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「令和5年 春の九段界隈のできごと」(日比恆明)

【特別リポート】
「令和5年 春の九段界隈のできごと」

日比恆明氏(弁理士)


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今年の東京の開花宣言は3月14日で、昨年より6日早く、平年より10日も早いということで観測史上2番目に早い異常なことになりました。満開は22日となり、これも異常に早いものでした。しかし、この間の天候が不順で曇りと雨の日が続き、快晴となった土日はありませんでした。私は4月1日に出掛けましたが、この日は晴れと曇りが交互に現れる不順な天候でした。
 
この日、市ヶ谷駅から飯田橋駅の間で、中央線と並列した外濠公園では、桜花は散り始めていて、残ったのは7分程度でした。狭い幅ながらもここだけは芝生が植えてあり、久しぶりの陽光の下でノンビリと花見をされてみえる人達がいました。

昨年2月に始まったロシアによるウクライナの侵攻はいまだに継続しており、ニュースでは戦闘の動画が放映されています。ただ、放映されている動画では大砲を発射している場面か建物が被災している場面が殆どで、実際の戦闘や戦死者の被害などのリアルな場面はありません。実際には撮影してるのですが、視聴者への心理的な影響が大きいため放送を規制しているのでしょう。そんな場面とチラリと放映すれば、世界の人々は戦争の残酷さを実感するのではないでしょうか。ウクライナ戦争を遠い他国の出来事ととらえて無関心であった人達も、ニュースでリアルな戦争の残虐性が放映されれば反戦の気持ちに変わるでしょう。
 
この戦争の根本的な間違いは政治家の見通しの甘さにあったようです。プーチン大統領は「1か月もあれば降参するだろう」と考え、ゼレンスキー大統領は「2、3か月もすれば諦めて撤退するだろう」と予測していたのではないでしょうか。双方のよみが甘かったので泥沼状態に落ち込んでしまったようです。最近になると、ロシアは戦術核兵器を隣国のベラルーシに配備することになり、もしかすると核兵器の一発でも使用することになりかねません。そうなると、世界情勢は一度に変わってくるでしょう。
 
東欧ではこのような騒動となっていますが、アジアでもこの先どうなるか見通しがつきません。中国は台湾を開放(要するに、自国の領土にすること)すると宣言し、台湾に侵攻すると予告しています。台湾有事は2027年までに実行されるのではないか、と予測され、戦闘があれば日本、特に沖縄諸島に影響が出てくるでしょう。また、北朝鮮では毎月のようにミサイルを発射し、こちらも何時韓国に攻め入るか不安です。戦後、70年もの長期に渡って平和(と考えていた状態)が続いていた日本ですが、これからは雲行きがおかしくなってきました。
 
さて、経済の方面を見ると、アメリカのシリコンバレーバンク、シグネチャーバンクは破綻し、スイスの名門クレディ・スイス銀行は経営不振でUBS銀行に吸収されました。金融業界は、2008年のリーマンショック以来の大規模な危機になっていると言われています。また、世界的にインフレが進んでいて、2022年ではEUが9.2%、米国が8.7%、日本が2.5%の物価上昇となったと発表されていますが、実感としては値上がりはもっと大きいのではないかと感じられます。

インフレになった原因の一つは、ウクライナ戦争によるロシアの石油・ガスの輸出禁止ですが、これ以外にも多数の要因がありそうです。世界的に金利が上昇することで不況になるとも想定されます。物価上昇、失業者増加という経済不安に東欧と東アジアの両地域での軍事不安が重なり、近いうちに大変動が起こりそうな雰囲気となってきました。社会情勢は、第2次世界大戦が始まる前の1930年代に似てきたようです。


                  写真2

昨年、都内の花見の名所では飲酒飲食が禁止されていました。今年は上野公園では解禁となり、宴会をするグループの姿がニュースで流れていました。しかし、千代田区の花見の名所で宴会ができる場所は少ないのです。以前は靖国神社の参道脇に屋台が出ていたのですが、コロナ騒動以来、ここでは飲酒飲食が出来なくなりました。

今年、千代田区で宴会ができるのは外濠公園だけのようです。また、ここには椅子とテーブルが設置されていて、食事をするには都合が良い環境にあります。この日、豪勢に食事をしている団体を見かけました。ガスコンロを持参し、ジンギスカン鍋をしていました。


                  写真3

桜花が散り始めていて、千鳥ケ淵には花筏が出ていました。お掘りには多数のボートが浮かび、春の季節を楽しんでいました。考えてみると、内堀、千鳥ケ淵の地形は明治以降殆ど変わっていません。周囲の建物や遊歩道などが変わった程度でしょう。すると、50年前、60年前の花見客も同じような光景を鑑賞していたはずです。同じ風景を毎年愛でていたことになります。それでも、人々が毎年のように同じ場所に花見に出掛けるのは、春が到来したことを確かめるためではないでしょうか。外出すれば、春の風、桜花、花の匂いなどから冬から春へ切り替えがあったことを実感できるからです。


