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疑心暗鬼が渦巻く世界について(真田幸光)

【真田幸光の経済、東アジア情報】
疑心暗鬼が渦巻く世界について

真田幸光(嘉悦大学副学長・教授)

私は、2020年1月にはじまった新型コロナウイルスの感染拡大がやっと収まり落ち着くかと思われた世界には、
「疑心暗鬼」
と言う、
「心のウイルス」
が世界中にまん延していると考えています。
 何が本当なのかよく分からず、
「世界は大きく揺さぶられています。
 私たちは正に今、
「真理を求めて生きていかなくてはならない。」
と言う状態となっています。

さて、こうした中、中台間では台湾社会が揺さぶられるような事態となっているようです。
以下、その状況を概観してみたいと思います。

「中国本土と僅か数キロしか離れていない台湾領の金門島に中国人民解放軍の特殊部隊が上陸する。
中国本土軍は台湾本土侵攻も試みる。
電気供給が途絶え、放送が中断され、銀行では取り付け騒ぎが起きるなど台湾社会は大混乱に陥る。
 
ソーシャルメディアでは、総統が国民を捨てて避難した、もう中国本土に投降するしか道がないなどというメッセージが拡散し、人工知能(AI)で作られた総統のディープフェイク動画まで登場している。

こうした一方、中国本土の台湾侵攻を仮定したテレビドラマ「零日攻擊 ZERO DAY」は台湾政府の全面的な支援で製作された。
今年8月から台湾の地上波テレビ局の公共電視(PTS)、民間全民電視(民視)で放送され、全10話が完結した。
 
ラブストーリーやファンタジー、特定ジャンル物などが中心の台湾のテレビドラマとしてはかなり異質な暗い戦争物となった。
中国本土による侵攻という台湾人にとって最大の脅威をテーマにしたという点で、放送開始前から大きな関心を呼んだ。
英語タイトルは「ゼロデイ・アタック」で、まだセキュリティーの脆弱性を突いたコンピュータハッキングを指している。
一日も準備する間もなくお手上げになるという意味が込められている。
全10話はオムニバス構成だが、宣伝・扇動を駆使した中国本土の攻勢で台湾人がパニックに陥るさまを中心に描いている。
 
例えば、まともな職業に就くことが出来ず、社会に極度の不満を持つ20代の若者が親中犯罪組織に取り込まれ、反中デモに参加した台湾人を脅す政治やくざになる。
中国本土の工作で治安体系がかく乱され、親中民兵隊が台湾人の行動を規制する状況も描かれる。
最終話では中国本土軍の金門島侵攻に対応する台湾軍の指揮体系が大混乱に陥るが、中国本土の指令を受けてスパイの役割を担っていた国防次官の仕業であることが明らかになる。
 
反中色が濃い頼清徳総統が率いる民進党政権は、製作費約2億3,000万ニュー台湾ドルの43%に相当する1億ニュー台湾ドルを支援した。
実際に総統府の執務室と迎賓館での撮影を許可し、5月にはデンマークのコペンハーゲンで蔡英文前総統が参加した試写会まで開いた。
こうした背景には、軍事的脅威と宣伝・扇動を並行した中国本土の攻勢に対処しなければならない台湾の切迫感があると見られる。

製作陣は、ミサイル発射や銃撃など実際の戦闘よりも中国共産党の赤い浸透に焦点を合わせたと説明した。
一般的な戦争映画のような全面戦争のシーンではなく、中国本土が台湾住民を取り込み、ソーシャルメディアをかく乱し、扇動を図るというシナリオに着目した。
 
製作陣は台湾メディアのインタビューに対して、ドラマ製作段階から中国本土による有形、無形の圧力があったと話した。
プロデューサーの一人は、製作陣の半分以上が匿名を要求し、最終盤に現場を去ったスタッフも多いと語った。
実際、中国本土はこのドラマに不満を示した。
中国本土政府・国防部は放送開始直前の今年7月末、民進党政権は戦争の恐怖を助長し、台湾を対立の炎に追い込み、台湾住民を台湾独立の盾として利用しようとしているという非難声明を出ししている。
 
台湾のテレビ業界では異例のスタイルのドラマだった為、放映後もドラマに対する関心は収まることがない。
マスメディアを通じ、中国本土の脅威に対する警戒心を知らしめた、政治スリラーという新しいジャンルを開拓したといった評価が視聴者や評論家から聞かれた。
一方で、あまりにも作為的かつ極端な設定でドラマの世界に入り込めなかったとの指摘があったほか、一部外国人俳優の下手な演技に対する批判もあった。
親中傾向の野党国民党は、過度な国防プロパガンダにあまりにも多額の税金が投入された、中国本土を不必要に刺激すると批判した」

色々な課題を感じる中台間の状況であります。
 
そしてそうした中、私は、台湾国内で起こっている事態が今、
「日本国内でも起こっているのではないか」
との不安にも駆られています。
 
しっかりと真理を求めて、真実、そして真理を追求していかなくてはなりません。

 

真田幸光————————————————————
1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。84年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支店等を経て、1998年から愛知淑徳大学学部にて教鞭を執った。2024年10月より現職。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メンバー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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