【講演録】「中小企業はSDGsにどう取り組むべきか」(菊原政信)

~もはや大企業のみの課題ではない、その理由 [ 特集カテゴリー ] ,

【講演録】「中小企業はSDGsにどう取り組むべきか」(菊原政信)

菊原政信氏(フィルゲート(株)代表取締役、青山学院Hicon主管研究員)

青山学院大学経済学部卒業。大学在学中よりビジネスを始め、卒業と同時にアメリカ、東南アジアを中心に貿易を行う。その後、システム開発会社の代表を経て、2010年マーケティング・コンサルティングを目的にフィルゲートを設立。次世代小売流通サービスの研究会「Next Retail Lab」代表幹事を務める。

■SDGsに至るまでの歴史

SDGsは一度にできたわけではなく、歴史があります。誰一人取り残さないということで、子どもから大人、各国の方がすぐ分かるものとして、17個の目標を定めていますが、1番から17番のアイコンを見ると、何を意味しているかが小学生でも分かるように考えられています。SDGsは国連で採択されたもので、2030アジェンダは原書で約35ページ。日本語翻訳も国連連合広報センターのホームページからダウンロードすることもできます。

1945年、国連憲章にまず基本的人権や人間に関する問題について定義されたのが始まりです。その後、世界人権宣言(48年)、ストックホルム会議(72年)を経て、87年になって持続可能な開発というSDGsに関連するキーワードが出てきます。やがて92年の地球サミット、2000年の国連グローバル・コンパクトという会議。そこから国連ミレニアム開発目標があり、2015年にSDGsができる、いう流れです。

2015年のSDGs。それに先立つMDGs(ミレニアム開発目標)。これは開発途上国向けの開発目標で、貧困、初等教育、女性、乳幼児、妊産婦の方を平等に扱いましょうということがメインでした。その15年後にSDGsが採択されましたが、17のグローバル目標の下に169のターゲットという、より具体的な行動指針が設けられています。また、それに対応した232の指標が設けられているのがSDGsの構造となっています。このSDGs 2030アジェンダに関しては、国際社会全体が、人間活動に伴って引き起こされる様々な問題を解決するという点に主眼に置いた、それを世界で共通の認識として持ったという画期的な合意であった、と申し上げられます。

その根底をなすのが16番と17番「平和と公正を全ての人に」、世界中の誰もが力を合わせて、地球上の自然の恵みを大切にして、人権が尊重される。そして全ての人が豊かな、感じられるような世界をつくっていく。17番においては、全ての人や企業がそれぞれが役割を持ち、パートナーシップを築いて協力、連携し合う。

17個の目標の中に、包摂的、インクルーシブという言葉が多く出てきます。包摂的とは、誰しもが分け隔てなく、一緒に生きましょうということですから、先日、行われたオリンピック、パラリンピックでも、しきりにインクルーシブという言葉が使われていました。

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第11回 SDGsの基本とビジネスへの関わり⑩ (菊原政信)

~SDGsとDXは必須の時代 [ 特集カテゴリー ] ,

第11回 SDGsの基本とビジネスへの関わり⑩ (菊原政信) [ 第11回 ]

一時のブームで終わらない

 

近年、SDGsと並んで話題となることが多いキーワードにDX(デジタルトランスフォーメーション)があります。DXとは、単純にアナログで行われてきたことをデジタルに置き換えられること以上に、デジタル技術により私たちの社会活動やビジネスモデルに変革を起こす意味で使われます。近年では、2018年の経済産業省が公表したDXレポートの中で記載された「2025年の壁」として、今後訪れる過去に築かれたシステムの限界やそれを支えてきた人材が定年退職をむかえることによる課題が述べられました。これを克服するためにはDXが必要不可欠であることで改めて注目され始めました。

 その後、新型コロナの感染が世界中に蔓延して、経済や生活、環境が一変する事態となり、このことがSDGsとDXをこれまで以上に早く進める要因ともなりました。今後コロナが終息しても、継続していくことがまさしくサスティナブルな社会、企業に求められます。

 

SDGsとDXは相性が良い

 

 SDGsはこれまで述べてきた通り、今後業種や規模の大小を問わず全ての企業が取り組むべきことです。これからの地球環境をいかに、より良い状態にしていくかというマクロの視点と各企業や個々人が取り組むべきミクロの視点を持って取り組んでいくことが重要ですが、これを推進する上でもDXが必要不可欠です。商品であればモノの製造から販売に至るまでのサプライチェーンにおいて、どの段階においてもSDGsの取り組みは進められ、それを効率的に行うにはDXはなくてはならないものになってきています。

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第10回 SDGsの基本とビジネスへの関わり⑨ (菊原政信)

