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高齢者学級のお役立ちから学んだ「触れあいのコミュニュケーション」(澤田良雄)

髭講師の研修日誌(83)

高齢者学級のお役立ちから学んだ「触れあいのコミュニュケーション」

澤田良雄氏((株)HOPE代表取締役)

◆学びパワーの高い高齢者との触れあいの学び合い
 
高齢者へのお役立て講演として数カ所出講した。

F市では市民大学を卒業しさらなる学び心の持ち得る会員で構成されているマイスター学院と称し、約400人のメンバーが在籍している。クラスは、所属年数により2階層に分かれており、年齢は65才から85才の方々であるが、各クラスとも聴き入る学びの姿勢は見事である。例えば、小生からの問いかけにも、にこやかに応答し、きちんとした意見を伝えてくれることはありがたい。
 
さて、当日の学びのテーマは「話し方ー家族(人)との触れあい」である。そこで、家族での触れあう対象はどういう組み合わせかと考察してみれば、それは、夫婦、親子、加えて兄弟、親戚関係と大別できる。

そして、夫婦では信愛、親子では、親から子に対して育みの愛であり、子から親には敬愛、そして、兄弟親族では支え愛であることを受講者と共に確認した。

ここでの愛とは、文字を真ん中の心、上下の組み合わせで受けると勝手に意味づけ、触れあいの基は心を汲み取り、それぞれの立場、役割での暗黙の了解事項を察して、お役立ての施しをすることと意味づけてみた。

◆触れあい実践の3つの「合い」
 
次に、各関係での触れあいの実践はどのような施し合いがあるのかに着目してみると、

①夫婦では、三つの「合い」を楽しみ合うことである。
 
その一つはお互いの活躍の認め合い、二つ目はサポートの仕合い、そして3点目は感謝のシャワーの掛け合いである。

この前提は、夫婦それぞれが、きょういく=行き場所 きょうよう=お役立てする用事があることを持ち合わせている事である。
つまり、「何を、誰と(誰に)どうする」との張り合いある楽しみを持ち得ており、決して、「今日は何しよう、今日も一人、誰とも触れあい、話す事はない」と言うことではない。

ならば互いがそれぞれのお役立てできる楽しみの実践や、新たな学びを楽しみあえるには、支え合いのパートナーとしての関係が望ましい。その現実化が、互いの活躍、楽しみを認め合い、そして、時には支援する支え合いであり、互いの支えの施しに「ありがとう」「おかげ様で」「美味しかったよ」等のひと言のシャワーがより信愛を深め合うこととなる。

②親子での触れあいは、学び合いの交流である。
 
それは、親の持つここまでの、学び、体験から持ち得る見識、智恵、技術を、適宜、適切に子に伝え、伝授を施すことである。機会は、親からの持ち掛けもあるだろうし、子からの問いかけ、依頼もある。逆に子供から学ぶ親の包容力も肝腎である。現在は、この子供の持ち得る知識、智恵、技など親を勝る分野も多い。
 
しかし、ここで肝腎なことは学ぶきっかけの「訊ける(尋ねる)気安さ」と、「訊いてくれたことへの、答える、あるいは指導を楽しみ」として受け止めることができるかである。案外、訊きにくい、答えることが面倒くさいとの意識もあり、触れあいを活かせない人も多い。実に勿体ない。

さらに、触れあいによる学び合いは、学ぶ瞬間だけでなくその後、どうなったのかとの気の掛け合いが継続し、「このあいだ教えてくれたことで、こううまくいったよ」との指導への感謝の言葉の返しが必ず成されていく。従って、さらなる親子でのお役立ての触れあいが深まることは言うまでもない。

*そして、兄弟、親戚関係での触れあいは、①気に掛け合い ②喜び合い ③施し合いの三つの合いである。

この実践は、関係者の記念、時候の行事時の触れあいを催すことも一策である。小生の一例を紹介すれば、毎年の正月はにぎやかだ。それは、新年3日には、兄弟家族が集まり小宴の催しである。

父母が亡くなってから35年。小生の兄弟姉妹は5人。その連れ合い、子供、そして孫が集う。3日のお昼ごろには、朝早くから仕込んだ手作りのおせちをぎっしり詰めたお重を持参するのは妹家族、海苔巻きと息子が焼くケーキ類をどっさり持参するのは末妹家族であり、地元の銘品のふかしまんじゅう、せんべいを予約して買い求め、自分の畑で採れた野菜を持参するのは弟家族。さらに、神戸から弟の娘家族が地元の産品を持って駆けつける。
 
それらを持ち寄ると食卓に乗り切れないほどのご馳走が並ぶ。宴を始める前に、仏壇の両親のお位牌に新年のご挨拶、両親から始まる命が参集し、皆が元気な顔を揃えてくれることにさぞや両親もあの世で喜んでいるのであろう。仏壇に飾った写真の両親の顔が笑って見える。
 
食事をしながら会話は弾む。近況報告、新しい年に向けての心がまえ、さらに家族状況の交換もあり、「入試はどこを希望している? 頑張れよ」「幼稚園は、大丈夫か」「二人目ができたの、今度はどちらかな…」さらには健康談議では「最近、腰がいたくてね」「膝に来ているよ」「運動はしているか?」「どこの病院に行っている?」などなど他愛のない話をするのも楽しいものである。

そして、この日の孫たちの楽しみは、お年玉、祖父、叔父、叔母と揃った場では、懐が温かくなる喜びのときである。頃合いをみて宴はお開きとし、皆が持ち寄ったお土産の交換で、我が家の正月行事は幕を閉じる。このほか、お盆に、お彼岸に、両親の命日に、還暦、喜寿の節目に、顔を合わせることも多い。

