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2024年、渋谷ハロウィンに行ってきました。(日比恆明)

【特別リポート】

2024年、渋谷ハロウィンに行ってきました。

日比恆明(弁理士)

 今年も10月31日が巡ってきました。田舎では稲作の収穫が終わり、村の鎮守では秋祭りを開催する時期です。東京は地方からの出身者が集まってできた都市のため、地元に住んでいる人達が集まって村祭や秋祭りなどを行う風習はありません。渋谷で毎年のように「ハロウィン」に集まるのは秋祭りの代わりなのかもしれません。

しかし、馬鹿騒ぎするハロウィンには批判があり、渋谷、新宿の盛り場には来ないで下さい、と毎年叫ばれています。こうなったら、23区にある神社では「東京秋祭り」を開催してみたらどうでしょうか。もっとも、11月になると都内各地の神社では酉の市が開催されるので、こちらが東京の秋祭りなのかもしれません。

                   写真1

 ハロウィンのために仮装した人が集まると、暴動が発生したり、道路にゴミが散乱したりする迷惑行為が目立つことから、渋谷区では毎年のように「ハロウィンのために渋谷に来ないで下さい」と言う声明を出しています。また、2019年には路上飲酒を禁止する条例を渋谷区が公布しました。街の中で酒を飲むと酔っぱらいが増え、騒ぎを起こすからです。

しかし、この時の条例では、飲酒禁止の期間はハロウィンと年始年末の短いものであり、禁止区域も表通りに限定されていました。これではザル法のようなもので、相変わらず路上飲酒は続いていました。特に来日外国人による路上飲酒が目立っていました。日本人の若者による飲酒も多いのですが、外国人は外観から判別できるので特に目立つのかもしれません。外国人の飲酒が多いのは社会習慣の相違によるものと思われます。

アメリカでは路上飲酒は違法であり(州によって違うかもしれないが)、逮捕される可能性があります。ニューヨークの街頭では、ホームレスが酒瓶を紙袋に入れて隠しながら飲酒している姿を良く見かけました。日本ではそんな規制が無いため、旅行で気分が大きくなった来日外国人は路上での飲酒を楽しんでいるのではないかと推測されます。
 
今年の10月、渋谷区では路上飲酒規制条例を改正し、飲酒禁止の期間を365日通年とし、禁止区域を山手線と国道246号で囲まれた北西部の全域(飲み屋街のほぼ全部)としました。これで路上での飲酒は禁止されたのですが、罰則規定がありません。飲酒者に厳罰を処するべきではないかと思うのですが、その場で罰金を徴集しようとしても酔っぱらいが応じるかどうか問題であり、逮捕したとすれば警察の留置所はすぐに満杯となってしまうでしょう。いかにして路上飲酒を禁止するかの問題が山積みのようです。
 
今年の渋谷区のスローガンは「渋谷はハロウィーンをお休みします」といもので、この標語はあちこちに掲げられていました。しかしながら、この標語とは無関係に渋谷には続々と人々が集まって来ました。「渋谷まで行けば何かがある」、という心理があるからでしょう。

                   写真2

                   写真3

今年のハロウィンではびっくりするほど人出が少ないのです。写真2は渋谷109から道玄坂に向けて撮影したもので、写真3はほぼ同じ時刻に同じ方向を2018年に撮影したものです。過去の経験からすると、2018年のハロウィンが一番来街者が多かったのではないかと推測されます。この年には、若者達が軽四輪車を転倒させた暴動事件があり、これ以降は警備が厳しくなってきました。

次いで、2020年にはコロナウイルスの感染拡大が発生し、自発的に外出を控えるようになりました。さらに、2022年になると韓国の梨泰院(イテウォン)で多数の来街者が転倒して156人が死亡する事件が発生し、さらに警備が厳しくなっていきました。
 
こうしたことから、渋谷のハロウィンでの来街者は年々減少していったようです。私の感覚からすると、今年は昨年より30%は減少したのではないかと推測されました。ハロウィンでの来街者の人数がどれだけ変化していったかを調べたのですが、正確な統計は皆無でした。警察でも集計していないようです。携帯電話会社は、スマホの位置情報により滞留している人数を把握しているようですが、これも正確ではなさそうです。
 
以前は学校帰りの女子高校生が散策していのを見かけたのですが、最近は制服を来た女子高校生の姿を見かけることは無くなりました。学校側から注意があり、ハロウィン中に渋谷で見つけられたら休学の処分にされるのかもしれません。ただ、私服で歩いていたら分からないかもしれません。

 
今年は外国人の姿が目立って多いのです。もしかすると来街者の四分の一は外国人ではないかと思われるくらいでした。日本人には「渋谷に来るな」というアナウンスが刷り込まれているのですが、観光外国人はそれとはお構いなしにやって来るようです。

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今年も各街路の四つ辻には監視台が設置され、歩行者を規制していました。どういう訳か不明ですが「右側を歩行して下さい」と叫んでいました。交通規則では左側通行なのですが、なぜか渋谷では右側を強制するので理解不能でした。警察官の配備は昨年と同じ人数と思われ、来街者が減少しているので制服警官の比率が高くなり、目立っていました。

