髭講師の研修日誌(第121回)
和の心が活きる繋ぐパワーの素晴らしさ
澤田良雄((株)HOPE代表取締役)
◆我が社の資本は社員です。叙勲受章企業の和(なごみ)の現実
・創業107年の継いだ実績が叙勲受賞となりました
”令和7年春の叙勲に際し、おかもとポンプ株式会社代表取締役の岡本直司氏が温泉用水中ポンプの普及によるインバウンド促進、防災用手押しポンプの推進により災害時の水供給支援への貢献、ODA(政府開発援助)を通じた発展途上国への水資源支援など国内外における長年の功績により旭日單光章受章の栄に浴されました(中略)つきましては同氏の栄誉を御祝いすると共に、今後のご活躍を祈念して・・”これは、受章祝賀会発起人からのご案内文の部分内容です。筆者は、この会の発起人の一員としてお役立てをさせて頂きました。
おかもとポンプ社は創業107年、岡本社長は5代目社長として受け継ぎ、家業から企業へと経営手腕を駆使し、ニッチ部門といえ日本のトップ企業として「下町の逞しい企業と」称されています。既に中小企業としての表彰は令和元年に経済産業大臣表彰ととして「羽ばたく中小企業・小企業事業者300社)として受章しています。
・おめでとう、おかげさまの喜び合いの祝宴でした
実は、この祝賀会は、岡本社長の社員一同始め、御世話になりました方々への「ありがとうございました」「おかげさま」の謝意を講じたいとの意向での催しです。
従って、臨席者は社員全員に日常業務でご協力頂いている小企業、地域関係者方々の110余名です。まさに、身近に声がけする「おめでとうございます」「おかげさまです」との喜び合いの宴席となりました。岡本社長の謝辞では、「皆さんのご尽力の賜としての今回の受章です。未来に繋げ、このご関係をより高めて参ります。・・」と社員、関係者に力強く話されました。すかさず会場全体がその繋がりの絆を共に大きな拍手で確認しました。
・社員への施しは、日本的会社です
筆者は既に、人財育成へのお役だてとして20余年、社員研修(幹部・リーダークラス、新人・・)のお役だてを施してきました。その切り口からの岡本社長と社員及び関係各所、地域との関わりは、双方OKの相互信頼関係が見事です。
例えば、社員への施し例としては、社員50名、常務取締役、取締役3名、執行役員2名はプロパー社員です。女性副部長、課長もいま、毎年実施で沖縄・北海道・・社員による実行委員会が仕切ります。勿論 旅行先の温泉、ポンプ利用顧客、協力企業様の訪問で学習を取り入れています。そして、社内報(10ページ)を毎月発行し、社内外に配信しています。
社内報記事も、社員の工事現場情報、関連企業様の紹介で企業様から社員へのメッセージを掲載し、地域活動の紹介と社員の参加協力、地元小学校の見学での社員の説明記事、当社ポンプの利用現場の紹介、各種展示会場の様子、各種研修実施報告、ビジネス用語の解説、社員のアフリカでの活躍寄稿、中国工場の現況など・・・多様なる見事な編集による社員の共有情報として最適です。50人企業での此れ等の施しは見事です。
如何でしょうか。「当社も以前はやっていたな」「昨今見直されてきているね」とのやりとりはありませんか。まさに我が国特有の社員と企業の一体感が活きています。だからこそ、応えた社員の貢献力が「下町の逞しい企業」と賞讃されるのです。
・毎年社員一同が介して年度経営計画キックオフ・目標達成への貢献へ
それは、単なる情的条件だけではなく、全社員で共有化されたシナリオがあります。それは、年度スタートに当たっては、近隣ホテルで年度経営計画発表とキックオフのイベントを全社員参加で行います。以後、この計画内容(トップの今年の想い、全社売り上げ目標・利益目標、各部門の施策目標、具体的実施計画を冊子にまとめ)を全社員が日々携帯し、PDCAのマネジメントを回していきます。
従って、筆者の研修では、この計画目標達成にリンクした能力向上のサポートです。そのキーワードは「志事(目標を持って事に当たる、単なる言われた事をこなす仕事ではない)を楽しみ、貢献力を提供できる喜びを得る学び合い」としています。
この貢献力は変える力です。変えるには、新たな学びにより、新たな工夫策を創造し実践する事です。新たな工夫は。各人の潜在能力の未活用に着目し、新たに活用を見出し、加えて、新たな知識を智恵にする事です。その新たな方法の実践だからこそ新たな成果を産み出します。
