髭講師の研修日誌(第122回)
「このような人になりたい」人望の豊かさへの実践
澤田良雄((株)HOPE代表取締役)
◆新人0.5才研修でのおやくだて
「選ばれ、期待されて入社し半年過ぎた。入社時の研修で当社社員 としての活躍の有り様を学び、以後喜働の心で活躍を重ねてきました。そこには、創造・挑戦・ 共生の当社の人財条件に基づく高い志をもっての活躍ぶりがあります。まさにSANKOブランド社員としての誇り ある「高い想い」での活躍です。
さて、 現在の活躍ぶりはいかがでしょうか。今研修では、共に入社後の活躍ぶりを振り返り、さらなる期待に応えて来春には後輩を迎える先輩(実力型社員)となります。その覚悟と成長を創造して行く道筋づくりを目指す」、これは、先般実施した、建設工具トップメーカーサンコーテクノ(株)新入社員フオローアップ2日間研修の実効目的です。
その内容は、 トップ講話 「当社の現状と皆さんへの期待」を基調として、
<1>当社企業人への脱皮と,本気・元気力あふれる活躍ぶり…。
<2>入社後の活躍ぶりを確認する
<3>当社社員としての活躍確認=●4月、体験学習富士研倫理研修で掲げた実践目標の実施状況PDCA)●当社の常識テスト ●マナーの習慣は如何 ●現在の自身のキャッチフレーズ作成・・・ ここまでを半年間の活躍診断とし、以後は、現在、一担当者として任され、責任持った活躍を楽しむ実践策を学び合う内容としました。紹介しますと、
<4>実力型社員の仕事を楽しむ活躍の仕方=●当社の人財条件の確認 ●稼げるプロとは●信用→信頼された担当者としての活躍条件
<5>協力関係をいかすコミュニケーションスキル=●チームビルディング ●貢献するリーダー・メンバーシップ●PDCAのマネジメント●発信と傾聴による考えの創造●自己評価を高める報連相の極意
<6>基本能力ビジネス話法を磨く= ●基本スキルは説明力●プレゼンテーション極意
<7>5S活動と改善を楽しむ=●5S活動の確認●改善の目の付け所と改善の進め方 ●考働の習慣化
<8> 自己発電型社員の自分磨き=●自己分析 ●自分でできるリラクゼーション実践法
<9>現状の課題と解決方法=●課題カード作成と解決策・今後のヒント集作成●助言
そして、来春に向けて、逞しく且つ、貢献する社員像を描くワークショップとして
<10>今後の活躍に向けたビジョン設定=●今研修で学び取った事項の各自発表●「SANKOブランド力を高める社員にこうしてなる」の討議・発表・共有、
そして、受講者間での
<11>エール交換=●プレゼントカードを仲間に作成・交換し合う。同期としての生涯の宝物です。そして、研修の集約と、今後の職場指導でのリンク漬けとして、
<総括> 各自受講所感と実践事項の発表 人事グループの総括と助言
<12>来春4月までの活躍準備=●自己実践目標の設定←上司助言(職場指導とリンク) 以後自己管理←来春新人からの憧れの先輩に成長へと単に、今回の点研修でなく、以後へと繋ぐ線対応の研修としました。
筆者は、当社へのお役立ては30余年に及び、協力企業様の各種研修を担当し、当研修は、15年の継続となります。ちなみに、筆者が敬し、人望を寄せる洞下社長からの講話のキーワードは実に含蓄に富んでいました。
例えば、
◎「何のためにこれをする」それは、当社の「社会のおやくに立つ・・」この理念を自分の仕事に常に問いかけて成すこと
◎成功者は学ぶ事を重ねてきた。そのひとつとして「読書する」この事を進める。単に知識を得ること以上に読書するこの時間を持つゆとりが肝心。
◎先を観ての取り組みをする。それは計画でもある。現場でのゆとりを持った心持ちがここで生きる。
◎新人としての変える働きかけを希望する。新製品は従来からの常識を破ることにある。人・・これこそ考える、新たなことを産み出す素晴らしさである
◎物事には、相反した裏表がある。どちらかがでな、バランスを考慮した判断が必要」・・・。でした。新人のみでなく多層社員の立場にも共通する示唆でもあります。
早速、以後、あらかじめ準備した研修内容にリンクし、各研修項目での反応を掴まえ、即支援、指導を担当部門とのパートナーシップで実効形成に尽力しました。それには、互いの成長ぶりを各自の配属先での現実事例の交換や、また各種の体験学習を通して、今後の活躍の有り様を共有化できた研修でした。
とりわけ、仲間の半年間の活躍の喜びと先輩、上司からの認めの事例には、互いに拍手を送ると共に、自身にとっての新たな努力、新たな試しの実践へのヒントとしました。
そして、最終項では今研修の各自の学び取った事項を確認し、今後の活躍・成長に向けての「SANKOブランドを高める社員にこうしてなる!」のワークショップでまとめ上げました。その骨子内容は、
1.失敗を恐れず、未来に向けて挑戦し、学び続ける
2.現状に満足せず、何でも挑戦し、成長する
3.常に良い状態で仕事を楽しむために、健康をしっかり維持する
「同期での助け合い、互いに高め合って成長しよう。」
でした。今後は、この事項を各自の現場で実践目標に落とし込み、その実現に向けての新たな学び事項を決定して推進していきます。
それは、筆者の持論である「単なる点対応の研修でなく、以後の育成責任者との連携させる線対応の実効づくり」にあります。それは、採用計画の発端である配属職場の人財育成であるからです。
