髭講師の研修日誌(第123回)
新たな活躍を楽しみとする望年の時期
澤田良雄((株)HOPE代表取締役)
◆迎える年は更なる希望の年だから望年会という
30年来忘年会を望年会と言って来た。きっかけは、地元企業の年末行事で講話に出講したとき。その行事は望年会と名付けてのイベントであった。
そこで、当時社長であった小溝剛氏に「なぜ望年会か」と問いてみた。答えは「この年にあったことを忘れるのでなく、あったことを土台に、新たな年に更なる望を持って、気持を固めることの方がウキウキしますよ。」と笑顔で解説してくれた。なるほどと、その後活用して来た今日である。
まさに、出来事の事実は消せない、出来事には「うまくできた」「認められた」「貢献できた」「褒められた」「表彰された」…こともあろうし、反面、うまくなかったこともある。この悔いある事実は、忘れたいと思っても忘れられない、忘れさせて貰えない、忘れてはいけないと背負うこともある。
勿論 うまくいったことは、それを基準にして、更なる高い期待を創ったことも現実だ。「人と過去を変えることはできないが、自分と未来は変えられる」とよく言われるが、それは、過去の事実は変えられないが、過去の価値は変えられるからである。よく耳にする「失敗は成功の元」と言葉の意味合いでもある。
さて、この時期、各所で、今年の振り返りと、新たな年に向けての心意気を固め合う機会を様々な方法で実施されている。そのひとつに、望年会がある。勿論一時期のコロナ禍や、若者が敬遠するなどとの世評の影響もあり盛んであるほどではないが、「今年最後の会合だから…」とその意味合いを成すなど復活傾向の現状もある。その楽しみかたは決して派手でなく、会食しつつ、ビンゴゲームなどで盛り上げを模索する範囲であろうが、「やってみたら結構盛り上がりました」「思いのほか楽しかった」「普段話す事のない人と快話で親しみが持てた」との好評得ている現実でもある。
それに、「今年は、これだけ利益が確保できました。それは、皆さんのおかげです」とか「あなたの提案されたその事によってです」と賞讃やねぎらいの言葉の交わし合いが成されることは、「こんな場でと思いつつも、貢献事実を確認できることは今年の足跡づくりとしてまさに良き年であったことにほかならない。
そして、「来たる年も楽しく、スクラム組んで、元気で活躍しましょう」と中締めの笑顔でのお開きは、来たる年へのわくわく感を内包させる。筆者も各所で、機会を設け、あるいは出席しての実感でもある。読者諸氏は如何であろうか。
◆失敗は新たな学びを楽しむスタートなり
それは、何事も、点対応でなく、継続する線対応で成すべきであり、その線が可能な限り、上昇型スパイラル状態に描かれることを目指すことだと肝に銘じているからである。その事柄は、決して成功事例だけで、うまくなかった、失敗したこともあるが、自省に基づく原因探求から、「よーし次は…」との新たな挑戦心が沸き立つことになる。それは、失敗は成功の元になる。
そこには新たな学びによる成長による自己像を描き、新たな成功を生み出す楽しみをストーリー化することにある。多分に、今年の足跡(実績)もたまたまできたことでなく四苦八苦しての賜であろう。それは、苦しんで得た学びの取り組みであり、その実効による「やった!」との達成の喜びである。これこそ本物の実績である。
従って、今年のこのキャリアは、来たる年以降にも通じる財産でもある。もし、失敗の現状だったり、解決状態に不満足があるならば、まず、新たな学びへの楽しみを模索するとよい。
その学びの一助として筆者が推奨し、支援指導している能力向上は話力の向上である。
◆必ず話力向上のお役だてを施しました
今年も新人、中堅、リーダー、シルバー層の研修に必ず入れ込んだ内容は、話す力の向上である。なぜなら、各自の立ち位置、期待役割の遂行での新たな想いは、従来策の現状維持では成就できず、「何をどう変えて行くかを発信して、関わる人を巻き込んでの活躍だからである。
その、巻き込む力の基本スキルが「話す力」だからである」だからこそ、この話す力の乏しさは、いくら、知識が豊かで発想豊かでもそれでは、自身の潜在能力にとどめてしまい、「ああしてこうして計画満点、実行せぬがたまの傷」になりかねないからである。これでは新たな足跡づくりの実現は当然なしである。何事も頭(知識・知恵)心(心意気)行(実践・継続)であり、関わる人への発信への躊躇、更に正しく伝わる現実なくしてスタートアップはあり得ない。
