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第11回「清話会会員企業インタビュー」㈱日本パートナー経営参与事務所 (増田辰弘)

増田辰弘が訪ねる【清話会会員企業インタビュー】第11回

「中小企業支援のよろず相談所」- ㈱日本パートナー経営参与事務所

~グループ6法人100人の専門家が寄り添いサムライとして支援する~

【会社紹介】

株式会社日本パートナー経営参与事務所
日本パートナー税理士法人

創業年:昭和41 年2 月
代表者:代表 税理士 神野宗介、代表 税理士 田制幸雄、代表 税理士 大須賀弘和、代表 税理士 安徳陽一
役員:取締役14 名 監査役1 名 顧問3名 ・社員: 男性73 名 女性31 名 パートナー顧問10 名
事業所: 本社/東京(御茶ノ水) 本部/立川/渋谷/多摩/横浜/千葉/郡山/福島/二本松/アメリカ(ホノルル)

                      神野 宗介 代表

中小企業の体質強化を推進
 「中小企業では、いまだ自分で帳簿をつけないで税理士事務所に記帳代行をしてもらい、経営者自身は自分の会社の数字をほとんど把握していないところが多い」
 「新型コロナで中小企業の1割は廃業し、2割は廃業予備軍である。しかしこの現実を誰もあまり深刻には考えていない」

 「2023年10月から始まる消費税インボイス制度(適格請求書保存方式等)を6割の中小企業がその存在すらはっきりとは理解しておらず、税務当局及び税理士事務所もその説明を
あまりしようとしない不思議な現象が続いている」
 ㈱日本パートナ―経営参与事務所(本社・東京都千代田区)グループの神野宗介代表、安徳陽一社長、神野和昭専務とヒアリングをしていると中小企業の現場の驚くような現実が浮かび
上がって来る。
 考えてみると、日本経済30年の停滞の大きな原因のひとつは中小企業の体質が変わらなかったことである。その理由はいろいろ挙げられるが、変われなくても済む体制を周りで作って
きた結果とも言える。
 政府も、地方自治体も、商工会議所も、銀行も中小企業を助けようとする様々なメニューを用意している。
 しかし、これはある意味では罪深い制度で、本気で助ける気はないのに助ける姿勢だけは見せる。当の中小企業は助けて貰えると思う。中小企業は助けて貰えて当然だと考える風土にな
る。おんぶに抱っこに肩車をしてもらっていたら、いつのまにか公園に置き去りとなっていたということになりかねない。むしろ、これまで成長して来た企業は皮肉なことにこのルートに
乗らなかった企業群といえる。
 この日本の中小企業の根本的な体質を大きく変えようとしているのが㈱日本パートナ―経営参与事務所及びそのグループ法人(以下「JPA経営参与グループ」という)である。同社が
重点的に取り組んでいるのが中小企業の体質強化である。ひとことで言えば考える中小企業、行動する中小企業の創設である。それは、これが会計事務所なのか、税理士事務所なのかと思え
るほどの動きである。

 

早めに手を打つ人財採用、働き甲斐改革、事業承継対策、資金化対策
 ㈱日本パートナ―経営参与事務所は、グループとして5つの法人を所持し、これらが互いに連携して顧客に対しワンストップサービスで各種の専門的サービスを提供している。税理士が
20名、社会保険労務士が7人、行政書士が7名、経営管理士が20名、スタッフ合計150名の体制で、本社のほかに首都圏、福島を中心に7支社を配置している。同社は現在法人顧問が1
300社、個人顧問が2700人と、会計事務所としてはきわめて大きな規模である。
 グループ企業を順に紹介すると、㈱パートナーバンク21は人財紹介を行う会社である。中小企業には人財が構造的に集まらない。この会社は顧問先の企業に代わり人財を探し出す会社で
ある。特に、毎月1回の同社の巡回監査でこの会社はどういう人財が欲しいのか綿密に打ち合わせをした後、顧問先の企業に合う人財を探し出すのが強味である。特に最近、恒常的な人手
不足に悩む建設業の顧問先企業には大きな役割を果たしている。
 ㈱JPA財産クリニックは、顧問先の企業の相続問題に取り組む。不動産、有価証券、資金をどう相続するのか。問題が発生するかなり以前から取り組むのが特徴である。特に不動産に
ついては大手の住宅メーカーなどと連携しうまく処理する方式を提案している。
 現在、日本の空き家は800万戸を超えて言わば大都会から田舎まで全国が空き家状況にあえいでいる。相続してもすぐに不動産を処理するのは容易でない。同社は顧問先の企業にヒ
アリングをして相続対策を早め早めに動いている。
 日本パートナ―社会保険労務士法人は、顧問先の企業の社員の働きがい改革を行う会社である。具体的には、会社の就業規則、福利厚生、退職金制度の導入など、まず会社のあるべき基
礎メニュ―を揃え、さらに会社での社員の働きがいの具体的な提案を行っている。

