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研修は人を鏡として変わるヒントに気づく楽しみ(澤田良雄)

髭講師の研修日誌(120)
研修は人を鏡として変わるヒントに気づく楽しみ

澤田良雄((株)HOPE代表取締役) 

◆中堅社員研修にみる気づきの現実

○自分の現場での役割の再認識ができた
○人前で相手に正しく伝わる説明の難しさ 
○相手の気持ちに寄り添って仕事をしていく重要さ 
○先入観を持ってしまう現場の危険性 
○コミュニケーション(ひと言・雑談…)の大切さ 
○まず相手のことを知る、が大事 
○考えて行動(考働)しないと意味が無い 
○好感持って頂く聴き方が肝心 
○相手がしっかり、正しく理解できる伝え方 
○相手の異見を聞いてから自分の意見をしっかり伝えるこの心得 
○コミュニケーションをとるうえで、相手の話もしっかり聴くこと、伝えることの難しさを学んだ 
○指導時には、相手の能力や理解度に合わせて中堅としての指導力を活かす 
○大人数を前にした発表(プレゼンテーション)の工夫 
○上下から頼られる立場なので接し方を再確認して現場で活かす…。

これは、先日の大手鉄鋼所協力企業協力会主催の「中堅社員研修」(2日間・筆者二日目担当)の総括時の受講者各自の発表です。

いかがでしょうか。このクラスの社員は、現実の活躍ぶりには自信と誇りを持っています。だからこそ、初面識の他社社員との直の交流で、活躍ぶりの紹介や、研修での諸処の 演習で「他の人を鏡」として、素直に自己の思考や活躍ぶりを確認し、診断しての気づきです。

ちなみに参加企業は、大手製鉄所への研究支援・開発ソリエーションなどを業務とするNテクノロジー (株)、物流・機工・構内創業のS社、構内物流・空海輸送N物流(株)、水を中心とする環境事業のN環境(株)、工事関係のT工業(株)などの大中企業です。現在は、勤続10年程度の第一線現場のコア社員として世界一鉄鋼メーカーの一役を担っている18人です。

そして、 これらの気づき事項を共有化して、今後どう活躍ぶりを変えていくかのグループワークでの提案事項は次の11カ条(いいひと)です。

①先入観を持たず相手を尊重する心の広さを持つ
②指導は、相手の能力、理解レベルに合わせて指導実践する
③育成する専門力を深め、新鮮味を加えた指導の実践をする
④上からも下からも信頼される人財になるよう人間性を育む
⑤後輩のシグナルにいち早く気づいて、否定せず、共感して個性を大事にしてあげる
⑥現場第一線で中心的な存在となり、チームメンバーを引っ張っていけるようにする
⑦任され、責任もって周囲の協力を得て、実績を造っていく
⑧自分の意思や、経験だけに頼らず周囲の方々の声にも耳を傾けてより良い方法を考える
⑨伝える順序を更に磨き、相手に理解し、納得を促す
⑩風通しの良い協力関係にはコミュ二ケーションを(褒め、ひと言、快話)無精しない
⑪先入観を持たず、現実を直視し、先をみて、絶対安全を確保する

いかがでしょうか。中堅社員への活躍期待、実績の形成、そのための具体的実践策が見事に提案されています。勿論 研修による講義、演習による他の人を鏡としての自らを自己診断及び相互診断しての実感、体得しての雄叫びです。

◆研修は新たな気づきによる新たな言動実践の投資効果です

さて、研修とは、学びによる気づきを実践し、その実効が育成投資効果です。従って、この提案事項を各自の具体的実践への誘いが肝心です。

その最終支援は、半年間の実践計画です。それには、今後半年間の「何を、どうして、どのようになる」の文書化で実践目標を設定し、その目標に上司のアドバイスを頂く。ここにOJTとの連結ができます。そして、毎月の実践状況を確認するPDCAサイクルの自主管理としています。だからこそ、受講機会を設けた上長、同僚からの「変わった、成長した」との実質的評価を得られるのです。

もし、変わらなかったら「何を勉強してきたんだ。皆が忙しくあなたの業務の穴埋めしていたのに…」と中傷されることも現実です。研修は開催した、受講した、研修所感、その記録に価値があるのではありません。変わることによる新たな貢献を楽しむ事なのです。