◆新人の貢献実感は、成長欲求・認知欲求を実現する指導に関わる人の人望如何です
ならば育成職場の肝心な条件は、「良きトップのいる職場」「いい人に出会えた」「このような社員になりたい」「この職場で良かった」・・との人望高き人がいることです。
筆者は最大手日本製鉄(株)の55才研修では、後輩、若手社員の育成は「憧れのシルバー社員であること。それは「将来あの人のようなオーラを魅せている自分になりたい」「あの人がいてくれて良かった、最高の技術を是非教えていただこう」の憧れの人です。
また、ありがとうを社名にした山九株式会社(物流、設備、生産支援・・等の大手企業)のB・S(ブラザー・シスター制度)研修では、「憧れの先輩だ“」のときめきを抱き、その憧れの実像に向けての学びを楽しませるより添いの指導を楽しむよう説話しています。これは、人望を寄せられる指導者であり、新人の楽しみを創るサポーターであれとの訴求です。
このような人望は、「少しでもこの人に近づきたい」「この人の指導のお陰」「この人といるだけで、嬉しく自分が成長していく気がする」と、人の成長欲求を高め、学び力を高揚させる育てる力に他なりません、前項での0.5才研修での受講者からの現場でも「新人が成長を自ら楽しみ、指導される事の興味と、指導内容を実践する動機付けに影響をあたらえる現実が伺えました。
つまり、新人が知らないことをわからせる、できていないことはやって見せ、自らやりたくなるように・・導く人と言えます。即ち、新人の成長欲求・認知欲求を実現するのは指導に関わる人の人望如何です。
確認してみましょう。
人望とは=広辞苑によると、「人望は「世間の多くの人々がその人に寄せる尊敬・信頼・また期待の心と定義されています。
特に、ビジネスにおいては、「周囲からの信頼と尊敬を集め、協力や支援を得られる力と言えるでしょう。
◆長嶋茂雄さんに学ぶ人望
そのような人は・・・「笑顔は永久に不滅です」の長嶋茂雄さんもそのお一人です。
実は、先日行われた「長嶋茂雄さんお別れ会」に開場1時間前から並び入場、祭壇に飾られたまさに満面笑みの長嶋茂雄さんの写真にお迎え頂きました。開場は報道のごとく25,000人のお送りする人々と心を通じ合い「長嶋さん、私も笑顔を大事にします」と記したメッセージカードを祭壇の最前列に進み、献上、合掌させて頂きました。
そして、会場の片隅でしばし、
◎いつも前向き・燃える男「もう一度」走る・回復へ向けてのひた向きの努力」
◎お客様に如何に喜び、感動を与えるからを第一とする
◎私は天才でない。努力の人。努力する姿は見せない。それがプロ
◎初めて涙流したのは、引退セレモニーで,外野を一周したとき。4万人の観客の人心が体に入ってきた。思わず感謝の心が込み上げた。
◎リハビリの姿を公開したのは、同様に障害、病魔に立ち向かっている人達へのお役だてです
と記された6/3の報道記事を再読しました。
翌日には既に執り行われた指名献花者からのお別れの言葉を新聞等での紹介記事を読み込み、重ねて長島茂雄さんの素晴らしさを確認し、上に立つ、指導者、プロ…としての人望の有り様の学びとしました。
例えば「…道を示し、照らしの導いてくれた私をジャイアンツに導いてくださり、大きな愛情と情熱で接して頂きたくさんの事を授けてくださり、ありがとうございました。私の野球人生は監督によって、私の人生は美しく彩られました。…私は自分の心の中にいる長島茂雄と話し合いながら私なりの道を進んで参ります。・・・」松井秀喜さん
◎「長嶋さんが示してくださったプロとしての矜持と姿勢は、どんな時代が訪れようとも繋いでいかなくてはなりません。多くの後輩たちが長嶋さんの精神を受け継ぎ、個性あるプレーでフアンに喜んで貰うことが、長嶋さんへの最大の恩返しではないでしょうか。・・・」イチローさん、
◎「・・・長嶋さんと初めて食事をご一緒させていただいた時、僕はそのお姿に後光が差しているように見えました。そういうふうに見える方というのは初めてだったので、今でもその衝撃をよくおぼえています。・・・」大谷翔平さん。
そして、北大路欣也さんは「・・長嶋さんからの本年2月20日いただいたお手紙を紹介し<小生、今年で89歳になりました。色々体験してきましたが一つだけしっかりと体に染みこんでいるのは野球魂でしょうか誕生してから89年目本年は野球年と言うことになります。夢中で取り組んできた野球人生で、野球年を迎えられた事を何か誇らしい気持ちになりました」私には強く響きました。89.役者人生。役者魂。光を貰った様な気がします・・・」*89=野球
如何でしょうか。まさに「おかげさまで、この人の元で成長、成績残せた」「この人がいたからこそ、この会社、この業界の発展があります」として身近で共有されている人がいます。それは、長嶋さんの持ちうる人望の高さのへの賞讃と感謝心に通じることです。
◆人望を寄せられる人の15の実践
確認してみましょう。
「あの人には人望がある。」とか「あなたの人徳ですよ」とよく耳にします。この人を引きつける人望は決して天性のものでなく それは、心がけと修練によって身につけられます。勿論、人望力は、自分が力説しても周囲が認めなければ独りよがりにすぎません。
それでは、人望力を磨くうえでの実践はどう成すのか?
