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IMFによる世界経済見通しについて(真田幸光)

【真田幸光の経済、東アジア情報】
IMFによる世界経済見通しについて

真田幸光(嘉悦大学副学長・教授)

比較的、中立的で客観的で科学的であると言われる国際機関である、「国際通貨基金(IMF)」が発表した世界経済見通しでは、今年と来年の韓国の経済成長率はそれぞれ1.0%、1.4%と予想されており、今年1月の予想からそれぞれ1.0ポイント、0.7ポイト引き下げられている。

また、IMFは今年の世界経済成長率見通しを1月から0.5ポイント下方修正した2.8%、来年は0.3ポイント引き下げた3.0%とする見通しも示している。

韓国以外の国を見ると、米国の今年の経済成長率は1.8%とし、1月の見通しでは前回から0.5ポイント引き上げた2.7%と予想していたたが、今回は更に0.9ポイント下方修正している。
来年は1.7%とし、1月の予想から0.4ポイント引き下げている。
 
中国本土は今年と来年ともに4.0%と予想し、それぞれ前回から0.6ポイント、0.5ポイント引き下げた。
 
また、
「ドイツは0%(前回予想から0.3ポイント引き下げ)」
「日本は0.6%(同0.5ポイント引き下げ)」
「英国は1.1%(同0.5ポイント引き下げ)」
「カナダは1.4%(同0.6ポイント引き下げ)」
「インドは6.2%(同0.3ポイント引き下げ)
「メキシコはマイナス0.3%(同1.7ポイント引き下げ)」
など、主要国の今年の経済成長率見通しも軒並み下方修正されている。

そして、IMFが世界と主要国の経済成長率見通しを一斉に引き下げたのは、米国のトランプ政権の関税政策と相手国の対抗措置を反映した下方修正であるとしている。
 
報告書が作成された4月14日時点では、中国本土製品に対する米国の実質関税率は115%に上っており。米国の世界に対する実質関税率は約25%で、今年1月(3%未満)から大幅に上昇したことが反映され、試算された数値となっている。
 
IMFは、
「米国の関税措置が予測不能な展開を見せ、経済活動と成長率見通しに否定的影響を与えている。
貿易戦争の激化と更に高まった貿易政策の不確実性は、短期・長期の成長率を更に低下させる可能性がある」
とコメントしている。
 
また今後の政策については、
「透明性と協力が必要である。
各国は安定的で予測可能な通商環境を促進する為に協力し、債務再編を促進して共通の課題を解決しなければならない」
と提言している。

 

真田幸光————————————————————
1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。84年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支店等を経て、1998年から愛知淑徳大学学部にて教鞭を執った。2024年10月より現職。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メンバー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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