【真田幸光の経済、東アジア情報】
インドに中間層は育っているか
真田幸光(嘉悦大学副学長・教授)
インドは昨年年央より、
「世界一の人口大国」
となりました。
既に、少子高齢化が進む、それまでの人口第一位大国・中国本土よりも、
「若い人口が多いインド」
には世界の注目の目が注がれています。
また、このインドは、
「インドはどの国にも隷属しない。
インドはインドであり、インドのアイデンティティを守る。
インドはグローバル・サウスの典型である」
と主張する国であり、その上で、モディ首相の言う、
「Make in India」
政策により、製造業を以ってインドを更に強国にしていくとし、
「中国本土に代わってインドが世界の工場になる」
としている国であります。
そうした意味で、インドは本当に興味深い国となっています。
ところで、そのインドのインド中間層人口は約1億人程度と見られるとの見方が強く、その中でもしっかりとした納税者は約6,000万人程度と見られています。
そして、こうした中間層の所得水準は、
「6,000~40,000米ドル」
と見られてもいます。
更に、今後、インド政府は8%成長を2047年に向けて展開したいとしており、こうした中間層は更に増えていくものと期待されています。
こうした状況にあって、インドの金融機関による貸出の実態を眺めると、最近では、
「企業貸し出し中心から家計・個人向け貸し出しの増加傾向が見られる」
更に、
「その個人借り入れは、借入れをして株式投資に注力する傾向が見られる」
そして、その投資の実態を更に細部に見ると、
「株式オプション取引が拡大している」
との傾向が見られ、インド金融界には、
「行き過ぎた信用創造に伴うバブル投資の拡大」
が顕在化し、インド金融の崩壊の兆しが見られるとの判断がなされる中、
「2023年から家計・個人貸し出しの規制」
が実施され、その延長線上で、
「信用カードの利用も鈍化傾向を示すようになり、経済成長そのものにも鈍化傾向か見られるようになった」
との見方かも出てきています。
実際に、インドの延滞率は13%にまで増加返済不能者が増加することによって、金融不安に伴うインド経済の先行き不安が見られました。
そして、社会的批判が高まることによって、株式オプションも縮小傾向を示し、個人破産も拡大しました。
こうしたことから、
「インドでは中間層は簡単には育っていない」
との見方も強まっており、それを背景として、インド経済の成長も予想よりも遅くなるのではないかとの声も出始めています。
インド経済の行方、世界経済の発展と関連も深いであろうことから、今後も引き続き、注目したいと思います。
真田幸光————————————————————
1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。84年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支店等を経て、1998年から愛知淑徳大学学部にて教鞭を執った。2024年10月より現職。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メンバー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
——————————–