JPA総研グループ全体で対応し早期に処理されるワンストップサービス
 ㈱JPA国際コンサルタンツは、顧問先企業の海外展開支援と人格承継としてのM&A支援を行っている。海外展開支援はコロナと円安で現在は一段落の感があるが、同社のホノルル支
店を中心に活動している。
 人格承継としてのM&A支援は顧問先企業のニーズを受け様々な支援を行っている。こんなケースもあった。ある飲食業で兄は今までの伝統的な味にこだわる老舗の店を引き継ぎたい。弟はチェーン展開で店舗の数を増やして企業として成長させたい。それもまずいことに両者の株の持ち分が各々50%ずつ所有している。
 これを同社は、適格分別でそれぞれの道を歩いていけるように処理した。人格承継としてのM&A推進担当者は、「今は兄弟それぞれ自分のやり方で両社とも成長軌道に入りました。肉
親の話合いはこじれると大変なことになりますので、丁寧な処理をさせていただきました」と語る。
 日本パートナ―行政書士法人は、顧問先企業の各種許認可業務、会社法務、相続対策業務を専門別の行政書士が高度なサービスを行っている。一般社団法人危機管理コンサルタンツは、顧問先企業の企業防衛、リスクマネジメントの対応を行っている。(図 JPA総研経営参与グループ 総合未来ビジョン組織体制一覧参照)
 JPA総研経営参与グループの基幹となるサービスは毎月1回の顧問先企業を訪問する巡回監査と顧問先企業の経営会議への参加である。巡回監査では顧問先企業の税務会計、経営デー
タをあらゆる角度から確認する。経営会議への参加は、顧問先企業の経営会議(会社により役員会議、管理監督者会議、社員会議など)であるが、取締役会議ではなくもっと会社の現場に入
り込んで経営に参画している。
 そのなかで出て来る経営課題をどんどん先に挙げた同社の専門の6つのグループ会社が共有する。JPA総研経営参与グループのワンストップサービスは共有化と一体化で早期に問題に
対処する仕組みがある。
 そして、同社でのこの体制では対応ができきれていない分野については、弁護士、司法書士、不動産鑑定士、不動産コンサルタント、弁理士などあらゆる分野の専門家と提携して対応して
いる。

顧問先に寄り添う「利他の心」
 こう書くといかにも生真面目で、機動的な会計事務所に読み取れるが、同社の最大の強みはそれだけでなく、顧問先に寄り添う「利他の心」である。これは創業者である神野代表が、お
客が集められないのでもう税理士を辞めようと思っていた創業まもない時、立川商工会議所の専務理事から30社の記帳代行の仕事をいただき首をつないだ頃といささかも変わらない。
 とかく企業は大きくなると昔の厳しかったこと、辛かったことを忘れようとする。若い社員にはそんなことはなるべく伝えまいとする傾向がある。ましてや、お茶の水駅前の高層ビルに
本社を構えるようになると尚更であるが、同社はこの「利他の心」を150人の社員の隅々まで染み渡らせていることには驚きである。そして、このことが実は若い社員の現場での顧問先
企業の指導に役立っている。
 こちらが恰好をつけないから、顧問先企業も気軽に相談して来る。実情や本音を話して来る。この大変良い関係を創り上げた根元は、同社の親身に寄り添う心である。会計、財務、税務と
小難しい世界を分かりやすく懇切に説明することが同社の最大の売りである。
 「中小企業を近代化させ、成長させることが、日本経済を発展させる鍵である」。神野代表の口癖であるが、それを実現させるべくいろいろな手を打っている。
 まず、経営の合理化である。顧問先企業には、例外なく税理士法33条の2(税理士が申告書を作成し、計算し、整理し若しくは相談に応じた事項または審査した事項を記載するもの)の
書面添付と電子申告、電子納税を進めている。これは1万人を超える税理士集団であるTKC全国会の税務会計システムに乗せたものであり、我が国ではTKCが一番普及しているものである。
 もうひとつは、TKC全国会継続MASシステムにより、顧問先企業の社長及び経営幹部と同社が協同して作り上げた当該年度の予算と実績に基づき、毎月1回の顧問先企業の巡回監査時に予実分析と問題点の把握を必ず行っていることである。
 特に大きな問題のある顧問先企業にはその改善方策を社長及び経営幹部とじっくり話し合い、その改善策を導き出す。問題によっては神野代表や安徳社長も登場することもある。
 新型コロナのこの2年間は同社もこの対応で本当に大変であった。その甲斐あって「顧問先企業を1社たりともつぶさない! つぶさせない! 顧問先企業の8割以上を黒字化する」という全体目標はほぼ達成されている。まさに親身の相談相手としての寄り添い侍の面目躍如というところである。