・トップ、社員の和やかさが未来へのたすきを繋ぎます
確認してみましょう。社員が当社の資本です。社員とトップの和やかさによる醸し出される企業文化・環境だからこそ、各自が最高の活躍を楽しみ、各自の良さを活かし合ったチーム力により(組織力)部署の足跡づくりが実績です。この足跡は企業の歴史です。これは、駅伝の襷として途切れることなく繋がっていくのです。旭日單光章受章の栄誉のたすきを、次の中継所に向けて今日も歩み続けています。そこには、社員と共に喜び合いのある我が国の和の精神に準じた企業活動が成されていきます。次なる「おめでとう」「おかげさま」の喜び合いの中継所はいずこに・・。
◆関西万博でのおもてなし心に基づく接客に拍手
・気が利く施しは、安心感を生みます
「ありがとうございます」「おかげさま」の交わし合いは関西万博でも体感しました。そこには「おもてなしの日本的文化が生きていていました。ちなみに、
おもてなしとは=困っていることを察して,自らできる事の知恵の言動で解決する実践です。ですから気が利く人、人の気持ちをくみ取れる人、見事な専門力を施せる人の施しです。例えば、和洋菓子メーカーの(株)三万石の販売店研修でおもてなしの具体的実践例を討議で紹介された事例のひとつに、「私は、駅前本店です。夕方、背広で鞄をお持ちになった顧客様がお出でになります。お品をお渡しするときには紙袋を二重にいたします。それは、遠方に帰る道のりで、もし、破れたら困るなとの心配心を察しての配慮です。お品をお渡しすると表情がほころんで頂けます。安心感をお持ちになったのでしょう」との実践例がありました。まさにおもてなしの気が利く対応です。
・関西万博の現場は、人、人、人・並ぶ・待つの現実でした
実は、先日閉幕した関西万博で類したおもてなし心に接しました。周知のとおり、「命輝く未来社会のデザイン」をテーマにした大阪・関西万博が成功裏に閉幕しました。累計入場者数は2,500万人を上回わりました。筆者は9月末、東京からの日帰りツアーに参加しました。ツアー添乗員のかざす旗に従い西ゲートからスムーズに入場し、会場内約7時間の滞在でした。今回の万博は国内万博最多となる158か国・地域と日本が参加し、多くの企業、自治体もパビリオンを出展、大屋根リング、火星の石・日本間・・など是非観たいとの興味を高めてくれていました。筆者の市からはみりんが参加しました。
いざ会場に。ミャクミャクの巨大像が「いらっしゃいませ」と迎えていますが、人・人でなかなか近づけません。やはり、混んでる、並ぶ、待つの報道通りです。幸い、万博のシンボルとしての大屋根リングの一周約2キロに挑戦、会場全体を眺めることができました。欲張り外周散策では、海面の向こうに「あそこは神戸、明石、堺かなーとやたらとカメラに収めました。それでは、パビリオンへ・・意気込んでみても人垣に添っての歩みでそぞろ歩き、どこに向かっているやら、いざ到着しても、予約なしの筆者ゆえ、入館無理、1~5時間待つ、ならば他国館へ・・同様。結局、ツアー条件の一国だけの観覧の実績でした。並びの特筆は、記念グッズを購入して支払いの指定場所に行くまでの長い行列に1時間余加わった事でした。
・「ご来場ありがとうございます」の接客は安心と頼りになりました
しかしながら、この現実、現場だからこそ、安心とほっとする瞬間を提供してくれたのは会場各所でご案内頂いたスタッフです。例えば、「教えて頂けますか。大屋根リングにはどう行きますか」「ここを真っ直ぐ行きます。あそこにみえる建物のすぐ側に登りのエスカレーターがあります。」「有り難うございます」。エスカレーター乗り場でも待つ。そこで、「教えて頂けますか。この一周はどのくらいの距離で時間はどのくらいかかりますか」「約2キロです。ゆっくり歩いて45分ぐらいですね」「そうですか。頑張ってみます」「行ってらっしゃいませ」と笑顔での交わし合いです。
とにかく、現場は、あらかじめ調べた案内図や、解説と摺り合わせるのは困難。だからこそ、頼らせて頂く。応対頂いたスタッフは、案内専門スタッフだけでなく、店頭、パビリオン入館案内、警備される人、ゴミ収集する人ですし、諸外国人スタッフは日本語でのやりとりです。総じて、(株)三万石のおもてなしの実例に診る気配り、気が利く接客でした。