~統合報告書の編纂と情報発信 [ 特集カテゴリー ] ,

第10回 SDGsの基本とビジネスへの関わり⑨ (菊原政信) [ 第10回 ]

IIRCが定義した「6つの資本」

 

企業がステークホルダー並びに社会とコミュニケーションをとるツールとして企業の活動をまとめた統合報告書を作成されるケースが増えてきました。大抵の場合、企業の状況を提供する場合は財務情報などの定量的なデータをまとめて公表するケースが多いですが、最近は非財務情報を関連付けて、より詳細に企業の状況を提供することが求められてきています。

そこで、国際統合報告書評議会 (International Integrated Reporting Council: IIRC)は、2013年12月に「国際統合報告フレームワーク」を発表しました。その中で、企業の価値創造プロセスは次の「6つの資本」により形成されると整理しました。

①財務資本、②製造資本、③知的資本、④人的資本。⑤社会・関係資本、⑥自然資本です。

この内、①財務資本、②製造資本、④人的資本は。以前から数値としてまとめられてステークホルダーには提供されてきましたが、統合報告書では、新たに③知的資本、⑤社会・関係資本、⑥自然資本が加えられました。それでは、新たに加えられたそれぞれの資本の特徴を見ていきましょう。

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第9回 SDGsの基本とビジネスへの関わり⑧ (菊原政信) [ 第8回 ]

自治体における地方創生SDGsと「SDGs未来都市」

地方・自治体が直面している社会問題

 

都道府県別の人口増減の予測が定期的になされていますが、東京都と沖縄県を除いてすべての地方自治体において顕著な人口減少傾向を示し、特に地方の小規模な県において著しい状況です。このような人口減少による、少子高齢化、若者流出、過疎化などの社会問題は、今後、表に示すように自治体運営に深刻な影響を与えます。

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SDGsの基本とビジネスへの関わり⓹(菊原政信) [ 第6回 ]

未来志向の企業経営に向けたSDGsの必要性

SDGsは、大企業のみならず中小企業こそが取り組み、国際的レベルで持続可能性を担保した企業経営ができるビジネスチャンスを秘めています。それは下記の通り幾つかの要点により導かれます。
①規模・業種・業態にかかわらず、どの企業においてもSDGsは不可欠であること。

②SDGsは短期事業目標ではなく、10年後以降にも企業の存続を目指す戦略的投資と考えるべきであること。

③SDGsは、10年後の未来を先取りした社会課題の解決に向けた、自社のビジョン(事業目標)、ターゲット(達成基準)、評価指標を設定できるヒント集として活用できる。

これに基づいた経営活動は、収益を上げつつ、社会貢献事業を実現することにつながりSDGsとCSVの両立、[共通価値=経済価値×社会価値]を意味する。

④上記に基づいた経営活動は、社会貢献事業に従事する社員のモチベーションを向上し、優秀な人材を確保することにつながり、就活学生に対するプロモーションにもなる。

⑤具体的にSDGs社内プロジェクトを第1歩として「SDGコンパス」が参考になる。

⑥SDGs社内プロジェクトを立ち上げ、自社の強みを生かした小さな成功を積み重ねる。

⑦本格的に、グローバルWAYマネジメントに挑戦する。すなわち、SDGs、ESG、CSVの3立を目指し、中・長期経営計画立案し、新規事業部門を立ち上げ、世界や社会そして顧客から評判の良い企業経営を目指す。

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SDGsの基本とビジネスへの関わり④ (菊原政信) [ 第5回 ]

CSRを基盤としたCSVの展開

前回述べたCSR(企業の社会的責任)の枠組みの中で、寄附などの短期的な事前活動や、フェアトレード(途上国の生産者への価格保証)が行われてきました。しかし、CSV経営は、慈善活動ではなく持続可能な『経済価値』を達成するために、従来の短期志向では市場対象としていなかった「ブルー・オーシャン(競争相手がいない海=未開拓市場)」といえる社会課題解決を果たして社会価値をも達成しようという狙いがあります。

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ニューノーマル時代の礎を築く  第4回:SDGsの基本とビジネスへの関わり③(菊原政信)
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ニューノーマル時代の礎を築く 第4回:SDGsの基本とビジネスへの関わり③(菊原政信)

ニューノーマル時代の礎を築く

第4回:SDGsの基本とビジネスへの関わり③

CSRとISO26000

 CSR(Corporate Social Responsibility)とは「企業の社会的責任」を指し、企業が関与する範囲の社会や環境問題について自社の事業活動と関連させて自主的に対処する責任を意味します。しかしながら、これは法律ではないためその実行は企業の意思に任されています。そこで、企業が自ら責任をきちんと果たせるように、コーポレートガバナンスの仕組みにCSRを位置づけることが重要です。

