原理原則7   3つの観点から  事業承継に備えよ

100年、200年企業を実現するための 欧米流ファミリービジネスマネジメントのススメ 大井 大輔 [ 特集カテゴリー ]

原理原則7  3つの観点から 事業承継に備えよ [ 最終回 ]

「100年、200年企業を実現するための欧米流ファミリービジネスマネジメントのススメ」というテーマで2019年3月から連載を始めて、今回で丸2年となります。みなさまにもファミリービジネスの素晴らしさや強み、逆にその脆さについてもご理解頂いたのではないかと思います。最終回として、【原理原則7】スリーサークルモデルの観点の重要性に触れたいと思います。

 

ファミリービジネスで最も大切なことはスリーサークルモデルの充実化

 

スリーサークルモデルとは、ファミリービジネスを1つのシステムと見立てたときに、経営(ビジネス)、所有(オーナーシップ)、家族(ファミリー)の3つのサブシステムから構成されているという考え方です。つまり、それぞれのサブシステムが正しく機能していなければ、ファミリービジネスはうまく機能しないということです。例えば、経営や所有がうまくいっても、家族の関係性に問題があれば、ファミリービジネスに支障が生じるということです。一見、当たり前のように思えますが、これまでの経験で言えば、案外、ファミリービジネスのオーナーや後継者、また税理士といった支援者はこのような視点に欠けているように思います。例えば、創業者は経営に傾斜して家族をないがしろにする、後継者は家族を大切にするが経営をないがしろにする、税理士は所有の面にしか関心がないといった具合です。

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原理原則6  イノベーションを志向せよ

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原理原則6 イノベーションを志向せよ [ 第23回 ]

これまでファミリービジネスの永続性を実現するために、会社の存在意義である経営理念を示す必要性や、従業員が主体的に活動できる仕組みづくりの必要性などについて説明してきました。【原理原則6】イノベーションを志向せよ  【原理原則7】経営、所有(株式)、家族の観点から事業承継に備えよ については、ファミリービジネスがある段階(時期)になったら必要な取組みとして意識すればよいと思います。

 

 

ファミリービジネスがイノベーションを志向しなければならない理由

 

日本は老舗大国を言われています。創業100年を超える企業は、実に3万社(帝国データバンク(2019)によると、33259社)を超えています。さらに、創業200年以上となると、約4千社(後藤俊夫(2012)によると、3937社)となり、2位ドイツ1563社を大きく超えています。

このような長い社歴を持つ老舗企業は、創業時から同じような事業を展開しているかというと必ずしもそうではありません。先に「経営ビジョン」で説明した事業領域をしなやかに時代の変化に合わせています。そうしなければ、残念ながら競争に勝ち残る、つまり、企業として存続できないのです。例えば、トヨタ自動車の歴史を見てみますと、創業者・豊田佐吉氏が自動織機を発明し、トヨタ自動車の前身となる豊田子規織物株式会社を創業します。その息子・喜一郎氏がトヨタ自動車を創業した2代目です。その息子・章一郎氏はトヨタ自動車のものづくりの技術を活かして、住宅事業を立ち上げています。トヨタ自動車の豊田章男現社長は、章一郎氏の息子となりますが、従来の自動車のものづくりから、エコカー、IT分野や街づくりと大きく事業領域を広げてきました。このように各世代において、イノベーションを常に志向し、それを実現しているのです。

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経営活動の成果を従業員にフィードバックせよ

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経営活動の成果を従業員にフィードバックせよ [ 第22回 ]

これまでファミリービジネスの永続性を実現するために、経営ビジョンの重要性や中期経営計画の必要性について説明してきました。今月は、経営計画をどのように実現するかについて説明します。

 

 

中期経営計画を実現するための行動管理

 

経営ビジョンを実現するために、基本方針を設定し、そのための課題を洗い出し、その課題を解決するための活動=戦略テーマを設定し、その実行が大切であることを説明してきました。これはチーム型経営(原理原則2)で説明しました予算と実績値との差異を解消する活動とも一緒です。

