【真田幸光の経済、東アジア情報】
「中国の情勢と、中台関係、日中関係」
真田幸光(嘉悦大学副学長・教授)
■中国本土情勢について
中国共産党は、習近平政権の発足時に廉潔な政治を訴えて打ち出した「八項規定(8カ条の御誓文)」を再度学ぶ、全党的なキャンペーンを開始している。
習近平国家主席の側近と言われた軍幹部の汚職も含めて、党幹部の汚職の摘発が続く中、「ぜいたく禁止令」として国民からの評価も高かった規定の精神を再び強調して求心力を維持したいとの意向とみられる。
しかし、これは、それが出来ていないことの表れでもあり、習近平政権に対する不満が出てきていることに対する対応とも見て取れる。
また、今後の「人事の季節」への準備との見方も出ている。
中国本土は国家方針として、米国の規制下で、ハイテク分野の優位を目指していると見られている。
米国は輸出規制で中国本土と技術優位を競っていると見られているが、この動きの中、中国本土政府は中国本土国内企業のハイテク開発の促進を側面支援していると見られている。
中国本土政府当局は、2023年3月に拘束した米国の調査会社である「ミンツ・グループ」北京事務所の中国人社員5人を解放している。
ロイター通信によると、同社は「かつての同僚が家に帰って家族と会うことが出来、中国本土当局には感謝している」
と伝えている。
中国本土当局は社員の拘束時、同社事務所の捜索も実施しており、中国本土メディアはその後、顧客企業に提供する情報の内容や取得経緯が問題視された可能性を報じていた。
共産党政権は欧米勢力の中国本土社会浸透への警戒感から、外国政府や企業への「スパイ行為」への取り締まりを強めていると見られている。
中国本土経済の不調が続く中、外資企業の誘致を進める一方、「国家安全」を重視する姿勢も今のところ崩していない。
尚、同社が摘発された2023年3月には、帰国間際だったアステラス製薬の男性社員がスパイ容疑などで拘束されており、こちらにも動きが出るのか否かも注目される。
■中台関係について
中国本土政府で台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室の陳報道官は3月26日の定例会見で、台湾の出版社「八旗文化」の男性編集長である李延賀氏に対して、上海の裁判所が国家分裂を扇動した罪で懲役3年の判決を言い渡したと発表している。
李氏は2023年3月に中国本土に渡航後、連絡が取れなくなっていた人物である。
中国本土は既に、台湾に対する法治を強く主張し、こうした法的行為を取っているものとも言えよう。
今後の動向をフォローしたい。
■日中関係について
中国本土政府・外交部は3月24日の記者会見で、日本の石破首相と中国本土の王毅政治局員兼外相の面会に関して中国本土側が事実と異なる発表を行ったことについて、
「国家間の交流に於いて、互いの立場を尊重するのは当然である。
このような重要な会議で、それが表現されたと理解している」
と述べ、発表を正当化している。
石破首相が王毅政治局員と21日に面会後、中国本土政府は、
「石破首相が、中国本土側の発言した立場を尊重すると表明した。」
と発表し、日本側は抗議して撤回を求めていた事案に対する対応である。
こうした外交的に不誠実な対応を取る中国本土政府に対して石破政権はどこまでこびへつらうのであろうか。
日本政府は中国本土政府になめられていないのか。
日本政府には毅然とした対応姿勢を示して戴きたい。
こうした中、中国本土公船が3月24日の午後も東シナ海の尖閣諸島付近の日本領海を航行し続けていた。
21日の午前2時前に始まった今回の侵入は、日本政府が2012年に日本の民間所有者から島々の一部を購入して以来、最長の侵入となっている。
これまでの記録は、2023年3月30日から4月2日までの80時間36分であった。
日本・海上保安庁によると、21日に2隻の中国本土船が南小島沖の日本領海に侵入したが、日本の漁船を追跡していたようであるとの見方が示されている。
こうした事態を見ても、中国本土にやりたい放題されている日本の現状が垣間見られているのではないだろうか。
真田幸光————————————————————
1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。84年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支店等を経て、1998年から愛知淑徳大学学部にて教鞭を執った。2024年10月より現職。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メンバー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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