~新型コロナ収束は近いか!? [ 特集カテゴリー ] ,

【講演録】「オミクロン株の拡大と、ワクチン接種」二木芳人

■各国の感染状況、日本がなかなか減らない理由

 新型コロナはまだ収まったわけではないですが、一方でそろそろ収束が見えてきた感もあります。各国別の最近の感染者を見ると、今一番多いのはドイツです。この一ヶ月間でドイツは440万人も感染者を出しています。その次はロシアです。今ウクライナのほうで色々トラブルを起こしていますので、私は情報統制をしているのではないかな、と懸念を持っています。それからアメリカ、その次は韓国です。

 今回のオミクロン株は、一つの共通点は世界一斉に感染爆発が起こったことです。南アメリカなどでは南半球ということで、今までの流行では少し季節の差があったのですが、今回は南米の各国もあっという間に大きな波を迎えて、比較的早めに収束しつつあるという状況です。インド、トルコ、オーストラリア、UAEと、それぞれの地域で同じような動きをしています。こういうことは今までありませんでした。アジアも日本を含めてすごい感染爆発を起こしています。南アフリカは一番最初にオミクロン株が出てきたわけですが、収束しかかっていますが高止まりです。ただずっと感染者数は
下がってきていますので、収束が近いのだろうなと思えます。

 アメリカも大流行しましたが、今急激に減っており、収まりつつあるのではないか。そう見てくると、オミクロン株による感染は短期間で収束するのではないか、と色々議論されていました。

 ただ感染力が強いので、世代時間といって感染してから次の人にうつすまでの時間が非常に短いので、あっという間に広まってその後、急速に収束していく傾向もあるのではないか、日本もそうなのではないかと思っていましたが、やはり背景が違うことを知っておかなければなりません。欧米の各国は、3回目のブースターショットが特に高齢者でもう殆ど終わっています。デルタ株が再拡大したらワクチンの効果が半年ももたないということで、昨年9月ぐらいから積極的に高齢者を中心に3回目のワクチンを打ってきました。それが急速な収束に結びついているのではないかと思います。

 日本は明らかにここで遅れたわけですから、なかなか減らない一つの理由になっていると思います。南アフリカは、人口構成が全然違います。年寄りがほとんどいないと言ってもいいくらいの国です。ですからあまり重症化する人も少ない。ほとんどワクチンを打ってないのにどうして少ないのか。南アフリカは今まで独自にベータ株、アルファ株、オミクロン株などもう4回も国内で大流行しており、おそらくかなりの人が集団免疫というか基本的な免疫を持っているのです。もう一つは季節が違っていて、日本がこれから寒くなる時期に向こうはこれから暑くなるという時期に収束に向かったので、それもプラスだったかも知れません。

 ですから日本がそうなると考えて高を括ってはいけません、と言ってきましたけれども現実にそうなっています。一応、ピークアウトしたかなとは思うのですが、下がり具合が鈍い。

 韓国はあっという間に増えて一日の感染者数25万人、総感染者数は440万人ぐらいになって、死者数も増えています。最近の数が一ヶ月で300万人です。それまでトータルで95万人だったのが、オミクロン株の感染だけで300万人増えています。韓国も3回目のワクチンをけっこう打っているのですが、こうなってしまった一
つの要素は選挙だったと思います。大統領選挙をとても活発にやった。韓国は昨年11月にデルタ株に対する対策でも失敗しています。文在寅さんがそろそろ任期も終わりということで、ワクチンの接種率が70%を超えたら全て緩和していいと国民に約束したのですが、明らかに裏目に出ています。

 ロシアは感染者数がどんどん伸びていたのに、あっという間に下がっており、ちょっと早すぎる。そろそろ情報統制しているのではないか。ロシアの国内でコロナが流行っているというのは、決してロシアにとってはいい情報ではありません。

 かつてのスペイン風邪はなぜそういう名前が付いているか。元々はアメリカで発生したのです。それをちょうど第一次世界大戦に参戦するアメリカの兵隊がヨーロッパへ持っていった。で、世界中に広げてしまった。アメリカ軍もイギリス、フランス、敵側のドイツ、イタリア、全て当時は情報統制下ですから、流行っているという話をしない。唯一、中立国だったスペインで大変だと騒いだために、それでスペイン風邪という名前になってしまったわけです。

 もう一つはやはりウクライナの問題です。ウクライナも感染者が減りかけてはいたのですが、1日に25000~3万人くらいの感染者が出ていました。それが侵攻が始まった2月24日をもって、情報が出てこなくなりました。もう検査報告どころじゃないわけです。混乱の中で皆マスクもしないで逃げること、命を守ることで精一杯。当然のことです。