確認してみよう。話すスキルは、良好なる対人関係、協力関係の構築に不可欠であり、正しく伝わる説明力、説得力であり、折衝場面あり、育成時での教え、褒め・叱りがあり、さらには、立場によっては朝礼、会議、時としてスピーチ・プレゼンテーション…・対応への具体的スキルの研鑽が不可欠なのである。
しかも、一方的に話すのではなく、相手を知り、理解レベル、親疎の関係、年代の特性、損得の立場・・・に適応した伝わり方の工夫が求められる。でなければ、話し手の意図を理解し→納得し→共感し→態度(受け入れへの判断)の決定(検討、承認)へと結びつかず、単に伝えましたであり、発信意図に準じた伝わりにならず、事の運びにはならず話の実効とはならない。
極論であるが、話す働きかけは相手の意思を変え行動を変えることである。だからこそ、施す研修には必須条件として組み込んでいる現状なのである。研修後「おかげさまで話す事への勇気が備わりました」「話すコツがつかめました」「先生の適確なコメントで自分の話し方の改善ポイントを実際につかめました」と微笑みでの所感はお役だてできた喜びでもある。
昨今の実践例では創業塾へのお役だてである。筆者が10年来関わってきた研修である。
◆日本一の創業塾を合い言葉に、きめ細かな伴奏研修
地元商工会議所主催の創業塾は13回目を迎え、(筆者は10回)土曜日の10:00から16:30までほぼ1日を6回継続コース。加えて、終了1ヶ月後に丸1日のフォローアップ時別研修を実施する。学び合う内容は、創業で提供する商品・サービスは何か、その強みは。
ならば、誰に、どこで、どうのように、いくらで売るか、利益は確保できるか…これらの条件をビジネス計画書として作成することを基本研修としている。そのための、ビジネスプラン作成に向けての考え方を理解、イノベーション感性の学習をし、そして、作成に当たって必要なフレームワーク、創業に必要な会計と税務ポイント、資金調達、資金繰り、経営者にとっての値決め、Webマーケテイングの活用、ブランデイング、そしてマーケテイン基礎を学び卒塾者の経営する店舗を訪問して学ぶマーケテイングツアーが組み込まれている。筆者の担当は、創業への本気での取り組みマインド、コミュのケーション・プレゼンテーションであり、計画書を生かした、新たな協力者の確保・顧客の創造の実際場面対応へのお役立てである。
研修形式も独特の会場設営で、学校形式でなく、少人数のグループ式に設営し、講義からの学習内容を即、ビジネスプランの計画事項に仮記入し、グループ内で発表、多メンバーは,顧客視点から所感を提供します。その状況を観察して,グループ担当の講師が適切に,学習内容の補足、計画書作成の支援をする。また、各自の創業へのプロセスに応じた相談事には、相談コーナーを設置して、きめ細かな指導を施す。
○最終講は、全員によるビジネスプランプレゼンーションです
そして、最終講では,受講者各自の作成した創業計画の発表。勿論,講師団の審査による最優勝賞獲得の競い合いの楽しみ合いである。全員26人の7分間の発表。皆厳しい時間内での対応は時間オーバーなしの見事さであった。勿論 得手不得手の受講者であるが、「私は、話は大の苦手」と言う受講者の終えた後のほっとした表情は筆者にとっては喜びであり、「良いプレゼンでしたよ」後ほど声がけすると「緊張しました。前日から食も楽しめませんでした」と弾む心でのやりとりは嬉しい。
それは「話の味は人の味」単なるなれきって、巧みに話すことがビジネス場面ではOKでなく、本心で話す人柄が、興味を引き、訊かせる(相手からの質問)影響力になるからである。だからこそ、このプレゼンの体験が、創業後の現実の場面での話す場での対応に少しの自信を持てるだろうとの想いである。
それは、筆者の訴求である現在の判断である「苦手との自己否定は、これまでの経験則であり、新たな学びによる、試しの実践を即行していくことを楽しみ、その体験が新たな判断、決断を創る」とのお役に立てた実感でもあるからだ。