 コーポレートガバナンス(企業統治)とは、前号でも述べたESGとも関連していますが、株式会社(特に経営者)を統治することであり、具体的には取締役が会社を運営する仕組みのことです。これは、企業における意思決定の仕組みのことで、不祥事や企業倫理の逸脱などの防止を目的に実施されます。

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SDGsの基本とビジネスへの関わり②(菊原政信)

ニューノーマル時代の礎を築く 菊原政信 [ 特集カテゴリー ] ,

SDGsの基本とビジネスへの関わり②(菊原政信) [ 第3回 ]

ニューノーマル時代の礎を築く

第3回:SDGsの基本とビジネスへの関わり②

 

持続可能な視点による企業価値評価とESG投資

前回お伝えした通り、SDGs以前より取り組まれてきたE(Environment)環境、S(Social)社会、G(Governance)企業統治を考慮した経営が更に求められてきています。その根底にあるは市場のルール・仕組みの変化、金融機関などの長期的な安定株主の意識変化、企業価値算出方法の変化などが挙げられます。

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現役大学生によるInstagramを活用したブランド認知とコマースの実例

次世代小売流通への架け橋 菊原 政信 [ 特集カテゴリー ]

現役大学生によるInstagramを活用したブランド認知とコマースの実例 [ 第4回 ]

今後、小売流通業の在り方も大きく変化して行きます。とりわけインターネットを活用することが当たり前となった時代に生まれたデジタルネイティブなZ世代(1990年後半から2000年生)にとっては、スマートフォンを起点として様々な情報を収集、発信しています。

そこで、今回は私がプロデュースして進めている「現役大学生を活用したアクションプログラム」の実例として、2019年1月~2020年6月まで青山学院大学経営学部の学生と7&iホールディングスとの共同研究プロジェクトとして取り組んできたインターネットショッピングサイト「オムニ7」の公式Instagramアカウントについて取り上げます。

 

 

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SDGsを実証してきた老舗企業が考える持続可能性

次世代小売流通への架け橋 菊原 政信 [ 特集カテゴリー ]

SDGsを実証してきた老舗企業が考える持続可能性 [ 第2回 ]

新型コロナに負けるな!
創業100年以上の老舗企業から学ぶ

新型コロナウィルスの世界的な蔓延により、我が国においても戦後最大の国難と言わる程、経済的も図り知れない大きなダメージを受けています。2008年のリーマンショックの際はお金の流れが止まり経済を混乱させましたが、今回は人の足が止まり、小売流通業においても平時なら継続できていた店舗が、閉店や廃業にまで及ぶ事態が起き始めています。

そこでこの難局を乗り切り、その後のアフターコロナの時代に持続可能な世界を迎えるにはどうしたら良いかを、私が代表を務める次世代小売流通の研究会Next Retail Labのフォーラムに登壇して頂いた老舗企業の歴史を振り返りながらSDGs(持続可能な開発計画)の観点から考えて行きます。

最近耳にすることも多くなったSDGsとは、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」と題する文書に示された2030年に向けた具体的行動指針のことです。

尚、フォーラムには株式会社山本海苔店専務取締役 山本貴大氏、株式会社文明堂東京代表取締役社長 大野進司氏、株式会社榮太樓總本鋪取締役副社長 細田将己氏に登壇して頂きました。

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映画「男はつらいよ」に見る小売りの原点

次世代小売流通への架け橋 菊原 政信 [ 特集カテゴリー ]

映画「男はつらいよ」に見る小売りの原点 [ 第1回 ]

商売人としての車寅次郎

「私、生まれも育ちも葛飾柴又です。帝釈天で産湯を使い、 姓は車、名は寅次郎、人呼んでフーテンの寅と発します」

おなじみのセリフで始まる映画「男はつらいよ」。おっちょこちょいだが人情味のある渥美清が扮する車寅次郎と、毎回登場するマドンナ、妹のさくらや家族とのやり取りが人気で、昨年末には50作目として「お帰り寅さん」が上映されました。いつも、マドンナに恋心をもちながらも最後にはふられてしまう、顔で笑って心で泣いている寅さんの姿が印象的です。

小売業は、人の行き交う道筋に商品を並べ売りはじめ、やがて他の地方でも売る為に行商に出かけて売り手と物流を兼ねることから始まり、それに加えて各地の情報を伝える役割も担っていたと考えられます。寅さんの職業は香具師ですが、販売しているものは易断本、瀬戸物、レコード、張り子の虎、おもちゃなど様々で、街角や祭り、縁日など人が集まるところに露店を設けて「寄ってらっしゃい、見てらっしゃい」と呼びかけ、その時々に販売する商品のいきさつや魅力を面白おかしく伝え、楽しませながら啖呵売・口上する姿はまさに小売りの原点ではないでしょうか。

 

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