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「令和5年 元旦の靖国神社」(日比恆明)

【特別リポート】
「令和5年 元旦の靖国神社」

日比恆明氏(弁理士)

平成2年(2020年)に発生した新型コロナウイルスは瞬く間に世界に広がり、3年を経過して本年は4年目に突入しました。感染の初期には、三密を避けマスクを着用することで感染を防ぐことができる、と知らされていました。1年ほど我慢すれば免疫ができて沈静化する、と比較的楽観的な予想がされていました。

感染者数は昨年7月に第7波のピークを迎え、その後はなだらかに減少していき、このまま行けばコロナ禍は終了すると期待されていました。だが、10月から感染者数が徐々に増加し、第8波となって新年を迎えることになりました。コロナ対策も3年も続くと、社会全体が疲労感に溢れるようになってくるようです。
 
コロナ発生源である中国では、都市封鎖によって国民の行動の自由を極度に制限することで、地域間のコロナ感染を防止し、成果を上げてきました。しかし、余りの強烈な隔離政策に反発する国民の声が強いため、中国政府は12月になって規制を緩和することになりました。行動の自由や自宅隔離などを認めたところ、途端に中国国内でのコロナ感染者数が増加し、大変な騒ぎとなっています。

また、感染が拡大しているのは新たな型の変異ウイルスであり、従来のウイルスに比べて感染力が強いといわれています。「感染拡大」「変異ウイルス」などとコロナ禍の収束は見込めません。何時になったらマスクを外し、快適な生活を送ることができるのでしょうか。


                    写真1

今年の元旦は雲一つ無い快晴で、最高気温は13度と快適な気候でした。風も無く、散策するには絶好の日よりでした。陽光にあたっているだけで暖かく、幸せを満喫することができました。

同時刻のウクライナではロシアとの戦闘が続いており、日溜まりに集まって暖を取るというような状況ではなく、一日数百人もの戦死者が出ています。戦後の東欧では周期的に動乱、テロが発生しており、安定したものでは無かったようです。

日本は島国である理由により外部から攻撃されることなく、80年近く平和な状態が続いてきました。しかし、北朝鮮によるミサイル発射が連続しており、中国による台湾侵攻の余波で沖縄が攻撃されるかもしれず、平和日本も安定したものでは無くなっています。日本でも、数年以内にウクライナ程の規模ではないが小規模な被害が発生するでしょう。


                  写真2


                   写真3

今年の参拝者は昨年に比べると少ないように感じられましたが、次々と神社に訪れていました。写真2は今年の拝殿前の行列で、写真3は一昨年(2021年)のものです。一昨年は三密を避けるため、参拝者同士が前後左右に間隔を置いていましたが、今年は外出に規制緩和があったため普段通りの行列でした。

政府は規制緩和をしてくれたのですが、高齢者が多い神社では密集を避けた方がいいのでは、と思われました。


                   写真4

どの神社でも絵馬を販売しています。購入者は絵馬の裏に願い事を書いて奉納(絵馬掛けに吊るす)するのです。願い事は「家内安全」「無病息災」といったところがスタンダードでしょう。その他には「良縁成就」「恋愛成就」「大学合格」「金運万来」などと利益追求型の願い事もあります。絵馬を奉納する習慣はかなり前(鎌倉時代?)から成立していたようですが、この習慣が理解できません。願い事があれば、お賽銭を上げて口の中でゴニョゴニョと目的を唱えておけばいいはずです。物理的に表現した方が心理的に願い事が明瞭になるからかもしれません。
 
30年程前は、住所、氏名、電話番号までも明記していた絵馬を散見したことがありますが、個人情報を云々する昨今では見かけられません。その代わり、英語、中国語などの外国語による願い事が多くなってきました。この日、小学生とその母親が願い事を書いていましたが、内容は「成績向上」であったかもしれません。


                   写真5

一昨年の靖国神社では屋台の出店は禁止でしたが、今年の参道には50店ほどの屋台が営業していました。暖かい日の光の下で家族が団欒をするのは微笑ましいものです。ただ、私は個人的に屋台の料理は好きでない(高くて不味い)ため、過去に食事したことはありません。ここでは味を楽しむのではなく、屋外で非日常的な食事を楽しむものであり、目的が違っているのです。


                   写真6

ウクライナとロシアの戦闘により、石油の高騰、小麦の輸入量減により食材の値上がりが続いています。このため、屋台の料理にどのように影響しているかを観察してきました。写真6は酒専門の屋台ですが、生ビール、清酒剣菱のみが600円で、他のアルコールは一律500円となっていました。生ビール、清酒剣菱は仕入れ価格が高いためこのような価格となったようです。

他のアルコールを500円としたのは、500円硬貨のワンコインで販売できるからと推測されます。500円硬貨を1枚出して購入するか、千円札を1枚出して500円硬貨をお釣りを受け取るだけのため、購入し易い心理になるからでしょう。


                  写真7

                    写真8

焼きそば、綿アメなどもほぼほぼワンコインの価格設定となっている屋台が多いようです。屋台におけるこの価格設定はここ3年ほど変わっていません。諸物価の高騰により、各屋台とも値上げしたいのですが、ワンコインという手軽さを破ることは難しいようです。値上げしたいが客離れが怖い、という店主の心理が透けて見えるようです。
 
そうは言っても、それぞれの屋台では価格設定に工夫をしているようです。写真7はおでんを販売する屋台で、旧価格の上にガムテープを貼り、その上から700円の文字を書き込んでいました。写真8はたこ焼きの屋台で、それとなく価格を600円に差し替えていました。昨年は500円であったような記憶があります。いずれもステルス型値上げとなっていました。

今年はどの屋台も昨年並の価格に抑えていましたが、来年はどうなることやら。もしかしたら3割程度は値上げするか、量を少なくするかもしれません。


                  写真9


                  写真10

参道脇には閉鎖されたテントが設置されていました。屋台や詰所ではありません。中を覗いてみると、ビールや酒ビンが山のように積まれていました。正月三が日は酒販の問屋がお休みのため、屋台で売り切れてしまうと補充することができません。正月は屋台の稼ぎ時のため、予め大量のアルコールを仕入れていたのでしょう。