                  写真4
千鳥ケ淵では、桜花を背景にして、スマホで自撮りされる人達が目立っています。別に、千鳥ケ淵だけではなく、何処の名所旧跡でも同じです。どのような理由で自撮りされるのか不明ですが、「ここに来た」という証拠で撮影しているのかもしれません。桜花が美しければ桜花だけを撮影すれば十分だと思うのです。以前のフィルムカメラの時代ではこのような撮影は出来ませんでした。デジタル機器の進歩による効果でしょう。技術の進歩により生活スタイルが変わってくる一例かもしれません。


                  写真5


                  写真6

毎年、千代田区観光協会では各種のイベントを開催しています。今年は「謎解きゲーム」を開催していました。タイトルは「怪盗ブロッサムの挑戦状」というもので、写真6にあるガイドブックに掲載してある場所を訪ね歩き、謎を解いていくゲームです。指定場所には何らかの表示があり、それをスマホで回答して送信すると抽選で景品が当たるというものです。しかし、このゲームに参加するにはガイドブックを500円で購入しなければなりません。

賞品は数量が決まっていて、参加者全員が当選するものであありません。要するに、全員に参加賞が無いゲームなのですが、参加費用500円を負担しなければならない、といものでした。これでは一種の宝くじのようなもので、少し興醒めでした。


                  写真7

この日の標準木では半分以上の桜花が散っていて、早くも葉桜に近づいていました。標準木は、他の桜木に比べ肥料が与えられて大事に育てられているため、開花が早いのです。その代わり、散るものも早いのです。境内にある他の桜木が満開になっている時期には、標準木はすでに葉桜に移行しているのです。


                  写真8

以前の花見の時期には、靖国神社の参道には屋台が出店していましたが、2020年以降はコロナ感染予防のため出店が取り止められました。今年は5台くらいのキッチンカーが出店していました。多分、キッチンカーの出店はこれが初めてでしょう。これからは屋台よりもキッチンカーが主流となっていくかもしれません。


                  写真9

昨年、一昨年に比べ、はとバスによる都内ツアーが目立って増えていました。地方からの上京者(いわゆる、お上りさん)にとって、都内の名所を巡るにははとバス観光が一番簡単です。従前からもはとバスによる靖国神社観光がありましたが、コロナ発生後には一時沈滞していました。今春からツアーが急に増加したのは、全国旅行支援と地域クーポンが適用されるからです。乗車料金の20%が割り引きされ、さらにクーポン料が充当されるのでこの際に利用しておこう、という観光客が増えたようです。


                  写真10

今年は4年振りに第39回目の「同期の桜を歌う会」が開催されました。2019年を最後として、コロナ感染防止のため開催が中止されていました。全員が大声で合唱するのですから、ウイルスが含まれた飛沫が飛散し、屋外だからといっても感染するリスクは極めて高いのです。開催を中止するのは当然のことでしょう。

しかし、この種の催物は一度中止すると再度復活させるのは難しいようです。このため、小規模であっても開催を続けていたようです。2020年、2021年には靖国会館の中で少人数の関係者だけが集まって開催していました。なお、会場にはマニアが必ず参加し、歌唱の全てを録画しています。録画はユーチューブにアップされてますので、ご参照してみて下さい。


                  写真11


                  写真12

4年振りの歌う会の開催ということで、開催が周知されなかったのか、高齢者が参加するのを見合わせたのか不明ですが、今回の参加者はざっと見て2~3百名といったところでしょうか。写真12は13年前の2010年に撮影したもので、参加者はざっと2千人はいたでしょうか。
 
戦後77年にもなり、最後の現役召集兵であっても98歳となっています。戦争体験者が減っていく現状からすれば、この会も参加者が自然と減っていくでしょう。20年後はどうなっているか、といえば多分開催されなくなるでしょう。時間の経過と共に戦中派も亡くなり、軍歌に関心を持った人が無くなるからです。歴史の経過はそのようなものなのです。何時かは消滅し、次の歴史が始まるのです。


                  写真13

                  写真14

この日、歌う会の会場には、セーラー服を着て「大日本國国防婦人會」のたすきを掛けた人を見かけました。若い女性なのに感心な人だな、と思って正面から撮影したのが写真14です。意外や意外、といったところですが、最近のLGBT(性的マイノリティ)の対応があり、不可思議なことではありません。また、政府も多様化社会の実現を目指していると宣言しています。政府政策の実現のため、この人は地道な広報活動をされて見えるのでは、と推測しました。