目標数字や結果、方針だけを眺めていても目標を実現したり、課題が解消したりはしません。具体的な活動(戦略テーマ)に落とし込み、日常の活動に反映していく必要があります。

具体的には定めた戦略テーマに対して、第三者が見てもわかるように、誰が、いつまでにどのような水準(定量・定性)を目指すのかを明確にして、月次単位での行動計画に落とし込んでいく必要があります。

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原理原則4 “経営ビジョン”を日常の活動に落とし込め

100年、200年企業を実現するための 欧米流ファミリービジネスマネジメントのススメ 大井 大輔 [ 特集カテゴリー ]

原理原則4 “経営ビジョン”を日常の活動に落とし込め [ 第21回 ]

先月は、経営ビジョン(3~5年後の具体的な会社のあるべき姿)を提示する重要性について説明いたしました。今月は、その目標をどのようにすれば実現できるのかについて説明いたします。

 

 

経営ビジョンを実現するための中期経営計画

 

先月、コダックと富士フイルムの比較を通じて、事業領域を見直す重要性を説明しました。しかし、事業領域の見直しについて、なかなか簡単には実行できないのではないでしょうか。そのためにはまず、経営ビジョンで事業領域を見直すという宣言を行い、その具体的な計画について、中期経営計画で検討します。多くのファミリービジネスにおいては、中期経営計画どころか、年度計画も策定されていないと思いますが、中期経営計画の策定は非常に大切なことです。

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原理原則3 会社の中長期のあるべき姿  “経営ビジョン”を従業員に示せ

100年、200年企業を実現するための 欧米流ファミリービジネスマネジメントのススメ 大井 大輔 [ 特集カテゴリー ]

原理原則3 会社の中長期のあるべき姿 “経営ビジョン”を従業員に示せ [ 第20回 ]

原理原則1において、経営者の志(思い)として、「経営理念」を提示する重要性を説明しましたが、今回の原理原則3で掲げた「経営ビジョン」との違いについて説明します。

 

 

「経営ビジョン」には有効期限がある?

 

「経営理念」と「経営ビジョン」の大きな違いは、一言でいえば、「経営理念」は普遍的な変わらないもの、一方、「経営ビジョン」は3~5年程度の期間で見直すものです。

それでは、なぜ、「経営ビジョン」には有効期限があるのでしょうか。そのためにも、そもそも「経営ビジョン」で何を検討するのかについて説明します(図1)。「経営ビジョン」では、ある時点(一般的に3~5年後)における会社のあるべき姿を具体的に表します。例えば、どのくらいの企業規模にしたいのか、どこの事業領域で経営活動を推進したいのか、どのような組織風土を目指すのかです。これまで多くの企業の経営ビジョンを調べるなかで、優れた経営ビジョンの要件として、次に整理しました。

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原理原則2   従業員の主体性を発揮できるチーム型経営を整備せよ

100年、200年企業を実現するための 欧米流ファミリービジネスマネジメントのススメ 大井 大輔 [ 特集カテゴリー ]

原理原則2  従業員の主体性を発揮できるチーム型経営を整備せよ [ 第19回 ]

今月は、100年企業を実現するための原理原則2として、従業員の主体性を発揮させることの重要性について説明します。

 

 

指導者が管理できる限界は150名まで?