◆職場活動も共通であると考えた
 
ここまで記してきて、ふと気付くことは「家族での触れあいは、職場での組織での活躍状況と共通することが多いことである。つまり、
①夫婦は、同僚(職位の同等関係:担当者間・管理者間)であり、
②親子関係は、トップと社員、上司(リーダー)と部下(メンバー)関係となるであろうし、
③兄第・親族との関係は、協力企業、お取引、業者、関係企業・・との関わりとなろう。
 
また、共通する相手の心を受け止め、お役に立てる施しは顧客様(社会)との関係と意味づけることもできよう。
 
そして、それぞれに記した、信愛、敬愛、育くみの愛、さらに関係間での、触れあい実践の認め合い、支え合い、気に掛け合いの3つの合いは、「誰に、何を、どのように、いつ、どれほど、どこで施すか」の具体的実践策は、各々の諸条件に最適に対応することである。

◆触れあいのコミュ二ケーションの極意はすぐできる

さて、改めて求められた触れあいの話し方の極意に着目してみれば、それは、
①ひと言の言葉の掛け合いであり、
②互いに学び合い、教え合う話し方は快話を楽しむことである。

会場では、受講者間でこの実践を楽しんでみた。それは、ひと言の言葉の掛け合いの演習では、隣同士で「〇〇さん、こんにちは、前回は御世話になりました。本日もよろしくお願いします」と名前を頭に付け、そして、挨拶言葉の後に、ひと言の感謝、ねぎらいのことばを添え、学び心の確認として、「よろしくお願いたします」と挨拶を交わし合う。会場の雰囲気が一段と親しみを帯びる。
 
そして、快話演習では、ペアーを組んでの「私の健康法」「私の特技」「私の故郷」のテーマでおしゃべりを楽しむ。練習後はすかさず体験での感想は伺うと一様に「楽しかったです」との返答が返ってくる。

ならばどうして楽しかったのであろうか、その極意を確認してみようと前置きし、話し手、聴き手に大別しまとめ講義を施す。

①話し手の極意は、
相手の目を見て、腕を組まず、上から目線のでの話しぶりをせず、相手の年齢などを踏まえて、言葉遣いに注意する、そして、しゃべりすぎず「ところであなたは?」と問い返し、聴き手に回ると指導し、
②聴き上手の極意は、
相手をみて、適度な反応、それはうなずき、相づち打ち、そして、親しく聴く姿勢を生かす。さらに、聴いた話に関した適度な問いかけで、さらに相手の話を引き出していくとよい。

ここに話させ上手の「訊き上手、聴き上手の極意がある。と助言する。「快話は何を話すかよりも、どう、話す事を楽しんでいただくか」、そこには、「自分の持ち得る良さを知っていただき、相手から何を学び合うかを楽しむにある」と確認する。
 
実は、相手からの学びは、その後の生活上でお役立ての交流へと発展していく。それは、「このことは、その後あの人にお願いしよう」「このことをあの人にしてあげよう」との楽しみを生み出すお役立てを楽しむヒントになるのである。
 
いかがであろうか、職場でもこの一言の話し方、快話のコミュニケーションを最適に実践されているであろうか。

◆今、だからこそ「共に楽しく活躍する触れあいのコミュニュケーション」

先日、ビル・メンテ業務を手広く手懸けているT社の責任者クラスの依頼研修の打ち合わせに訪社した。そこで交わされた共有認識は、
・コロナ禍による活躍条件の規制により、マスク越しのコミュニュケーションの励行、集まる、接近しての触れあいによるコミュ二ケーションが困難なことから、心の触れあい、きめ細かなコミユケーション不足が生じた。
・今後に向けて、対面コミュニケーションが可能になることから、コロナ禍でのコミュ二ケーション不足の補い、また、コロナ禍での実践を引きずることなく、無精な、きめ細かな意思疎通の実践が不可欠である
等であるが、この着目からコミュニケーションに焦点を当て、「共に楽しく活躍する触れあいのコミュニケーションの実践法」と研修テーマを決め、受講者各自の現状の自信と誇りある実践ぶりを確認していくこととした。

その柱立ては
①想いを共有化する意思疎通が、共に楽しく活躍する仕事集団なり
②楽しい活躍の実感は、良さの発見による感謝・褒めのシャワー
③各自の智恵を生かしていく引き出すコミュニケーション
とした。

特に、引き出すコミュニケーションは、若手、中途採用者の持つ「自己実現できる仕事をしたい」との想いを実現していくサポーターとしての手腕発揮が望まれる現況だからである。
 
今、この時、対面型触れあいのあるコミュニケーションが楽しめる時である。それには、家族関係、とりわけ夫婦間の円満さが前提である事は周知の通り、社内外での活躍で伸び伸びと明るく、人との関わりを楽しみ得るには、家族での不安がないことである。
 
幸いコロナ禍での生活変化として自宅滞在の時間が増えたことによる夫婦、家族で共に過ごす楽しみが多くできたことが非常に良いことであると語るトップ・社員も多い。
 
マスター学院E副院長からの「楽しく、触れあいのある講義でした。皆からそういう声がでています。ありがとうございました。奥様にどうぞよろしく。・・」との届いたお礼状に目をやりながら微笑む小生である。

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澤田 良雄

東京生まれ。中央大学卒業。現セイコーインスツルメンツ㈱に勤務。製造ライン、社員教育、総務マネージャーを歴任後、㈱井浦コミュニケーションセンター専 務理事を経て、ビジネス教育の(株)HOPEを設立。現在、企業教育コンサルタントとして、各企業、官公庁、行政、団体で社員研修講師として広く活躍。指導 キャリアを活かした独自開発の実践的、具体的、効果重視の講義、トレーニング法にて、情熱あふれる温かみと厳しさを兼ね備えた指導力が定評。
http://www.hope-s.com/