 ポーランドは感染が終わっていました。ここへウクライナから難民が100万人単位で来る。おそらくですが、東欧あたりでは感染が再拡大する可能性があると思っています。

 中国はもう殆ど感染者がいない、と報告されていました。ところが最近、一日に10万人単位で増えています。実は中国全土の報告はほとんどゼロなのですが、どこから来ているかというと香港です。だから中国政府は知らん顔してますが、やはり同じ中国ですから、どういう対策をしていくのか、興味深く見ているところです。

 香港は、西洋式の統計調査をしているので、とても細やかなデータがいっぱい出てきます。どこでどれくらい患者さんが出たかなどビル単位で報告されていますし、どこで検査ができるか、どこでワクチンを打っているかとか全部出てくる。

 それに対して中国の本土の情報を見てみると、どれぐらいの感染者が出たか、非常に曖昧です。以前から言われていることですが、香港を見ていると中国でこれから改めてオミクロン株による感染爆発が起こる可能性はゼロではないと思います。

■緩和が急速に進む海外、
 日本の緩和は注意が必要

 遺伝子を伸ばしてどこに変異があるか場所を示した図で見ると、50ヶ所も変異があります。こんなことは今までのウィルスでなかったことです。デルタ株は変異した箇所が4ヶ所しかない。ところがオミクロン株は一気に30数ヶ所変異しています。どこにどういう変異があればどういうことが起こるかは分かっています。例えばワクチンが効かなくなったらまた罹る、感染性が強くなる、免疫をかわすといったことです。ところがオミクロン株は変異の数がいっぱいあってこの変異をしたらどうなるか、どう性質が変わるのかが分からない。従来のウィルスが持っているような感染力の強さとか免疫をかわすということに加えて得体の知れないところがあったので、当初はずいぶん心配されました。

 昨年の暮れ、日本では急速に感染者数が減って、何でこんなに急に減ったのか説明して下さい、ということで、私もその頃、テレビで、一つには急速に2回目までのワクチンの接種率が増えていったこと、それと人流が減ったこと。外出した時に日本人は行った先でリスクの高い行動を取らない、自らそういうことを回避する、そういう意識があるからでしょうと言いました。

 あとはウィルスの中にあるnspタンパク質が変異していくとうまく増殖できなくなる傾向は確かにあります。だからそれで自滅したのではないか。でもどうして日本だけ少なくなっているのか、説明がつかない部分がありました。気候なども一つの要素としてはあるでしょうけども、結局はトータル的な要因でしょう、と私は言っていました。ただ、もう一つ大事なことは、デルタ株が収束した後、次の新たなウィルス(オミクロン株)が日本には入ってきてなかった。ですから、次の流行は変異株次第で、あると思わなければいけません、と話をしていました。

 今、総感染者数520万人、おそらく今回の感染者数だけでも今までの全体の半数近くを占めますから、今までのウィルスとは全く違うパンデミックが起こっているイメージがあります。しかも世界一斉に起こっている。こういうことが起こる時というのは、ゲームチェンジするタイミングです。あるいはこれをもって一気に収束に向かう可能性もなきにしもあらずです。

 日本は2月5日が新規感染数ではピークで10万人を超えましたが、その後、減ってきています。死者は少しずつ上がって、今は落ち着き始めています。まん延防止等重点措置も、3月6日をもっていくつかの県で解除されましたけれども、解除して大丈夫かな、というところが幾つかあります。

 例えば沖縄はいったん減っていたのですが、今また増えてきています。沖縄の先生に電話してみると、夜の街は大賑わいです、若い人がいっぱい出てきているのではないか。気になるのは、沖縄県はどちらかというとワクチン接種率が低い。山口県もなかなか数が落ちない。この2県は真っ先に解除しましたが、本当にこれで良かったのかな、と思います。

 オミクロン株を見切ったような気がしてどんどん緩和が進んでいます。日本はまだゆっくりですが、世界ではどんどん緩和が進んでいます。イギリスも全部、法的規制を撤廃してしまいました。ですが、私はマスクくらいはもうしばらくしておいたほうがいいのではないかなと思います。

 アメリカなんかいつもダメだと言われるのですが、けっこうしっかりやっています。CDC(疾病対策予防センター)は各地域を細やかに感染者数とベッドの占有率を見ながら感染状況を区分けし、それぞれの状況に応じてアドバイスしています。それに対して各州知事がどう捉えてどう対応するかは自由ですから、トランプさんの時にはそれで揉めていました。ワクチンは状況を把握して3回目、4回目を必要なら打って下さい、換気をして下さい、少なくともマスクをするとか感染対策の基本は守って下さいと書いてあります。マスクの付け方も、日本と同じで、布製とかウレタン性のマスクはダメだと言っています。付けるなら下に不織布性のマスクをした上で二重にしなさいとまで書いてあります。

