~行水の おせんえがいた紅筆を 水に落とした夕間暮れ 廻りどうろがくるりと廻る
江戸の昔を今の世の 夢の雪岱(せったい)あで姿 おびは空解け柳ごし
咲いた桔梗のひと片が 仇に散ったか蚊帳のかげ
こうもり来い あんどの光をちょいと見てこい
道行のおせんかくした青すだれ 萩に流れる蚊やりをよそに 廻りどうろが くるりと廻る~
第十一回 尚雄里と日本舞踊は、テーマを浮世絵に変えて記させて戴きます。
冒頭の夏の風情を唄っている文句は、日本舞踊ではポピュラーなジャンルの大和楽の曲で、演目『おせん』の全文です。日本舞踊の古典では新しく、昭和二十年に邦枝完二作詞、宮川寿郎作曲により発表されました。また、文句にもある「雪岱」とは明治生まれの画家で小村雪岱といい、昭和八年に新聞小説で、おせんの挿絵を描いていたのがきっかけで、当時はおせんといえば雪岱さんとのイメージが強く、作詞の際に盛り込まれた様です。