髭講師の研修日誌(110)
心の磨きが、活躍ぶりを豊かにする
澤田良雄((株)HOPE代表取締役)
◆当社の人財としての成長は技術力と心磨きです
「企業は人なり」その人財条件は、「専門力と心の磨きなり」昨今の研修現場から確認したキーワードです。その研修現場例が、先日建設器具のトップメーカS社の新人フォローアップ研修を今年も担当しました。
2日間の研修は、H社長からの講話でスタートします。入社後半年経った新人への訴求は「当社は人材で無く、人財であり、ひとりひとりは宝です。
人財としての成長は、技術力そして人間性(心)の磨きです。大谷選手のゴミ拾いの評判も周知のとおりです。当社の社名のサンコー(三幸)は顧客様、社員、そして当社発展の3つの幸福を心して60周年を経ました。この間時代の激しい変化に社員一丸となって成長してきました。
現在も変化の流れも速い環境で、当社も中長期計画を発表しています。各自も変化に対応しての成長をしてください。それには、当社が社会に役立つ企業として、製品を造り出す3ヶ月かかる、この過程で各自は役割を認識し,目標を掲げて,PDCAのサイクルを回し,個人の成長をさせていくことです。
ここでの心の磨きは、挑戦する気概です。例えば、小さな失敗は成功への道として捉え、試しに取り組む,この即行の心意気です…」
と話されました。
受講者のうなづき,メモの反応も良く、この提起内容を受講者と確認し、この内容を軸に研修を推進しました。
◆大谷選手の素晴らしさに学ぶ
まず確認したのが、大谷選手への着目です。大谷選手の凄さは、野球選手として実績です(専門・技術力)と人間性(心磨きによる言動)の良さの両立です。
そこで、紹介されている大谷選手が花巻東高校1年時に立てたマンダラ法の目標達成表を確認しました。そのド真ん中には「ドラ1 8球団」(ドラフト会議で一番氏名を8球団から受ける)とされています。その実現に向けて遠心する具体的目標は、「コントロール」、「きれ」、「スピード160km/h」、「変化球」の4項目に加えて、「運」「人間性」「メンンタル」「体作り」の4項目が上げられています。前半の四項目はまさに、技術の錬磨ですが、後半の4項目は健全な心身づくりと、併せて人間性に着目されていることが目をひきます。
更に深めてみると、「運」では「あいさつ」「ゴミ拾い」「部屋掃除」「審判さんへの態度」「本を読む」「応援される人間になる」「プラス思考」「道具を大切に使う」、そして「人間性」では、「愛される人間」「感性」「思いやり」「礼儀」「継続力」「感謝」「計画性」「信頼される人間」との実践目標となっています。
記してから既に18余年の現在。この実践目標の現実が多くの人に評価され、話題になっています。まさに大谷選手は、心に期した想いの実現に向けて着実に、行動化し、そして習慣化し、技術力と人格形成されてきたのです。実に見事です。勿論、学校、家族、指導者、関わる多くの人からの指導と感化、薫陶があったことでしょう。
◆仕事上手に心の通わせ上手のタイプが望ましい
ここから、受講者との確認は、今後の活躍に向けて、次の組み合わせの最適タイプの共有化です。それは,次の4タイプからの選択です。
①仕事上手に心の通わせ上手 ②仕事下手に心の通わせ上手
③仕事上手に心の通わせ下手 ④仕事下手に心の通わせ下手
共有したタイプは勿論、①のタイプです。それは入社時の宣言で「早く一人前の社員になる」との発表です。一人前とは仕事ができ、対人関係の豊かさを持ちうる人が条件です。現実は、入社早々,この両立は難しい。だからこそ,②のタイプとして育てがいのある新人として,先輩からの尽力により、仕事上手の信用を得て行くのです。
それでは、心の通わせ上手の好感人間味とはどんな条件であろうか。受講者間での半年間の活躍を振り返り、嬉しかった事実、辛かった事実、努力した具体的実践を浮き彫りにして掴み出したのが次の11です。
①新人らしい、素直な学びで、正しい仕事を成し遂げ、信用を得る人
②実践する事で、事実を基に考えを構築できる人
③挨拶人間にとして,自ら人に心を通わせる人
④今出来ることの最高実践を重ねる人
⑤仕事は選べない、ならば適性は与えられた仕事の楽しみを創る人
⑥人は選べない、ならば苦手な人こそ、こちらから心を開く人
⑦解らなかったら訊く、困ったら相談する、その素直さが不安無し、ミス無しの極意とする人
⑧自ら調べる、学ぶこの努力が当社の製品を知り,お客様に対応できる人
⑨人が好きで、関わる人に喜びをもたらすことを自らの喜びとする人
⑩自身の持つ強みで、人のお役に立てることを提案,実践できる人
⑪所属サッカーチームの「限界突破」のスローガンに沿って新たなことに挑戦する人