 一つ気になるのは日本の水際対策です。3月1日から緩和され、外国人の方も入って来れます。入国者も5000人に増え、24日から7500人まで増やすいうことで40万人ぐらいまで一気に来られるそうです。ビジネス目的とか留学生はいいかなと思うのですが、技能実習の一部の方が、国内に入ってから追えなくなるケースもありますので、きちんと管理していただく必要があるかなと思います。ベトナムは今ひどい感染状況です。技能実習生はベトナムからけっこう来ておられると思います。

■日本の3回目の接種は
 なぜ遅れたのか

 アメリカで抗体ワクチンや治療がどれくらい効くかという実験や実際に患者さんを使った臨床試験の成績を一覧表にしているのですが、アルファ株はまあまあ効く、デルタもまあ効く、ところがオミクロンは全然効きません。

 ファイザーのワクチンは2回打つと6ヶ月で6割ぐらいしか感染予防効果がない、けれども3回目を打つとほぼ元通りの95%ぐらいまで戻ります、モデルナでも大丈夫というデータでした。比較的もつのですが、問題はオミクロンです。ちゃんと2回打ってすぐ後でも6割ぐらいしか効かない、おまけにどんどん効果が落ちて4ヶ月から6ヶ月経ったらほとんど予防効果がない。さらに3回目を打った後の効果の戻りも鈍い。ですからイギリスやイスラエルはもう4回目をどうするかを決めています。日本は今3回目ですけれども、4回目をどうするのかということも議論しておかないとなりません。

 我が国は3回目の接種が遅れたことに対して色々議論がありますけれども、ワクチン分科会というものが月一回ありまして9月から議論しています。外国はどうも2回目を打ってから8ヶ月後ぐらいで打っている。日本は5月、6月から2回目を打っているから8ヶ月後と言ったら年明けでOKなのです。外国がどんどん前倒ししていっているのに、知らん顔していたというよりもぱっと方向転換できなかったのです。

 その一つの理由は、3回目のワクチンが認可になっていなかった。もう一つは自治体に早くしたいと投げたら、そんなもの急にはできませんと言われた。その頃、自治体は子どものための補助金で忙しかった。一人5万円をどうするのか、大変な事務上の手続きがあって多忙なところにワクチンどころではありません。

 小さい地方自治体は、うちはすぐにでも打てます、と言ったのですが、その時はまた平等主義です。全国一斉でないとダメだということで遅れてしまった。こういうところを変えていかないといけません。それから色々と認可が遅れているのだったら少しでも早く認可する。ファイザーのワクチンを3回目を打っていいとなったのは11月10日です。一ヶ月早くしておけば、もう少しよかったかも知れません。さらに未だにこだわっているのは安全性です。あまり間隔を詰めて打つと危ないのではないかと。そういうところに機転が効かないのが日本の行政です。

 3月7日時点で、今は確かに一日に100万回打っています。3回目を打った人が全体で22%、高齢者は60%まで近づきました。ですからもうひと頑張りです。子どものワクチンも始まりましたが、私はともかく闇雲に打てばいいとは思っていません。病気を持っている人などは打ったほうがいいと思いますが、健康な子どもたちにどうするかはもう少し議論しなければいけないと思います。

■オミクロン株への過小評価が
 医療体制づくりの失敗を招いた

 これだけ感染者が多いと、オミクロン株そのものの肺炎ではなくても、お年寄りとか病気を持っておられる方はそれをきっかけにして元の病気が悪くなる人が大勢いる。こういう方々をきちんとマネジメントするためにオミクロン対応の医療提供体制づくりをしなければいけません。

 ところが東京都のデータだけで自宅療養者が9万人、調整中の人が7万人、合わせて16万人。全国では58万人の療養者がいたのですが、そういう人たちをきちんとカバーできず、検査もしないでみなし陽性なんてとんでもない話です。そういう取扱いを17都道府県でやっていた。今もやっているところがあり、私たちにしたら忸怩たる思いがあります。

 東京都は自宅感染サポートセンターを用意して、皆、自分で観察して下さい、何かあったら電話して下さいと言いました。300回線を用意していますと言いながら、その日の午後にパンクして繋がらなくなりました。結局、現場の先生たちが大変な思いをしながら何とかさばきつつあるのですが、こういう風なことになった理由はやはり過小評価です。