 

多くの創業者は、ご自身で意思決定を行い、事業を推進していくワンマン経営を志向しています。もちろん、創業初期であれば、そのような経営スタイルを貫き、ファミリービジネスを大きくしていく必要があります。しかし、そのような経営スタイルはいつまでも維持できるのでしょうか。

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原理原則1 経営者の志(思い)を従業員に浸透させろ(後半)

100年、200年企業を実現するための 欧米流ファミリービジネスマネジメントのススメ 大井 大輔 [ 特集カテゴリー ]

原理原則1 経営者の志(思い)を従業員に浸透させろ(後半) [ 第18回 ]

今月は、経営理念を具体的にどのように策定し、社内に浸透させるのかについて説明します。

 

経営者の志(思い)を素直に形にする

 

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原理原則1 経営者の志(思い)を従業員に浸透させろ(前半)

100年、200年企業を実現するための 欧米流ファミリービジネスマネジメントのススメ 大井 大輔 [ 特集カテゴリー ]

原理原則1 経営者の志(思い)を従業員に浸透させろ(前半) [ 第17回 ]

今月は、原理原則1 経営者の志(思い)を従業員に浸透させることの重要性について説明します。

 

業績の悪い会社で見られる姿

 

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100年企業を実現するための7つの原理原則

100年、200年企業を実現するための 欧米流ファミリービジネスマネジメントのススメ 大井 大輔 [ 特集カテゴリー ]

100年企業を実現するための7つの原理原則 [ 第16回 ]

今月からは、100年企業を実現するための7つの原理原則について、紹介します。

 

 

7つの原理原則を発見するきっかけ

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オーナーから見た最も信頼できるアドバイザー

100年、200年企業を実現するための 欧米流ファミリービジネスマネジメントのススメ 大井 大輔 [ 特集カテゴリー ]

オーナーから見た最も信頼できるアドバイザー [ 第15回 ]

 これまで様々なテーマで、ファミリービジネスが抱えている問題などについて検討してきました。今月は、そのような課題を抱えるファミリービジネスのオーナーは、どのような専門家(アドバイザー)を頼るべきかについて検討します。

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経営者の引き際

100年、200年企業を実現するための 欧米流ファミリービジネスマネジメントのススメ 大井 大輔 [ 特集カテゴリー ]

経営者の引き際 [ 第14回 ]

先月は、後継者の育成について検討しました。今月は、経営者の引き際について検討します。

経営者の4つの引退パターン

経営者の引退のパターンを分類すると、4つのパターンに分類されるそうです。(図1)
1つ目は「君主型」で、在任時は会社の規模を大きくすることに力を入れ、企業成長に寄与しますが、自発的には引退しません。そのため、自身が亡くなるか、社内クーデターが生じ、解任されるまで続けるタイプです。ファミリービジネスの創業者に最も多いパターンです。

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理想的な後継者の育成

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理想的な後継者の育成 [ 第13回 ]

今月は、経営者からよく聞かれるテーマの1つである理想な後継者の育成についてです。

優れた後継者の条件とは?

後継者の理想的な育成について検討する前に、そもそも優れた後継者の条件について検討してみましょう。

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理想的な事業承継プロセス(後半)

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理想的な事業承継プロセス(後半) [ 第12回 ]

先月は、後継者がリーダーシップを発揮するために理解すべき6つの要素と、4段階からなる事業承継プロセスについて説明しました。今月は、現経営者と後継者がいつ協同就業すべきかについて説明します。

 

最も望ましい協同就業のタイミングは?

現経営者である父と、後継者である息子・娘において、最も適切な協同就業のタイミングは、ライフステージの理論から、「現経営者(父親)が51~60歳、後継者(息子・娘)が23~33歳に実施されるのが望ましい」とされています。その理由としては、父親が50代になる頃には、中年期の終りを意識し始め、平穏な時期が到来します。さらに、悩ましい40代を乗り越えた50代は、これまでの経験を持ち合わせているため、若者のより良いメンター(支援者)となります。一方、息子・娘が23歳から33歳になる頃には、多くの選択肢の中から自らの進路を選ぶことへの欲求と、より多くの選択肢を持ち続けたいと考えるようになります。また、安定への欲求と共に、成長するための外部からの要求を期待するようになります。このような状況において、息子・娘がもつバイタリティを活かし、より挑戦的になります。このような両者の年齢において、父親は後継者の育成を望むようになり、息子は仕事における夢の実現をサポートしてくるメンターを探すことになります。そのため、父親が50代で、息子・娘が23歳から33歳の時、仕事における関係は、比較的協調的となります。

