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「 望年、新たな楽しみヘの取り組み」(澤田良雄)

髭講師の研修日誌(89)

「望年、新たな楽しみへの取り組み」

澤田良雄氏((株)HOPE代表取締役)

◆望年会新たな心意気をつくる
 迎える年は更なる希望の年だから望年会という。これは「この年にあったことを忘れるのでなく、あったことを土台に、新たな年に更なる望を持って志を固めることの方がウキウキしますよ。」と出講先のK社長の話に共感しての命名だ。まさに、出来事の事実は消せない、時にはリセットしたくてもである。それは、忘れたいと思っても忘れられない、忘れさせて貰えない、忘れてはいけないと背負うこともある。勿論、上手くいったことは、更なる期待を高めた現実であり、それに応えることができなければ単なる一過性、たまたまの出来事にすぎない。

 この現実が、仕事であり人生であろう。とかく「人と過去を変えることはできないが、自分と未来は変えられる」と言われるが、この年の出来事で、例えうまくいかないことがあっても失敗は成功の元である。時として「先生もそういうことがあったんですか、ビックリしました」言われるが、過去の事実は、その後の有り様によって、価値は変えられる。言わんや「過去の事実は変えられないが,過去の価値は変えられる」のである。肝腎なことは、どう変えていくかの本気で取り組む改革力である。この時期、今年の良き事、不備な事実を確認し、新たな年に活かし,新たな発展を創る楽しみとする望年会とする事も良い。今回はそのお役立てとして提言してみる。


◆3実がそ人の立ち位置を決める
 今年も創作家みのわむねひろ師から明年のミンミカレンダーが届いた。目にするとみのわ氏が春夏秋冬の季節感を描く中で、ウサギをはじめ可愛い動物たちの生活感が実に微笑ましい。1~2月はコマ回し、3~4月は満開の桜の下でのパーテイ,5~6月は木登りと池での釣り、7~8月は盆踊り会場、9~10月は紅葉と池でのボート遊び、11~12月は星空を仰ぎキャンドルでの集い・・いずれも皆で遊びを工夫し、皆で、楽しく、皆で協力しあって睦び合う。実に良い。読者諸氏の来る年も、このように人と人とのご縁で、楽しい時を創り、想いで多き年を描いていることであろう。

 みのわ氏の手懸けた作品は我が国の母子手帳のデザインをはじめ、各社のデザイン商品はヒット商品となり、パッケージ、包装紙はいずれもヒット作品である。もちろん,絵画の多くの作品もおありだ。圧巻なのは、山形県に建設されたYリサイクルセンターである。山の上の勇壮な二階建ての中央にはミンミ(ウサギ)のモチーフがにっこり陣取っているが、この建設一斎の設計,デザインを担当し、現在は名所となり、連日多くの入館者で賑わってきた。

 みのわ氏曰く、「人はそれぞれ、過去があって、今この立ち位置がある。そして先を見据えることができる。その過去はいかがなものか。それは、実例(体験・経験),実証、実績の3実です。いかにこの三実を成してきたかが決め手です。」と説いた。加えて、その実績は、「辛さがあり、苦労があっての実り」であると念押しされた。まさに小生との共通認識である。ちなみにみのわ氏とは50年来の交流であり、時折談義にふけり、相互の支援を重ねてきた敬愛するお一人である。


◆望みのPDCAサイクルを上昇型螺旋状に回す
 ならば、新たな実績づくりの望づくりはどうする。それは、業務推進のP(計画)D(実行)C(検討)A(処置、新たな対応)のサイクルを回すことと同様だ。回すと言っても平行サイクルでなく、上昇サイクルに回すのは周知の通りである。

 手元に今春、地元経営者のモーニングセミナーで発表した小生の言葉がある。それは「おかげさまで」との言葉である。この言葉は、大手製鉄メーカーの役職勇退を節目とした熟練者研修で受講者と共に共有したキーワードである。

 その想いは「現在の立ち位置があるのもこれまでの関わる人の支えのお陰、ならば、培った能力(専門力・人間力)で今度はお返ししましょう。」そこには、難解な課題解決、育成と後任者への支援の最高実践があるが、その施しはやがて「あなたのおかげです」と感謝として返ってくる。との想いから、新たな立ち位置での、活躍マインドとして共有した言葉である。もちろん、この貢献は、人生100年時代に対応した生涯現役として稼げる力の磨きにもなるとのねらいも併せている事は言うまでも無い。

