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「台湾の景気、物価動向等について」(真田幸光)

【真田幸光の経済、東アジア情報】
「台湾の景気、物価動向等について」

真田幸光氏(愛知淑徳大学教授)

1.台湾、景気見通しについて

統一地方選挙が終わり、最大野党の国民党の躍進が伝えられる中、台湾国内では、来年の経済動向に関する関心が改めて強まっている。

こうした中、台湾国内では、
「来年の経済は、主要国での緩やかな成長と金融の緩和への転換、不況の継続、そして、更なる減速の可能性といった見方に分かれてはいるが、総じていえば、厳しいシナリオが想定されている。
そして、いずれにしても、来年3月が一つの重要なターニングポイントになるのではないか」
との見方が出ている。

一方、本年10月の製造業の景気動向に関して、世界的なインフレの進展と金利の上昇により景気鈍化は続いているが、在庫調整がなされつつあり、トレンドが改善に向かって変わる可能性があるといった見方も出ている。

更に、台湾の大手民間シンクタンクである中華経済研究院(中経院)が発表した2022年11月の製造業購買担当者指数(PMI、季節調整値)は、前月対比1.5ポイント下落の43.9となっている。

5カ月連続で景気拡大の目安となる50を下回っており、見方は総じていえば厳しい。 
PMIを構成する主要5項目全てが50を割り込み、前月対比で下落している。

このうち、下げ幅が最も大きかったのは「在庫」で2.9ポイント下落の43.6、「生産高」は1.8ポイント下落の42.8、「サプライヤー納期」は1.6ポイント下落の42.7、「新規受注」は0.9ポイント下落の41.9、「人材雇用」は0.6ポイント下落の48.3となっている。
 
一方、業種別で見ると、主要6業種のうち4業種が前月から上昇、50を上回ったのは、「輸送機器」(4.9ポイント上昇の51.3)と「食品・紡織」(3.8ポイント上昇の52.6)の2業種となっている。
 また、「基礎原材料」は1.7ポイント上昇の44.7、「電力・機械設備」は1.2ポイント上昇の40.0となった。
 
一方、「化学・バイオ医療」は4.6ポイント下落の45.1、「電子・光学」は1.1ポイント下落の39.4となっている。
 
景気見通しはまだら模様であろうか。

2.台湾、物価動向について

台湾ではまだインフレの影響が消えきれておらず、住宅価格の上昇によって、家賃も押し上げられており、消費者物価指数(CPI)にも影響が出るものと見られている。

住宅関連価格の上昇、高値継続は、庶民の景気感覚には大きな影響を及ぼすことは明白であり、今後の動向をフォローしていきたい。

3.台湾、輸入インフレについて

世界的なインフレが続く中、台湾では通貨・ニュー台湾ドルの対米ドル安が進展し、輸入インフレの懸念も出ている。

最近はニュー台湾ドル安も一息ついてはいるが、台湾中央銀行の楊金龍総裁は、
「今年のニュー台湾ドルの下落は、輸入原材料と商品のコストを増加させることは間違いなかろう。
しかし、国内インフレへの影響はまだ制御可能である。

中央銀行としては、ニュー台湾ドルが今年平均6%下落した場合でも、消費者物価指数 (CPI) への影響は 0.15 ~ 0.3% ポイントになると見ている」
とコメントしている。

4.台湾、電力供給見通しについて

台湾は潜在的には電力不足となる危険性を持っている国ではある。
こうした中、台湾の主要企業の一つである台湾電路積体製造TSMCなどは政府に対して、今後5年後には十分な電力が供給されるかどうか懸念していると伝えている。

しかし、これに対して台湾政府・経済部の王美華部長は、台湾の電力が不足することは基本的にはないと考えていると回答している。

5.台湾、COP27に対する見方について

今秋、エジプト開催され、11月に終了した第27回国連気候変動会議(COP27)では、各国の思惑が絡み、ハードな議論が繰り広げられた。
その中で、主軸となった重要なキーワードは、
「食糧と農業である」
との認識を台湾では示している。
 
台湾自身も中国本土の様々な圧力を受ける中、自国を防衛する上からも経済的な自立路線を取ることが重要であり、食糧と農業問題の視点から地球環境問題に対応する雰囲気が高まっていると見られている。

6.台湾、暗号通貨について

リスクの高いと見られている暗号通貨を規制する必要があるか否かについては、国によって意見が異なっている.
そしてアジアでは、日本は比較的規制の程度が高く、米国では、州政府と連邦政府がそれぞれ事業の範囲に応じて規制することが出来るようになっている。

こうした中、台湾でも暗号通貨を今後どのように取り扱っていくのか見当が始まっている。

今後の議論の動向をフォローしたい。

 

真田幸光————————————————————
清話会1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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