                  写真6

ハロウィンは仮装して参加する、というのが原則のため、今年も目立った仮装の人を見かけました。写真5は全身をLEDライトを付けて仮装した人で、暗がりでは目立っていました。単純にライトを点灯するだけではなく、コントローラーで発色を変えたり、点滅回数を変えたりすることができ、工夫していました。写真6の人物は武士に扮しているのですが、着物や笠は自作で、和服なのか漢服なのか分かりません。出来合いの和服ではなく、オリジナルのデザインであることを強調したかったのでしょう。

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しかし、このような仮装をした人達は稀であり、殆どの来街者は仮装をしていませんでした。以前はハロウィン用の仮装衣料をディスカウントショップで購入し、一夜限りの仮装をしていた人達を見かけたのですが、今年はほぼ見かけなくなりました。ふだん着に血糊の化粧をした人達は結構見かけたのですが、それも人数は少なかったようです。

その理由としては、安易な仮装でハロウィンに参加することに飽きてきたからではないかと思われます。既製のハロウィン用仮装衣料ではそれほど目立つものではなく、思ったほど楽しくなかった、という祭に対する疲れがでてきたのではないでしょうか。

盛り上がらないと言えば盛り上がらないことですが、自分が街頭で主役にはなれないと感じてきたのでしょう。何れにせよ、今年からはハロウィンに対する意識が変わってきたようです。

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日本人で仮装している人達は少なくなったのですが、中国人による仮装者は目立って多くなりました。ニュースで報道されているように、中国ではハロウィンの活動は規制(禁止?)されていて、仮装して街を歩くと拘束されるようです。仮装により政府批判をすると社会秩序が乱される、という理由のようです。しかし、日本では仮装に規制が無いため、中国人はおおっぴに仮装しているのではないかと推測されます。写真7、8の中国人は日本語は話せないことから、ハロウィンのために来日したのかもしれません。写真9の中国人は顔の表情を一瞬で変化させる「変面」という特殊な演技をしていましたので、もしかするとプロかもしれません。

                   写真10

この日に見かけたロングドレスの20代半ばと思われる女性です。髪は奇麗に金髪に染めてあり、化粧も決まっていました。白雪姫のようなロングドレスはハロウィン用に市販されている安物ではなく、それなりの値段がしたものでしょう。一夜のために相当の費用を払ったと思われます。彼女の容貌、スタイルは共にばっちりであり、この恰好で街を歩くと極めて目立ち、誰もが振り返っていました。渋谷ハロウィンの主役になっていて、彼女にとっては最高の一夜になったはずです。若さと美貌のある彼女の青春の思い出として、生涯残るはずです。ただ、その後の彼女の人生が幸せになるか成功するか、とは別なのですが。

                  写真11

道玄坂では、台車にハロウィンに付き物の小道具(発光ランタン、カボチャの玩具)など満載して行商する若者を見かけました。長年渋谷を歩いているのですが、ハロウィンの期間に行商する人を見かけたのは初めてでした。

                   写真12

写真12は仮装した2人の女性を写したものですが、こちらはガールズバーの客引きでした。考えてみたら彼女達は年中仮装しているようなもので、平日ならば目立つのですが、ハロウィンの日になると他の仮装者に埋没してしまったようです。

                  写真13

渋谷駅前で、魔法使いの帽子を被ってチラシを配っている女性を見かけました。チラシには、或る新興宗教の勧誘の内容が印刷されていました。普段の日であれば宗教勧誘のチラシなどは誰も受け取りません。しかし、ハロウィンの日に仮装した人がチラシを配っていると、飲み屋かイベントの案内かと錯覚して受け取ってしまう人が多いのではないでしょうか。こうなるとハロウィンの日は何でも有りで、少しアイデアを捻ればどんな商売も上手くいくことになりそうです。


                  写真14

渋谷区役所では街路の清掃等のために30、31日に延べ130年の職員を派遣していました。毎年のことなので、清掃道具、ポスター、チリ取りなどはセットで準備されているようで、職員も手慣れたものでした。区役所ばかりでなく、地元の商店街振興組合、企業などからも助っ人が出ていたようです。

また、翌日の11月1日早朝にはボランティアによる清掃活動があり、街路はきれいに掃除されました。しかし、裏通りには煙草の吸殻やペットボトルが捨てられていましたが、表通りはゴミは少なく、以前に比べると思っていたよりもきれいでした。
 
なお、ハロウィンの期間中に渋谷区が支払った対策費(安全対策、ゴミ対策、ポスターなど)は7500万円であったとのこと。区外から参加した人達が勝手に騒ぐお祭に区税が投入われるのはどうかと思われます。このため、富士山の入山料徴集と同じように、センター街の入口でハロウィン入場料を徴集してみたらどうかでしょうか。

                  写真15

群衆が狭い地域に集中するのですから、何らかの事件が発生するのは当然のことです。この日も若い男が制服警官に拘束されていました。スマホを取り上げられて、内容を確認されていたので盗撮の疑いで拘束されたのでしょう。警察はこの日の事件件数を発表していないのですが、かなり多くの事件が発生していたのではないかと推測されます。強盗は無いでしょうが(もしあれば、近くの人達が取り押さえるため)、スリや痴漢は多かったのではないでしょうか。

ハロウィンは危険のため近寄らないように、という警告の意味で警察は全事件の概要を発表しても良いのでは。