 ならば、小生にとっての「今年のおかげ様」はどうかと検証して診ると、コロナ禍の影響はあるものの、関わる方々(ご依頼者、ご担当者、ご紹介者、受講者・・)にお役に立てる機会の実例と「おかげさまで、社員(職員・会員)がこう変わってきましたよ」「自信がつき実績がこれだけ数字アップしました」「仕事への取り組み方、生き方に前向きになりました」「話を聴き、元気を貰いました」「素直に自分の強み、弱みに気づきました」等々、感謝を頂けた。この事は、「共に楽しく,気づき合い,磨き合い、触れ合い、そして現在の最高実践を更に進化させていきますよう支援をいたします。」と研修の冒頭にお約束した「お役だて」の実証が得られた実感である。そして、ご担当者からの次の機会も頂き、新規出講先も増えた。決して派手さは薄いが、一遇の花としての小生の存在としての実績は誇りである。

 従って、「おかげ様で」の謝念を深め、来る年の望みに、更なる精進への意気込みとした。勿論、自己検証では自省もある。それは、より高める自分磨きの気づきとしての感謝である。そこには、来る年への「昨日の我に今日の我勝つ」との覚悟であり、新たな望みを持つことは、新たな螺旋状の自分磨きも必至条件であり、それは、器を一回り大きくする自分づくりに他ならない。


◆自分のものを創る楽しみ
 一回り大きくなる楽しみづくりに着目して観ると、今秋のS社の新人フオローアップ研修で冒頭H社長から、「仕事は守破離,基本をまねびできちっちりものにしたら、自分の仕事方法を産み出そう。学んだことは先輩の仕事の仕方である」との言葉があった。加えて担当部門Tマネジャーからは、「来春は先輩社員、あの人に頼もうといわれる人になろう」とのエールが送られた。誠に的を得た言葉である。

 新人の今年の成長は、できない自分ができるようになった。それは、何事にも必死さがあり、真剣に取り組む、貪欲に学ぶ力があったからだ。そこには、入社時に描いた「5年後の自己像(頼られる存在感・後輩に指導・部門での存在感・素敵な社会人・・・)に向けて「初心を忘れない」「失敗を恐れず挑戦」「仕事の意義の追求(何故・どうしての根拠)「自己磨きを怠らない」「当たり前のことを悔いなき最高実践」「上からも頼られる新人」などのキーワードでの心意気で活躍してきた証である。4月は想像の自己像であるが、現在は、体験・経験を基にした実質的自己像としての成長がある。ここからどうする。そこには、自身の持ち味を生かし込んでいく仕事ぶりを楽しむ事だ。それが、考働(考えた,働きをする)による「継続は(ち)智(恵)(か)可(能)(ら)楽(ら)なり」なのである。それは,自分の方法を創り上げる過程である。


◆経験則にとらわれない
 さて、新人に違わず,今年,新管理者、新リーダーになり、昨年よりも一層高い立ち位置で活躍してきた人も多い。自動ドアーメーカーK社での各層研修でもその期待事項、活躍の有り様を確認し,以後半年間の実践目標を設定し,変えていく自分への取り組みを継続している。どれだけ、変わったであろうか。危惧することは、変えようと思い、変えた活躍ぶりを行使に一歩踏み込めているであろうか。それは,経験則によるいらぬ先読みの悲観論との闘いである。例えば、良く出される「でも」「だって、こんな事があったんだからやっても・・」との一歩踏み出す決断を鈍らす言葉がある。それは、失敗は成功の元と言っているにもかかわらず、いざ自分が成すべき時なると、案外出される傾向である。

 今年の一字の漢字は「戦」いであるが、新たな年の望みの実態づくりは,良く口にする挑戦、積極果敢、思い切ってとか、失敗を恐れずの気概を行動化していくと良い。それは、あのときにやっておけば良かったとの悔いは、この経験則による一歩踏み出す勇断の弱さが要因である事が多い。