来春には先輩社員となります。この11の実践継続は、後輩から憧れの先輩社員として存在感ある成長です。
改めて、S社の人財の条件について、T人事GLから講義いただきました。その柱は次の三点です。
創造=新たな価値を提案できる人財
挑戦=失敗を恐れず果敢に行動する人財
共生=多様な価値観を尊重し、共に高め合える人財
従って、以後、いきなり課題を提起しての演習では、各自のプレゼンテーションの機会を設け、内容の作成(創造)、姿勢、表情、振る舞い、言葉遣い、語調などビジネスマナーの確認をしました。ここに、心磨きの試しの挑戦として支援し、プレゼンテーション後は、質疑応答、コメントを相互に施し合い、共生の要素も生かしました。そして、最終講では、この人財になるための活躍指針をワークショップし、発表、人事担当部門からの総括として、次の助言・エールが贈られました。
□受講者皆の共通することは素直。だからこそ自分を表現することを実践する
□沢山失敗する。これがスキルを高める
□自分のペースで努力する。上司・先輩・そして私たちが助けてくれると信じる
□社長の示す「心を磨く」を是非心して成長する
□アドバイスは素直に受ける。
□積極的に自分から成すべきことを獲りに行くこと
□苦手なことを先にする。それには,自分の考えを示すこと
を示唆され、現在、各自は来春までの実践目標を設定して、配属先指導者の支援を加えての取り組みです。
◆幼稚園教諭としてのビジネスマナー研修での心の磨き
次に、先日T市の私立幼稚園協会の研修で「幼稚園教諭としてのビジネスマナー」のテーマでの研修です。既に各園で誇りある活躍をされている受講者です。従って、さらなる、関わる人との良き関係を深め、より楽しく、感謝されるうえでの言動マナーを確認の機会としました。
筆者の持論は「心は形を美しくし、形は心を磨きます」です。ですから、振る舞い、言葉遣い,身だしなみ、礼、表情、食作用、席次…など細かい言動は、その人の持つ人間味、心の持ちようによって表現されます。従って、接客中心の業務でなく、常に動きの活躍するうえでの言動は、時と,場所と立場、目的に応じて瞬間的対応が現実です。
例えば、挨拶でも、きちっとした立ち姿で、「おはようございます」と言葉をかけ、つぎに礼をする分離礼の方法は難しい。目線をかけ,おはようございます。と行き交いながら早足で交わすことも現実です。
そこで、確認したのは現職での「皆さんのビジネスマナーの基は、「園児の喜ぶ笑顔が大好き」との職業観が自然になされている現実です。ですから、関わる人(園児・保護者・職場の仲間)との好感関係を創ることです。従って,日々の活躍では、楽しい・嬉しい・信用・信頼・安心の心を抱いていただいています。そこに、好感持てる言動があるのです。
◆園児の教育は,先生と保護者のパートナーシップの共育です。
確認して観よう,マナーとは、相手・集団のへの不快感を起こさせない、場の良き雰囲気を壊さないと意味味づけられます。ですから、不快な印象はマナーを知らない人、エチケットわきまえない人と、こんな評価言葉になります。
現場では、教育者として園児に新たなことを教えます。その極意は「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやる」の真似させる指導法です。その教えを園児が喜び、家庭でやって見せます。ご家族がすかさず「上手、この事までできたのね」と褒め、その動作、言葉使いを習慣化させる。これが育みです。ですから,先生が教え、家族が育むここに教育が成り立つのです。肝心なことは,家族が先生に好感を持ち、安心して委ねることができている信頼感です。
その信頼は,時としてお会いする,目にする時の言動の有り様です。園児を共育するパートーシップがここにあります。従って、保護者への言動も、「ありがとうございます」「よろしくお願いします」「おかげさまです」との心持ちでの人間味に満ちているから、不快感を抱かせる言動は成されません。
◆おもてなしの心での施しは感謝を生みます
好感関係をから感謝される言動は、おもてなしの心での実践です。おもてなしとは、関わる人が困っていっていることを察して,自らできる知恵と言動実践です。
東北の和菓子店のS店では、服装を観て、新幹線でお帰りになるお客様には、お買い上げ頂いたお品の手提げ袋は二重にしてお渡しします。遠方なのでもし袋が敗れたらとの不安心を汲み取り成すサービスです。当然お客様の表情がほっとし「ありがとうございます」との言葉が寄せられます。気が利く人、人の気持ちをくみ取れる人、見事な専門力を施せる人、こんな評価は、その人の、人間味、心の豊かさを認めての言葉です。