 岸田さんが総理大臣になって対策を述べられた時に、第5波を上回るような波が来ても持ちこたえられるようにしますと言いました。でもせいぜい1・5倍とか2倍くらいを想定していたようです。それを軽く超えるぐらいの感染者が出たわけです。

 おまけに感染のパターンが違う。以前だったらともかく重症者をどうするかが一番だったのですが、今回は自宅療養するような軽症者や無症状者が多くて、その人たちをきちんと仕分けをして、必要な人には医療に結びつけるいうところにまで結局行かなかった。オミクロンそのもので亡くなる人が少ないということを何となく拠り所にしていますが、やはりここは失敗だったのでしょう。実際に医療提供体制も大逼迫しました。ちょ
うどこの冬の時期は、救急車の行き先が元々大変苦労するのです。冬は救急疾患が増えます。そういうところから救急や外来が大変な思いをしました。救急車がすぐに患者さんを病院に運び込めない、いわゆる搬送困難が記録的に増えていくということもありました。

 その感染者ですが、今回は若い人が多い。60歳以上がやっと頭打ちになってきました。これはやはり3回目のブースターショットが徐々に効いてきているのだろう、と信じています。子どもはワクチンも打っていませんし、やはり学校における感染対策が不十分なのです。文科省は、大声出すなとかリコーダーを吹くなとか部活はどうしろとか言っていますけども、ああいうことで根本的な解決にはならないだろうなと私は思います。

 患者はそれなりに各年齢別にいますが、入院患者は殆ど60歳以降で全体の7割近くを占め、重症化になると全体の8割、亡くなる人は9割が60歳以降です。3回目の接種をこういう人たちを中心に急ぐということと、もう一つは行動変容をお願いしなければいけない。尾身さんが、もうステイホームは要らない、みたいなことを言いましたけれども、若い人にはそうでも、あの段階は高齢の方はステイホームしなければいけなかったの
です。まだワクチンを打っていない段階でしたし。

■各個人の感染対策の徹底、
 家庭内、学校の感染対策を

 検査はだいぶ増えてきましたが、世界に比べると全然足りません。民間任せにしているからです。民間はどうしても採算を考えなければいけませんから、設備投資をどうしようか、どれだけ作ろうか、どれだけ計画生産しようかと色々頭を悩まして、ある程度のところで抑えてしまう。だから全部政府が責任を持つと言えば作ってくれるのです。ようやくそれを2月の頭ぐらいに言いました。PCR検査も一緒です。

 やっぱり私たち自身がまず頑張らないといけないだろうと思います。ですから、個人的な感染対策の再徹底をしていただくにあたって、マスクの着用一つから見直す必要があると思います。マスクをしていても密閉されたところ、換気ができていないところで長時間話したら、確実に感染します。もう一つはマスクの種類です。いまだに時々プラスチックの板をつけたマウスガードを付けてロケをやっているテレビ局があります。あ
んなものは今してはダメです。マスクをしていても相手との距離、換気をするとか気を付けなければいけません。

 それから事業者の皆さん方は、それぞれ責任を持って感染対策をしていただきたいと私は常々思っています。飲食店でも認証店は東京の場合も14万件あって、ほとんどがもう認証されています。やはりちょっと甘いのではないかなと思うところはたくさんあります。

 まん延防止等重点措置などをだらだらと続けても仕方がありません。今、感染が起こっているのは、飲食店ではありません。先日、東京都でマラソンをやっていました。色々と厳しくやっておられたようですが、やはり参加者全員に検査の陰性証明を持ってこないと参加させないとしたのが正しいのだろうと思います。とは言え、できるだけ大規模なイベントはしばらくの間、もう少し自粛したほうがいいかなとは思います。

 一番多いのが家庭内感染です。これをどう防ぐのかは、もう不可能です。一人、家庭内に感染者がいれば、それを持ち帰ったら絶対うつしてしまいますから、リスクの高い人であればワクチンが打てるまではどこかの宿泊先を提供しましょうというぐらいのことをやらないと、と思います。

 あとは学校内感染です。これはほとんど手が打たれていません。学校に関して、やはり家庭内はおそらく子どもが持って帰ってくるのは間違いありません。本来ならば休講とか学級閉鎖ということも積極的に考える必要が場面によってはあると思います。ところが第一波のときに安倍さんが全国一斉に休校をやってしまった。あの弊害がとても大きかった。全国一斉にやる必要はありません。地域ごとに短期間でもそういうことは考えられるべきです。

 アメリカの場合は子どもたちに抗原キットがたくさん渡してあって、毎朝検査をして来なさい、熱が出たらもちろん来ないで、抗原検査で陽性になったらしばらくお休み、ということを併用しています。