◆一歩踏み出す実践の心へ
 ご存じの二宮金次郎の薪を担ぎ、本読む銅像では何を教えているか、学に励み、勤労の大切さを説くとは小生の見解であったが、いや一歩前に出た足であるとは、尊徳翁子孫7代目のN氏からの学びであ。つまり、実践の示範の象徴である。だからこそ、多くの経営者(御木本幸吉、土光敏夫、松下幸之助、豊田佐吉、稲盛和夫・・)が影響を受けた教えの凄さは、尊徳翁の数々の功績は実践によって成した偉大さにある。実践の大小は問うことではない。たとえ小さい事でも大事。「積小為大」の言葉がある。この意味合いは、小を積みて大を為す。「小さな事をコツコツ積み重ねると、少しずつ大きくなっていくんだなあ・・」と尊徳翁は説いているとN氏は紹介された。まさに僅差、微差も累積すれば大差を生むといわれる如しである。もちろん、あきらめないこの気概が重要である。先のサッカーワールドカップで話題となった三苫選手の一粍の奇跡がある。可能性を信じて放った執念の一蹴りからのこの学びも新しい。


◆明朗な心を持つ
 それには明朗な心を持つ事である。明朗な心とは今一度確認してみよう。それは自身の物事を明・暗の捉える傾向である。良く出される「コップに残った半分の水を見て、どう思うかの例話。「もう半分しかない」「まだ半分ある」あなたは「どう」の問いかけがある。もうない×・まだあるは○とし、物事を明るく、楽しく捉える心の持ちようである。だから、「もう・・」は常にネガテイブ思考であるとの教えである。従って行動を喚起する事ができない。従って、明朗心で新たな望みの、新たな覚悟として固めて楽しく実践して行くことがよい。もし自分にはそんな能力が無いと言うなら、それは自分を粗末にすることである。新たなことをするには潜在能力を顕在化する機会でもあり、新たな学びによりできる能力を増幅する楽しみがあるからだ。明朗心の抱きの方法の一つとして、出講を機に長年お送りいただいているOショッピングセンタ-発行のおりぶだより12月号に次の記事が掲載されていた。それは3陽の実践である。

①いつも笑顔でいる。・・これを陽相といい                 

②大きな声でハキハキ話す・・ことこれを陽言

③背筋を伸ばして胸を張って、歩くこと・・これを陽動といいます。

この三つの3陽を実行すると常に気持ちが明るく、プラス思考になります。
陽転思考の具体的実践策としてはまさにぴったりである。多分、一陽だけでも、取り組めば,後の二つの陽は自然と備わってくるであろう。ちなみに,タイトルは「笑いが店を元気にする」とある。
 朗らか、感謝、気軽、信頼、元気な「ハイ」、にこにこ、楽しい、やればできる、やるのは今でしょ。こんな言葉を無理でも発して、やがてポジティブな自身に変えてみると良い。すると必ず、実現に向けた打つ手は湧いてくる。自分の限界があるなら、他の人の力を借りたら良い。「できない理由を考えるより、どうしたらできるかを考える」この方が浮き浮き感が湧く。特に上に立つ人のワクワク感は関わる人を明るく安心させるとは周知のごとしである。

 

 もうすぐ新たな年が来る。コロナ禍での厳しい環境から多少の緩和された現在である。
 秘めたる「志」も様々であろう。志は現実をにどう言動を変えていくかが肝心。足下をきちんと固め、累積していく自己改革無くして、新たな実績はでき得ない。
 名所となった北陸新幹線の金沢を形容する言葉に「伝統と改革」がある。だから本物の街としての魅力があり、訪れたいとの心も動くのであろう。本物は揺るぎない信用を得て、発展の礎となる。今年は,どれほどの本物づくりと高めができたであろうか。

望年、さらなる本物力の高めをニコッとして期した現在である。

 

 

 

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澤田 良雄

東京生まれ。中央大学卒業。現セイコーインスツルメンツ㈱に勤務。製造ライン、社員教育、総務マネージャーを歴任後、㈱井浦コミュニケーションセンター専 務理事を経て、ビジネス教育の(株)HOPEを設立。現在、企業教育コンサルタントとして、各企業、官公庁、行政、団体で社員研修講師として広く活躍。指導 キャリアを活かした独自開発の実践的、具体的、効果重視の講義、トレーニング法にて、情熱あふれる温かみと厳しさを兼ね備えた指導力が定評。
http://www.hope-s.com/