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「令和5年 春の新宿御苑」(日比恆明)

【特別リポート】
「令和5年 春の新宿御苑」

日比恆明氏(弁理士)

 

 私は、日曜日になると新宿御苑にでかけることが習慣となりました。大雨でなければ、ほぼ毎週のように入苑しています。晴れた日であれば芝生の上で昼寝をし、小雨であれば東屋で休憩します。苑内にいると、多くの木々を吹き抜けてきた柔らかな風が身体を包み、何となく気持ちが落ちつきます。緑の中で深呼吸すると体調が良くなるような気がします。無機質なコンクリートの箱での生活は自然の摂理とは逆であり、自然に囲まれた生活が人間本来の環境のようです。ニューヨークの中心にもセントラルパークがあります。新宿御苑は58.3ヘクタールであるのに対し、セントラルパークは341ヘクタールと規模が違うのですが、都会の生活に潤いを持たせる目的は同じようです。 

 

                  写真1

 

 今年も春が巡ってきて暖かくなったので、新宿御苑は花見客で賑わっていました。芝生の上には家族連れ、友人達のグループがそれぞれシートを敷いて食事を楽しんでいました。家族連れといっても小学生低学年までであり、それ以上の年齢になると自我が目覚めるためか参加しないようです。あちこちでママ友のグループがお弁当を広げていました。苑内では飲酒禁止のため、男同士で酒盛りをすることもなく、極めて健全な世界です。ただ、飲酒した場合にどのような対応をされるのか不明です。強制的に退去させられるのか、酒類を取り上げられるのか、実際に見たことがありません。だれか試しに飲酒して、警備員がどのような対処をされるか確認してみて下さい。

 

                【桜の散りぎわ】

 

                  写真2

 

                  写真3

 

 新宿御苑には桜木が植えられて花見ができるのですが、余り有名ではありません。都内の桜の名所のベストテンにも入っていません。その理由として、苑内には約千本の桜木が植えられているのですが、まとまった場所に植えられていないので見栄えが悪いことです。上野公園などでは桜木が一か所に集中していて、桜花が満開となるとあたり一面が艶やになります。広い新宿御苑では、園内のあちこちに桜木が散らばっているため派手さはありません。

 また、新宿御苑には植物園のような目的があるため、ソメイヨシノだけではなく多種類の桜木を植えてあります。ソメイヨシノでは淡いピンク色の桜花を一週間ほどだけ愛でることができますが、新宿御苑では緋色から白色まで各色彩の桜花を楽しむことができます。園内には約65種類の桜木が植えられているようです。桜木の全種類が百種類程度であることからすれば、殆どの種類を鑑賞できることになります。

 これだけ多種類の桜木が植えられていることから、早咲きから遅咲きまでの桜花を楽しむことができ、3月上旬から4月下旬までの長期間に花見ができるのです。すると、先週満開であった桜花が次の週には散ってしまっている、という悲劇もあります。写真2は3月19日に満開であった「陽光」という品種です。写真3は一週間後の3月26日で、散った花びらが樹木の根元を赤色に染めていました。

 

 

                  写真4

 

                  写真5

 

 写真4は4月9日に撮影した「関山(せんざん)」という品種で、緋色の大きな花弁が特徴です。やはり、一週間後には散っていました。

 

                  写真6

 

                  写真7

 

                 【春の天気】

 春になったので外出するには丁度良い気温なのですが、春は行楽にはそれ程親切な天気ではなさそうです。3月19日から4月16日の間、毎日曜日に新宿御苑に出掛けたのですが、雲一つない真っ青な空になったのは一日しかありませんでした。それ以外の日は空全体に薄い雲が広がった曇り日や小雨の日ばかりでした。気象庁が発表した春の天気の記録を見ると「晴れ」という表示された日が多いのですが、これは「青空の快晴」という意味ではないようです。単に雨が降らなかった、というだけのことで心地よい日であったという証明ではなさそうです。

 写真6と7は、同じ4月9日の園内を撮影したものです。写真6は13時9分の撮影で、柔らかな陽光がありました。しかし、写真7はその1時間後の14時8分に撮影したもので、雷雨を伴った豪雨となりました。春の天気は変わり身が早い、というのは本当のことです。

 

                   写真8

 

                   写真9

                   写真10

 

                   写真11

 

              【入園には予約が必要】 

 花見のシーズンになると新宿御苑は無数の行楽客で賑わいます。写真8は入苑するために待機している行列です。今年も入場制限をしていて、予約しなければ入苑することができませでした。予約の手順としては、ネットやスマホで入苑日と時刻を入力して設定します。入苑可能の確認が取れたならスマホにQRコードの入苑許可番号が返信されます。指定した時刻に、入口の読取器にスマホをかざせばゲートが開くことになります。

 予約は当日でも可能で、入口前には入苑予約のアプリに接続するためのQRコードが配置されていました。写真10は、ここでQRコードを読み取り、予約していた人達です。予約制度を知らずに花見のために来苑した外人観光客は、予約の入力で四苦八苦されていました。どうも、新宿御苑は海外の観光客のためのガイドブックに紹介されているようで、花見の季節には多数の外人を見かけました。特に、3月26日の日曜日は一日中雨が振った悪天候でしたが、苑内の来場者の四分の一程度は外国観光客でした。日本人であれば、雨の日にわざわざ花見に出掛ける人はいないでしょう。しかし、外国からの観光客は来日する前から日程を決めてあり、目的地を変更することはしないでしょう。雨が降ろうが風が吹こうが天気には関係なしに、花見のために新宿御苑にやってくるのです。

 

                   写真12

 

                   写真13

 

                   写真14

                   写真15

                   写真16

 

 

                【服装について】 

 新宿御苑に入苑するためには、服装については特に規定や制限はありません。卑猥な服装でなければどんな恰好でも構わないようです。不潔な服装であっても構わないはずですが、入園料を徴収するためホームレスは入苑しません。このため、新宿西口公園のように不潔な服装の入苑者を見かけることは絶対にありません。

 公園で散歩する非日常の楽しみのため、色々と服装を楽しまれる方も多いようです。非日常の服装で一番多いのは和服ですが、和服で入苑される方の殆どが外国観光客です。写真12では、顔つきからした中国、台湾からの訪日客かと思ったら、中国系のインドネシア人でした。写真13では家族で和服を召してみえるので、粋な一家かと思ったら、香港からの観光客でした。なかなか渋い趣味を持った香港人かと感心しました。どうも、新宿御苑の近くには貸し衣装店があるようで、そこで着替えてくるようです。

 写真14は、日本人のオバーサンズで、プロの写真家を雇って記念撮影をされてみえました。皆様、渋い柄ですが高価そうなお召し物を着られていました。この日は茶会があり、その帰りのようでした。

 写真15はロリータファッションと呼ばれる趣味の服装で、仲間と一緒に来苑されてました。この趣味は十代の少女の恰好を再現し、ロマンスを感じようというもののようです。街を歩いていると時々見かけるのでそれ程珍しいものではなさそうです。しかし、ロリータの趣味には高校生などの若者は少ないようです。服装が高価であるため、それなりの年齢でなければ楽しめないようです。この日に出会った方々も目尻などから推察すると、三十路には達しているのでは、と思われました。

 写真16は、韓服を着た女性です。日本語が話せないことからすると、観光客なのか来日して間もない人なのかは不明です。この韓服が本物の宮廷の女官のデザインなのか、女官をイメージして最近になってデザインしたものかは不明です。何れにせよ、この服装は始めて観察しました。