以外に得意な分野を持つ(スポーツ、芸、専門学、研究…)
○塾、学習会、諸団体などには参加継続する
○お役は引き受ける。その施しが生きる
○自筆ハガキを必ず書くこと 
等々がある。

まさに凄さは継続しての実践力だが、読者各位の実践していることも多いことであろう。

さて、小生の実践は、

①お会いできた感謝のひと言通信。40年継続の実践である。具体的には、T氏同様すぐお礼の手書き葉書を書く、メールを送信する、その対象は、名刺交換した方、小生が呼びかけたセミナー受講者、セミナー参加に派遣してくれた社長等々であり、直ぐ書くことを心得としている。記するキーワードは、お会いできた喜び、お世話になった感謝、そして、今後の相互支援の想い、願いとしている。葉書は名刺同様、似顔絵入りである。

②小生が毎月筆している髭講師の研修日誌と称する拙文の送信。既に80回となった。読後の返信の感想メールが小生を育てる

③購読月刊誌、新聞、図書、ネットでの情報をお役立てできる人に随時ご提供する

④会組織仲間には、活動で目についた活動の素晴らしさ、スピーチの良さなど、感想と今後への期待を直言、メールでプレゼントする

⑤ご無沙汰続きでも年賀状には必ず3行程度の自筆短文を書くことは怠らない。この実践は「相手から切れた縁は回復できるが、こちらから切ったら回復できない、たとえ細い糸でも繋ぐ」ことを肝に銘じているからである

◆相互支援が楽しく、長きパートナーとなる
 
縁が生かせるとは、こちらの利ばかりを求めての言動は御法度である。それは「相互の支縁を楽しむことであるから、関心を寄せ、お役立てできると察したときには、先手で施しをすることである。時には、小生の抱える課題にご意見、情報を頂くことを依頼することもあるが、すると早速返信いただける。このような交流は実に楽しい。
 
時折、打算的関わりに閉口することがあるが「商機の切れ目が、縁の切れ目」では持論の枠外である。また、多少の高い立場になると、ご縁によるビジネスの種を蒔いてくれた人の恩を忘れたり、上から目線での言動に変身する成り上がり人格では、折角の縁も切られていく。

この点での小生の心得は、「事前よりも、事後に心を傾けよう」この言動である。その本意は、深掘ポンプ専門メーカーO社長が説いてくれた「井戸を掘ってくれた人を忘れるな」の言葉にある。従って、「おかげ様の深謝」の念での時としての、訪問や墓参をさせていただく実践の継続である。

◆いざという時に、頼れる人脈インデックス
 
まさに人脈のインデックスの豊富さは、仕事の質を高め、スピード化ができる。「頑張っています」といっても自能力では限界がある。この時代、独りよがりのがんばりの美化はいかがなことかと説いている。

自身の弱みは人の力を寄せることでカバーができる。それには、人の出会いの機会を得て、「いい人と出会った」「また会ってみたい」「この人と組みたいな」「この人にお願いしたいな」と引き寄せる人物的影響力を高めることにある。

それでは、次の問いかけに対応を願い今回のまとめとする。

1)あなたは、いざという時、協力依頼できる人はどなたでしょうか。
 ①仕事上では、部署内、社内、関連企業、お取引先、家族、親戚、友人はどなたですか
 ②プライベートでは、(対象は、上記の方々の他近隣、学び仲間、社会活動仲間など)

2)逆に、いざとなったときに頼ってくる人は、どなたであろうか。
 *仕事上では *プライベートでは。
  <どれだけかけましたか。>

それでは、
3)一度記し人に、もう一度「本当ですか」と再度自問してみよう。
4)さらに頼れる人と、頼ってくる人が同一人物ですか

<いかがだったでしょうか> 時には、人脈の棚卸しも良きことですね。

この時期、退任、新任の人事の動きが多い。今、出講先のトップが退任されるので謝念のご挨拶に伺っての帰路の新幹線車中である。後任トップとの縁の繋ぎも頂き、縁の連鎖が嬉しい。

拙著『感謝話法の極意』を手渡し、グータッチでバトンタッチを両者と交わす。やはり、対面によるコミュニケーションは、縁を創り、生かし、広め、深める働きがあるとの実感である。

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澤田 良雄

東京生まれ。中央大学卒業。現セイコーインスツルメンツ㈱に勤務。製造ライン、社員教育、総務マネージャーを歴任後、㈱井浦コミュニケーションセンター専 務理事を経て、ビジネス教育の(株)HOPEを設立。現在、企業教育コンサルタントとして、各企業、官公庁、行政、団体で社員研修講師として広く活躍。指導 キャリアを活かした独自開発の実践的、具体的、効果重視の講義、トレーニング法にて、情熱あふれる温かみと厳しさを兼ね備えた指導力が定評。
http://www.hope-s.com/