・ひと言、一秒の美学に二つの感謝がありました
その見事さには、ひと言の美学(心込めた言葉、語調、品格の良さ)であり、一秒の美学(振る舞い・表情)です。例えば、「あちらです」そこには微笑みの表情に目線での語りがあり、手をかざす丁寧さもあります。だからこそ余韻を残す心の通わせに「お気を付けて・・」と会釈で見送りを頂きます。なぜ、これほどの接客ができうるのであろうか。そのひとつは、「ご来場頂き有り難うございます」との入場者への謝念がきちんと備わっているからです。それは、単に主催者の想いでだけでなく、スタッフ全員に共有化されているからです。
もう一点はこの期間働ける喜びです。それは、選ばれた誇りもあり、収入・生活の保証もあります。筆者はスタッフへ問いかけました。「一日いくらいただけるのですか」「それは・・いつものバイト代よりも・・」と言いつつ笑顔の警備の若手男性でした。更に、「食事は?」「2食頂いています。ありがたいです。」又笑顔です。そこにはおかげさまで「良き機会、待遇を得て、良き体験をさせて頂いています」との満足感であろうと推察しました。ふと、おかもとポンプ(株)と共通感を抱きました。
・おもてなしの文化が評判を創り、その気づきが未来へつながります
確認してみます。
 気が利く人とは、人の気持ちをくみ取れる人、見事な専門力を施せる人です。その人物像は
①人が好きで関わる人に喜びをもたらすことを自らの喜びとする人。
それは、自分(自社、自店)の持っている魅力で人のお役に立てる事を楽しみとしている人です。
②感謝、謙虚、素直、思いやりの人柄が自然に出せる人
③振る舞いに、心が正しい形を創り,形が心を磨く人です
④人は十人十色、異見の持ち合いです。受け入れる受容の心の豊かな人。
⑤専門力を柔軟に生かせる工夫のできる人です
それは、目に見える範囲の理解で無く、その奥にある心を掴かむ事にもあります。
疲労感を感じつつも、我が国開催だからこその良き事実に満足した万博ツアーでした。
いかがでしょうか。企業での利他の精神の企業文化で社会に役立つ喜働の働きに準じます。
閉会イベントで、知事は「ありがとうございます」を8回重ね、首相は「新しい日本の幕開けになり、地方創生にもつながったのではないか」と述べました。何れにしても、「いのち輝く未来社会のデザイン」のテーマのいのちとは「人の持ちうる素晴らしき心と、考え出す、現実化するエネルギー」です。今万博で寄り合った世界中の人やものの衆知に触れ、学び、気づいた事柄が、各自、各社の未来につなげる(持続的価値)事です。
筆者の知友の若手経営者の松若氏は、「家族で2回行きました。子どもが現実に触れた何かを記憶にとどめ将来・・・活かすことがあればと願っています」と語って頂いた。これからの未来を担う子供が海外に触れ、視野を広げた体験は何物にも代えがたいものです。主催者の意図もそこにもあるのでしょう。 次回の開催はサウジアラビアの「リヤド万博。盛大に襷を引き継いでの閉幕です。
最近の二つのイベントに関わり、日本的文化の良き事項が生き、成功の節目を迎える素晴らしさを確認できました。そこには、トップの牽引に一体となった各自の最高の働きがあり、その成果を最適に還元される仕組み、施しの現実が顕在することです。
「この企業で活躍することは楽しい。」
 確認してみましょう。
「和」の文字は左に禾へんがあり実りの意味合いです、右側は「口」です。食べる意味合いです。相反する意味合いが一体となるから「和」となり互いの立場を認め合い、受け入れ、和やかさが醸成されるのです。今回はこの価値付けを一考してみました。
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◇澤田 良雄
東京生まれ。中央大学卒業。現セイコーインスツルメンツ㈱に勤務。製造ライン、社員教育、総務マネージャーを歴任後、㈱井浦コミュニケーションセンター専 務理事を経て、ビジネス教育の(株)HOPEを設立。現在、企業教育コンサルタントとして、各企業、官公庁、行政、団体で社員研修講師として広く活躍。指導 キャリアを活かした独自開発の実践的、具体的、効果重視の講義、トレーニング法にて、情熱あふれる温かみと厳しさを兼ね備えた指導力が定評。
http://www.hope-s.com/