園での関わる人への、気配り、目配り、心配りの先手の施しも同様です。それは、今春実施したT市内T幼稚園での「園児の喜ぶ笑顔づくり」の研修で、職員から出された実践例でもあるからです。
◆一秒の美学、ひと言の美学の実践
具体的実践策の一端に触れてみれば、実法として一秒の美学と称しての実践があります。例えば、手をかざしてどうぞと方向、場所を示す。ドアーをでるとき、一秒止まって隣の人を先に促す、書類を渡すとき、相手がすぐ読めるよう方向を変える一秒です。お辞儀をするとき,一秒ためる。電話を切るとき一秒待って受話器を置く、室内への入室、退出するとき一秒のお辞儀、身だしなみのチエック…があります。
そして,ひと言の美学としては、
「ありがとうございます」「お願いします」「お疲れ様でした」「はい」「私がいたします」「おかげさまで」…このような言葉は、相手の心をくんで、こちらから心を届ける言葉です。
そして、物事を頼むときの言葉には クッション言葉のひと言が生きます。
「恐れ入りますが」「すみませんが」「申し訳ありませんが」「ご面倒掛けますが」などがあります。この心は、相手の現状を踏まえて,敢えてお願いするとの配慮です。
時には 反論の機会があります,このときには「おっしゃることはわかりました。しかしこのような考えもご理解ください」、「お言葉を返すようですが」が活用できます。
そして、言葉遣いで課題とされるのが敬語です。 敬語には丁寧語、尊敬語、謙譲語がありますが、その心は調和語です。なぜなら、相手との年齢・立場、お客様との関係で 、相手の求める心境は、「私はお客様ですよ」「私は上役ですよ」「君は年下だね」との心持ちは当然もたれます。ですから、敬いの心を持っての言葉がけが欲しいのです。
従って、この心に応えて、尊敬の念のこもった丁寧な言葉であれば、相手は「気に掛けてくれているな」と不快感を持ちません。ここに相手の欲する心情に調和できるのです。従って、言葉づかいがどうのこうのという批判はありません。よく耳にする「最近の若い人は言葉遣いを知らない」とのこぼしは、敬語が正しく使いこなせていないとの指摘でなく、「立場をわきまえない」「わたしを軽く見ている」この心情が気にくわないのです。勿論敬語が最適な調和語になります。
しかし、現実にどれだけ正しく敬語を活用できているのでしょうか。今回の研修でもその確認を試みましたが受講者全員が正しく答えたわけではありません。ですから、筆者は、人間性、こころ磨きでの学びでは、敬意を持ちうる人間性に着目しているのです。
勿論、園児に言葉遣いを正しく教え込むこの導きには、きちんと学ぶ事はいうまでもありません。
研修終了後、寄ってきてのお礼の笑顔の交わ合いは心地良き時でした。
ロサンゼルスの優勝パレードは大谷選手の万感を込めた笑顔、笑顔、そして,語りかける様子に,手を振っての喜びの伝えでした。さて、そのとなりには誰、「真美子夫人ですよ」それに…「デコピンちゃん」です。デコピンちゃんの凄さは、始球式でした。ブルペンからボールを口にくわえて大谷選手に届けます。まっすぐ走り、その走り方も実に美しかったです。勿論 何回も何回も練習したとのことですがよくぞなついて、ここまでやれたと絶賛の拍手を送りました。
大谷選手の今シーズンの活躍は見事な実績を残しました。それは,チームを変え,住まいを変え、結婚との喜びを創りあげ、愛犬を交えた,家族構成…そのささえ合いの素晴らしさに拍手し、婦人の人柄の評価の高さ。それは、身だしなみ、仕草、言葉にマナーをわきまえた言動への賞讃です。
視点を変えてみれば、日本文化の国際的評価の一端でもあります。S社の発展も今や3カ国に拠点を持つ国際企業です。園児共育も外国人家族も増えています。だからこそ、技術力に加えて日本文化の持つ人間力が肝心と説いているのです。大谷選手の活躍ぶり、両研修を通して、改めて日本文化の素晴らしさを確認できた機会でした。
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◇澤田 良雄
東京生まれ。中央大学卒業。現セイコーインスツルメンツ㈱に勤務。製造ライン、社員教育、総務マネージャーを歴任後、㈱井浦コミュニケーションセンター専 務理事を経て、ビジネス教育の(株)HOPEを設立。現在、企業教育コンサルタントとして、各企業、官公庁、行政、団体で社員研修講師として広く活躍。指導 キャリアを活かした独自開発の実践的、具体的、効果重視の講義、トレーニング法にて、情熱あふれる温かみと厳しさを兼ね備えた指導力が定評。
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