◆主催部門とのパートナーシップがより効果を生みます
 
ちなみに当研修は、協力会に教育委員会が設けられ、研修現場でも筆者と良きパートナーシップを持っての支援体制を構成しています。従って、記してきた紹介内容や、グループ演習での振り返り(C結果・反省・A現場でどう活かす)でのグループ発表に対してのコメントと助言を託しています。なぜか? それは筆者よりも現実を把握されているし、現実、現場、現物を適確に変えていく術を考えられるからです。それだけ、実効を得る可能性を踏まえての手段です。勿論 指導目的を共有する働きかけが前提です。

改めて研修実態を紹介しますと、
◎研修の実効「現在、誇りと自信を持って活躍している第一線の要の中堅社員は自身が、重ねてきたキャリアを生かしてさすがの実績形成を楽しむ事が企業で働く喜びである。だからこそ、新たな気づきによるランクアップさせた活躍を通じて自ら喜びを享受する。
それは、中堅社員として「任され、責任もって、協力関係生かした実績づくり」による貢献である。それには、持ちうる能力を最高に発揮すると共に、新たな学びによる、変わる業務遂行による現場力を高める。今研修はこの切り口から、現状の活躍ぶりを確認・診断する機会とする」としました。

◆人を鏡とする機会は、対面型講義、相互演習、グループ演習 を最適に施す

その実効へ支援取り組みは、演習とその付随講義を最適に組み合わせての研修ストリーです。例えば、

◎グループ体験演習(チームビルデイング) 
課題=「球団カッテクルーズのメンバー表を15分で作成せよ」
=筆者独自作品の活用、その学びポイントは:チーク力の形成・リーダーシップ・PDCAサイクルの現実、リーダーによるグループメンバーへの課題説明・必要なことを必要な時に発信する・聴き、関連付けにより衆知の創造・効率・品質の確保です。演習後、グループでの振り返りをグループ代表が報告、確認講義は第一線現場の要とした活躍の楽しみ方

*仕事集団をいかした中堅社員のリーダーシップ
*リーダーに不可欠なコミュニケーションスキルとして報告内容と整合化し括ります。

◎プレゼンテーション実習 課題 2分間プレゼンテーションとコメント
*得る成果:筋道立て、わかりやすく、感じよくできるプレゼンの体得・指導実践(コメント表によるOKポイント・改善点の提案)、大勢の前での スピーチ力の体得。確認講義は、
*プレゼンの実践スキル
*部下指導の具体的実践法で強い体験刺激を繋げます。

◎正しく伝え、正しく聴く演習
条件をつけての図形説明の取り組みです。それは、説明者は、「手渡された伝えるべき教材の図形は相手に見せない。そしてゼスチャー無しで言葉だけで説明する」「聞き手は質問なし、画いている画は見せない。」と完全なる一方通行方式とします。おわかりの通り、普段このやり方がおおよそです。始めると説明に手こずる。なかなか画けない人が出てきます。しかし中には、「できました」と早々仕上がり組もあります。終了。聞き手が画いた絵と教材を検証します。「えっ」と驚きます。
 
それはあまりにも違った画になっている、あるいは似ていても細かい点での違いがあるからです。このいかに正しく伝わっていないか、いかに正しく聞けていないかの体験は、日常の意思伝達の課題を浮き彫りにします。だからこそ導き出した改善点は、正しく伝える・正しく聴くスキルアップ法として今後への役立ちなのです。文初の各自からの気づき事項で紹介された「しっかり正しく伝える」このキーワードは、この演習によるものです。確認講義は、「説明」とは、「説いて、明らかにする」と書きます。

この説明が「自分1人で飲み込んでいて、話の内容がつかみにくい」その結果、相手の納得が得られず、協力や信頼も得られません。逆に説明上手な人は、周囲からの評価も高くなり、信頼を獲得できます。しかも重要な点は、正しく伝わることです。伝える側の内容と相手が理解した内容に相違が生ずれば、以後のトラブルの発生の要因ともなります。そこで、
*正しく伝える実践法
*聴き上手の極意を確認講義、とします。

◎今研修での気づきと今後の活躍指針 

グループで演習・発表…です。
お気づきのごとく、人を鏡にしての築き合いは対面学習が最適です。例え講義でも 対話による反応を直に交換することであり、個人演習でも他の人との比較ができ、ペアーによる演習で直に善し悪しが判断でき、グループワークで相互支援・刺激による多数の人からの刺激があるからです。
勿論、各々の演習には「なぜ」を共有化して取り組むことです。「やってみて、どうだったか」の確認で、善し悪しに気づき、さらなる成長の糧を掴む楽しみがそこに喚起されます。