更に、この発表を単なるイベントとせず、各自への講師団の審査結果内容から創業のスタートアップ向けてのさらなる示唆、指導を提供する事にある。まさに,学習し、作成し、そしてその是非の確認をする。そこから、より良くする改善の実践により、ものにできる塾なのである。それは、事業者へ脱皮する自分づくりである。
◎主催事務局。講師団・受講者間・卒塾者の総力が生きています
ちなみに、講師団には、中小企業診断士、税理士、社会保険労務士、行政書士の面々であり、総勢10人です。各自は、市内に事務所を有し,市内外の企業の経営指導を実際に業としている現役のコンサルタントであり、経営者でもある。従って、講義内容及びグループ演習での支援指導では、地元の実態に即した適切さがある。
そして、特別講師として,当市市長からの「当市のマーケット戦略と創業機会」の講話を組み入れ、市内での創業の可能感を助長する。周知のとおり、当市は、「母になるなら流山」とのキャッチフレーズで,全国での人口増加率のトップを数年間確保している注目される街である。
実はこの実績に伴い、受講者の目指す事業にも、子育てへの支援、出産への心身の健康、髪・肌の美容、子供向けセミナー、お菓子、パン、刺繍・古帯活用のバッグ…製品の製販とセミナー、内蔵、リンパマッサージ、そして介護関連の事業…・が多く観られる。まさに、女性力を生かした地域密着の創業である。
新たな年、「創業しました」との一報を受け、祝意を届けに活躍舞台(店舗、事務所、イベント会場・・)への訪問を楽しみとする現在の筆者である。
確認してみよう。主催事務局(会議所)、講師団、受講者間、そして、卒塾者が一体となった創業塾である…「日本一の創業塾」この合い言葉はあながち過言ではあるまい。
◆新たな年輪を創る。それは根を強くする学び力なり
こうしてみると、この時期、今年の身近な足跡の確認に合わせて、トレンド的視点で捉えてみる事は極めて大切なことである。昭和100年、戦後80年のこの年、様々なことがあった。如何であろうか。社内外、自己の過去(歴史・環境変化・出来事…)を確認し、現在の進化ぶりを素直に捉え、それは重ねてきた変える事実のその中に、次ぎに向けた「重ねる事の新たな成すべき事」が浮き彫りになってくるであろう。そこには、変化に対応した学びの根が底力であり、新たな年輪を創り上げてきた証だからである。
だからこそ、新たな年に向けての想いは、さらなる肥料として学ぶ事の施しによる変える力を育て上げる楽しみとなる。その栄養分が逞しい幹の年輪となり、枝、花、実としての実績の産み出しになる。それは、新たな年輪を創り上げた足跡になる。
相田みつをの言葉に「花を支える枝 枝を支える幹、幹を支える根 根はみえねんだなあ」というのがある。変化対応のパワーは根であり、そこには新たな肥料の施しがあり、剪定の手の加えもあるとの学ぶ力の必要性を説く教えでもある。従って、その学びの環境を企業、職場、各自が整えることも肝心である。この成長欲の実践が、今年の望年会にもまして皆で笑顔で乾杯し、笑顔の会食・語らいを楽しみ合う場となろう。
師走。年賀状を書く。書くとは自筆で一筆記し心を届けることである。そのヒントは今年届いた年賀状であり、近年交わした会話の思い起こしである。数百枚越してもお一人お一人の様子を描いて語りかけの心情で書くことは楽しい。人生のパートナーとしての交流の線対応と心している。各位はいかがであろうか。
人生100年時代。心豊かに生きる。それは、多くの人の支えがあっての実現である。その支えに感謝して、自分のできる施しの実践で「ありがとう」「おかげさまで…}とのお声がけをいただけることと肝に銘じての今年の回顧を楽しむ年の瀬である。
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◇澤田 良雄
東京生まれ。中央大学卒業。現セイコーインスツルメンツ㈱に勤務。製造ライン、社員教育、総務マネージャーを歴任後、㈱井浦コミュニケーションセンター専 務理事を経て、ビジネス教育の(株)HOPEを設立。現在、企業教育コンサルタントとして、各企業、官公庁、行政、団体で社員研修講師として広く活躍。指導 キャリアを活かした独自開発の実践的、具体的、効果重視の講義、トレーニング法にて、情熱あふれる温かみと厳しさを兼ね備えた指導力が定評。
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