 オミクロン株は出てきてまだ3ヶ月ちょっとです。このウィルスを見切ったと思っていると、後から子どもにとんでもない後遺症を残したりする可能性だってあるわけですから、学校を閉めると子どもの教育機会が失われるとか、学校をお休みにすると子どもが家にいて保護者が大変だ、というのは理由にならないと思います。

■ステルスオミクロンは
 それほど心配しなくていい

 治療薬は今たくさん出てきています。今一つ問題になっているのは抗体カクテル薬です。全く効きません。予防薬にも使えるようにしようとしていたのは日本とアメリカだけです。抗体薬はとても高い薬で、1回注射するのに20数万円かかる。それをどれだけ買ったのか。一気に不良在庫になりました。

 もう一つ、飲み薬も似たようなところがあります。ラゲブリオというモルヌプラビルの薬ですが、これもワクチンを打ってしまった人でハイリスクの人に打ったらどうなのか、効果があるかが全く分からない。それでも1000万人分くらい買っています。これも一回の治療に8万円かかります。これもとんでもない無駄遣いになるのではないかと思っていたら、パキロビッドパックという飲み薬が出ました。この薬は飲み合わせの
悪い薬がいっぱいあって現場でとても使いづらい。こういうものをどんどん使わせているのは、政権の一つの言い訳でしょう。

 菅さんが、「もうすぐ切り札になる飲み薬が出ます」と言ってましたが、全然切り札になりません。ですからあまり過大評価をしないことです。塩野義製薬のものもいい成績が出ているという話ですが、まだまだこれは最終方向が出ていません。この飲み薬も私はそれほど期待していません。

 コロナウィルス感染症との戦いは、まだしばらく続きます。ウィルスがちょっと変わっただけで、今私たちが使っているワクチンがすぐ効かなくなる。一年の間に3回も4回も打たなければいけないなんてとんでもないワクチンです。だから早く良いワクチンが出てほしい。塩野義製薬の作っているワクチンは、あるいは今のメッセンジャーRNAワクチンより良いものができそうな気配があります。そういうものが次の4回目あたり
で使えるようになると、その後しばらくは打たなくてよくなるかも知れません。が、これは分かりません。

 ステルスオミクロンが最近話題ですが、これは私は全然心配ないと思っています。元のオミクロンの亜型で兄弟ウィルスみたいなものです。BA.2 が今のBA.1 よりも感染力が強いので一部の国で置き換えが起こっているということですけれども、南アフリカで最初の報告が出た時からBA.2 はすでに出ています。それがじわじわと比率を増やしてきた。BA.1 とBA.2 の違いは、BA.2 の感染力は15%から1・5倍ぐらい強い。それで確かに南アフリカの中で置き換わりが進んでいたのですが、南アフリカで感染がだいぶ収まりつつあります。ただ高止まりですので、全部BA.2 になるようなら要注意です。

 デンマークはデルタ株からオミクロン株に入れ替わってBA.2 が出てくると今はBA.1 からBA.2に完全に替わりました。ただ、重症度とか死ぬ人の数はBA.1 の時と変わっていません。ワクチンの効き方も全く一緒だと言われていますので、それほど心配しなくていいのではないかな、と思います。

 この新型コロナウィルスがどういう風に終わっていくか。BA.1、BA.2 は心配ありません。ただ、他の変異ウィルスが出てくる可能性は否定できませんので世界中で監視を強めて、何か新たな変異ウィルスが出てきて、それがこのウィルスの性格を変えるようなタイプのものであれば、それに応じて先手先手を打って、新しいワクチンを作るなり、医療提供体制の整え方なりをそれに応じた形でやっていくことが必要です。

 ワクチンももっと良いワクチンが欲しいです。今のメッセンジャーRNAワクチンはその場しのぎのワクチンです。

 治療薬に関しては、先述しましたように、あまり期待していません。ウィルス側も我々の社会の中で生き残るために色々と変異してなじんでくるわけですから、このウィルスとの付合い方を我々も考えるのが大事か
なと思います。

 おそらくいずれ風邪のようなウィルスになるだろうとは思いますけれども、収束までどれぐらいかかるか、それまでにはもう一、二回の紆余曲折があるような気もします。私はあと2年ぐらいは頑張らなければいけないのではないかな、と思います。おそらく今のオミクロンはもうじき終わります。とは言いましても、その後に小さい波が来るかもしれませんし、それから冬にもう一度大きな波が来るかも知れません。

 その広がりを的確に捕まえて、早め早めにそのウィルスの特性を理解して、それに応じた体制を取れば、今までのように大きな被害が出ることはもうない、と私は信じています。