◆人材を育成、貢献する人財に
 
確認してみましょう。人材とは今持ちうる現有能力であり、新たな的に向けた人財条件との間には不足能力があります。なぜなら、新たな目標は現有能力では不可能なのです。それは、現在の業務方法を変えない限り、効率、品質、コストの数字は良くならないからです。

ならば変えるには、新たな学びによる新たな知恵を創造する事です。異なるインプットが加わるからアウトプットが変わるのです。勿論、現有能力(顕在・潜在)を新たに活用する知恵も含まれます。このギャップを埋めていくプロセスを育成というのです。従って、目標が未達成の要因には、部下指導不足、育成機会の希薄、本人の自己研鑽不足もあります。

確認します。目標設定時は人材(ここまでの実績形成して来たキャリア)であり、目標達達成の人材条件が人財なのです。ならば、どう育成するか、OJT(上司采配による指導)もあろうし、本人の自己研鑽(本人・企業補助策)もあります。

◆対面型集合研修の活用の進め
 
しかしながら、企業の取り組みには、集合研修の実施及び、外部主催セミナーへの受講も肝心です。それは、異なる条件との出逢いだからこそ、他の人(社)を鏡にして、自己の鏡での良しとの評価に新たな気づきを得るからです。例えば、「同期の仲間の活躍ぶりに刺激を受けました」「他部門の取り組みに圧倒されました」「他社の厳しい中でも社員が一丸となって活躍している現実に学びました」…との受講所感が現実です。それは、次の利点があるからです。

◎異なる条件(他職場・他社、他職種、他業界…)を持ちうる人との出逢いは、視点、考え方、人間味を各自だからこその魅力として持ち合わせています。それは、他の鏡として自己を見詰める絶好の機会であり、学びの機会です。まさに「我以外皆師」との名言です。案外自信を持つほど、井の中の蛙であったり、蛸壺思考に陥ることもあります。

◎出逢い、ご縁づくりは、以後のビジネスパートナーとして、あるいは、人生のパートナーとしての相互支援者としての交流に発展します。筆者はかつて洋上研修船(12日間、横浜から香港往復全国企業からのリーダークラス300~400人受講、豪華客船利用)で講師を10回ほど担当しましたが、20余年経ってもそのご縁は継続され、コロナ禍前は毎年お花見船での再会を楽しみ、当時の想いでや現況の語らいそして、相談事も交わされます。

いかがでしょうか。よく耳にする忙しくて…の言葉は、その人がいなければ必ず他の人がカバーします。これは、多能力育成の絶好の機会です。予算が…の言葉は本気で社員育成へ取り組みへの希薄です。所属団体では格安、無料セミナーもあります。

企業は人なり。経営の三要素は人、物、金との一説もありますが、人が一番の基になります。「当社の財産は社員なり,社員の成長が当社の成長なり」と掲げた大手製油所関連企業S社長の言葉が脳裏に浮かびます。又、行政の職員N県市町村研修センター所長談でも、変化対応は職員力を高める事にあると折衝研修を託されました。いずれも長年お役だてをさせて頂きました。
 
ふと、窓辺の木を眺めて、「未来に向けた企業の的の方向が木のてっぺんだとすれば、その幹、枝は社員です。各々の職責(枝)具体的目標)に応じた太さ(能力・器))と美しさが肝心です。枯れたり,折れたりしたのでは困ります。そのためには肥料を施し(育成)吸収して生かす(自己啓発)活動が欠かせません。
さらには病原による腐り(不祥事)は剪定せねばなりません。そのためにも、対面型研修で、他の人を鏡とした確認と診断による気づきの機会は不可欠です」と囁きました。

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澤田 良雄

東京生まれ。中央大学卒業。現セイコーインスツルメンツ㈱に勤務。製造ライン、社員教育、総務マネージャーを歴任後、㈱井浦コミュニケーションセンター専 務理事を経て、ビジネス教育の(株)HOPEを設立。現在、企業教育コンサルタントとして、各企業、官公庁、行政、団体で社員研修講師として広く活躍。指導 キャリアを活かした独自開発の実践的、具体的、効果重視の講義、トレーニング法にて、情熱あふれる温かみと厳しさを兼ね備えた指導力が定評。
http://www.hope-s.com/