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ベンチャー型事業承継のススメ

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ベンチャー型事業承継のススメ [ 第10回 ]

 3月から始まりました本連載は、ファミリービジネスの特徴から始まり、経営承継の大切さ、スリーサークルモデルの観点、経営、所有、家族の分野で検討すべき事項、そして、先月は事業承継計画の策定方法について、説明してきました。

今月からはファミリービジネスにまつわるトピックスについて説明したいと思います。

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永続を叶える事業承継計画

100年、200年企業を実現するための 欧米流ファミリービジネスマネジメントのススメ 大井 大輔 [ 特集カテゴリー ]

永続を叶える事業承継計画 [ 第9回 ]

これまでファミリービジネスの永続性を担保するために、検討すべき事項について説明していきました。今月はどのような事業承継計画書を策定すれば良いのかについて説明します。

 

永続を叶える事業承継計画とは?

 

事業承継、特に経営承継を実現するには、どうしても時間がかかります。そのため、その実現を確実なものにするためには、事業承継計画を策定することをお勧めしています。事業承継計画を策定(見える化)することによって、どこに問題があるのか、検討不足なのか、などが分かり、より具体的な活動に結び付けることができます。

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家族の関係を見える化する  ジェノグラム分析(後半)

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家族の関係を見える化する ジェノグラム分析(後半) [ 第8回 ]

先月は家族関係を見える化し、顕在化している問題、将来発生しうる潜在的な問題を明確にするためのジェノグラム分析について説明し、事例(図2)を紹介しました。今月は事例の解説編となります。

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家族の関係を見える化する ジェノグラム分析(前半)

100年、200年企業を実現するための 欧米流ファミリービジネスマネジメントのススメ 大井 大輔 [ 特集カテゴリー ]

家族の関係を見える化する ジェノグラム分析(前半) [ 第7回 ]

 先月はファミリービジネスにおいて、スリーサークルモデルの家族分野について説明しました。今月は、家族関係を見える化し、顕在化している問題、将来発生しうる潜在的な問題を明確にするためのジェノグラム分析について、今月、来月にわたって紹介します。

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家族のよりどころとなる家訓・家憲

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家族のよりどころとなる家訓・家憲 [ 第6回 ]

 先月はファミリービジネスにおいて、スリーサークルモデルの所有分野について説明しました。今月は、家族分野(ファミリー)において検討すべき事項について説明します。

 

家族分野(ファミリー)で検討すべきこと

 

①家族のよりどころとなるポリシーの策定

 会社には経営理念や行動規範といった何か取扱に迷ったときに、参考にすべき考え方などがあります。同様に、家族においても、そのようなポリシーがあることが、永続できるファミリービジネスの基盤につながります。具体的には、家訓・家憲と呼ばれるものです。家憲とは、その家に伝わるしきたりなどを意味して、家訓とはその内容を明文化したものを意味します。家訓・家憲には、後継者に対して、どのような方針で教育を施せば良いのか、一族のことで何かの悩んだときに、どのような行動をとれば良いのかが分かるような基本となる考え方やルールがまとめられています。

 例えば、江戸初期から続く三井家の創業者である三井高利(1622~1694年)は、「現金掛け値なし」という、当時は掛け売り(ツケ払い)が当たり前の時代に、公正な価格にて現金取引で販売するという方法で事業を大きくしたことで有名で、三井家の家憲(※)を残しています。

 

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所有に関するガバナンスの構築

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所有に関するガバナンスの構築 [ 第5回 ]

 先月はファミリービジネスにおいて、スリーサークルモデルの経営分野における「後継者による経営推進ができる体制の整備」として、チーム型経営について説明しました。今月は、所有分野(オーナーシップ)において検討すべき事項について説明します。

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