3つの柱立てし、15の実践力として提案してみます。
●1つ目の柱は.態度・言動の実践心得です
①笑顔=相手をほっとさせる人間味豊かな微笑みの心
②自己管理力=巡り来る機に応じて自律する倫理観
③指導・支援力=職場のメンバーや後輩を育てる関心が高く、自分のやり方や考えだけを押しつけない
④ポジティブ思考による行動力=プラスと思うことはすぐに行動を起こし、途中で何らかの障害があっても新たな工夫で乗り切る
⑤コミュニケーション力=相手の特性に対応した話し方の工夫、人の話を否定する事なく相づち、うなづきの反応を示し、心を汲み取ることができる傾聴実践
●2つ目の柱は.精神面(マインド・内面)の持ちようです
①目標志向力=自分の本来あるべき姿や、自分の描く理想を持ち、見失ったり達成の意思が薄れたりしないで実績を形成
②決断力=事の大小に関わらず自分が判断し、意思決定しなければならない場面では勇気を持って決める
③受容力=異見(自分と違う考)や、相談を持ちかけられたとき、忙しさを顔に表す事なく心の余裕がある
④挽回力=逆境に強い。ピンチに立った場合いでも自分なりの信念を持って這い上がる
⑤自己改革力=「昨日の自分に今日の我勝つ」が如く、昨日よりも今日、今日よりも明日と、絶えず自分をイノベーションする具体的な学びで新たな変わり様を目指す
●3つ目の柱は変えていく創造・思考力です
①問題解決力=事が起きたとき客観的に原因を分析し、何から手を打てば良いかの適確な判断力で状況を変える
②先見力=常に先を読みとろうと心がけ、そのための情報収集の方法を探り先手の行動をする
③洞察力=物事を判断するとき、表面的なことに惑わされず、その本質を考え、何が問題なのか冷静に把握し分析する
④創造力=新しいことに関心を持ち、自分なりにオリジナルなものを創り出そうとし、アイデアを生み出す
⑤計画力=何をするにもストリー化し、優先順位を考え計画し行動する。決して「計画100点、実行なしが玉の傷」の計画倒れにしない。
以上です。如何であろうか。立ち位置、キャリアの長短により、各実践力には多少の難易、程度の幅がありますが、この機会に自己確認、診断の一助になれば幸いです。
今、筆者の手元には、今春の弔事時にいただいた一枚の葉書があります。
「よくこの方なくして自分がいないとか、テレビ、雑誌等で見かけますが、正に私がこれまで頑張って来れたのは先生なくして他を見ません。お世話になり心より御礼申し上げます。ご自愛ください。 息切れが強く・・・さようなら。話好会の皆様にもよろしくお伝えください」 剣持 幹博
これは、筆者が主宰している葛飾区の生涯学習「話し方教室話好会」(35余年継続)の受講者であった剣持さんがお書きになり、訃報のご連絡に駆けつけた折り奥様から手渡しされました。剣持さんと筆者との師弟関係は、ほぼ25年。将棋と読書を趣味とし持論を直に発信する刺激ある受講者でした。しかも、ガンと闘い、毛無の状況でも可能な限り参加していた男気の強い人でした。
2024年12月死去 享年72才。奥様とは初面会でしたが母娘さんから「いつも先生の話を聴かされていました」とお聴きし、涙腺が緩みながらも「こちらこそ学ばせて頂きました」とお答えしました。
社会の一隅の花の存在である筆者ですが、人望の片鱗を実感できた自分でした。
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◇澤田 良雄
東京生まれ。中央大学卒業。現セイコーインスツルメンツ㈱に勤務。製造ライン、社員教育、総務マネージャーを歴任後、㈱井浦コミュニケーションセンター専 務理事を経て、ビジネス教育の(株)HOPEを設立。現在、企業教育コンサルタントとして、各企業、官公庁、行政、団体で社員研修講師として広く活躍。指導 キャリアを活かした独自開発の実践的、具体的、効果重視の講義、トレーニング法にて、情熱あふれる温かみと厳しさを兼ね備えた指導力が定評。
http://www.hope-s.com/